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カードワールド ―異世界カードゲーム―  作者: 勇出あつ
王総御前試合編
129/170

#53 二回戦 前半


 二回戦開始前、俺がハイロと一緒に会場の控え室に向かうとき対戦相手のリーダーとばったり出くわした。


「あれ!? きみたちはハイロチームの人!」


 浅黒い肌の少女は、こちらをみてそう言った。たしか名前はジェアヌとか言ったか。なんだかフォッシャを思い出すような明るい印象の子だった。


「ってその車椅子はどしたの!?」と彼女がきいてきたので、


「前の試合でケガしちゃってさ。俺は出れないんだよね」


「そうなの? お大事ね。それじゃあまた試合で!」


 ジェアヌは太陽のようなまぶしい笑顔をのこして、かわいらしく手をふって去っていった。



 会場には観客席のほかに控えメンバー用や関係者用の観戦スペースがある。舞台の隅にちょっとしたくぼみがあって、そこから会場の様子をみることができる。

 ハイロがジェアヌと礼をかわして、試合がはじまる。霧がたちこめ試合の様子がいくつもの角度から霧の映像がうつしだされる。


 フィールドは[荒野]。だだっ広く、相手の位置もわかりやすい。だが身を隠すものがないわけでもなく、巨大な岩や丘に隠れたりすることもできそうだ。

 

 こちらから指示を送ることはできないが、進行確認のために作戦ノートをひざのうえに広げる。

 編成はまずクイーンがミジル。生命線だが初心者のため、動きのすくない役割をまかせた。ウォリアーは『フェアリーバイカー』。スピードがあり緊急の場面でも対応できるカードだ。

 ヴァングにはローグ。彼女の火力があればまずリードを相手に許すことはないだろう。一回戦につづいて防御に優れた『プライドゥウルフ』もある。

 コマンドはハイロが。彼女のカードゲーマーとしての腕があれば、常に局面をコントロールできるはずだ。


 相手からすればイヤなチームだろうな。ミジルは未知数だし、ローグはエース級、ハイロも堅実で手ごわい。

 さっそくフィールド上で両者が激突した。キゼーノのときとは違い、地形が平坦へいたんなためすぐに総力戦へと入る。

 

 相手チームの戦力調査はすでに終わっている。さっきの少女がリーダー、ジェアヌ。まだ幼いがリーダーシップのある統率者で、コマンドをつとめる。使うカードは遠距離支援にすぐれる『堕ちた黒魔術師』。とぼけた見た目だが念動力でシールドを作り出せる太った鳥獣『ムジャム』。


 それから勢いはあるがミスの目立つヴァングに、おしとやかに見えてドSな戦術家のクイーン。

 『ファイアーコブリン』『隠居したキザ剣士』をそれぞれ使う。だがこの2体はあくまで前衛で、相手の攻撃の要は一回戦と同じく『堕ちた黒魔術師』だろう。けっこうな強カードで、魔方陣や黒魔術がどこからでも飛んでくるのですこし厄介だ。


 しかしほぼ予想通り。やはりバランス編成。偵察でみた試合とほとんど同じだな。

 それだけ自信のある選定なんだろう。ウォリアーは同じでもトリックは変えてきている可能性があるが、そのパターンも念入りに想定してある。


 こちらの作戦は[電撃戦]。敵がしかけてくるまえにローグを中心に攻撃力と機動力で敵を圧倒する。

 相手はたまらず味方全体を強化する『ワラワセ妖精エミー』というウォリアーを切ってきたが、今回こちらのチームはアタッカーを中心にそろえた。よほど防御に特化していなければこちらの猛攻を止めるのはむずかしい。

 『隠居したキザ剣士』とウォリアーを二人いっぺんに押さえ込むローグ。ハイロの『ルプーリン』も序盤からシークレットを使って反撃の隙をあたえない。


 ピンチのはずだが、敵のコマンドジェアヌは笑っていた。苦し紛れのそれではなく心から楽しそうに。まるでラトリーやフォッシャたちがカードで遊んでいるときのような、無邪気なそれだった。

 俺は身構えていたのでやや呆気にとられる。いや、でもよく考えたらあれが普通なのか。規模が大きいとはいえただのアマチュアの祭典に、本気で挑んでるのはキゼーノや俺たちくらいのものなんだろう。


 なんにせよこのままいけば勝負はみえた。というところだった。


 ミジルがとつぜん後方から戦列をはなれ、すたすたと前線へとおどりでてきたのだ。


 となりでのんきにポップコーンを食べていたフォッシャも、おどろいてせきこむ。


「なにしてんだあいつ!?」と俺も思わず声にだしてしまった。


 どんなに優勢でもクイーンがやられれば試合は負けだ。そのことは当然説明してあるから、戦形をくずさないはずなのに。



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