#51 追っかけ
今日は偵察のために来たからムリだったけど、時間のあるときならファンにサインくらいはしないとな。あの男の子、対応してもらえなくてすこししょげてたしな。
会場を出ると表通りには露店がずらりと立ち並んでいた。御前試合はお祭りにちかいとだれかが教えてくれたが、それは本当らしい。
いろいろなお店があって目移りしてしまう。食べ物、おもちゃ、ミニゲームと、盛り上がっていた。イベントとしてカードゲームの対戦会などもあった。景品もあるようなのでかなり興味深かったが、やむなく見送る。
お店をのんびり眺めながら進んでいると、またカードファンたちにつかまってしまった。
なかには記者らもいて、ハイロは彼らから質問攻めにあいながら子どもたちにサインをしてあげていた。
「ハイロ選手! キゼーノ選手に勝ったお気持ちは!?」
「ローグ選手と一緒にいる姿が目撃されていますが、どういう経緯でチームを組まれたのでしょう!?」
「あ、あのー……。また今度に……」
「この大会にむけての意気込みをおしえてください!」
「こんど独占取材させていただけないでしょうか!?」
このままだと数時間離れられそうにないので、やむなく【フラッシュ】のカードを使う。
彼らの目がくらんでいるすきに、いそいでハイロと通りから脱出した。
「し、しかたなかった……ですよね。申し訳ないですけど」
「ハイロもかなり注目されてるんだな。このままだとまた追ってくるぞ」
まあ無理もない。キゼーノはそれだけ強かった。それを倒したチームのウォリアーが大会会場にあらわれたらちょっとした騒ぎにもなる。
「そうですね……あ、あれはどうですか?」
ハイロの提案で通りのはずれの露店でメガネと帽子を購入し、身に着ける。
ずいぶんそれでも効果があるようで、道行く人から声をかけられることはなくなった。
帰る途中、気になる建物を見つけた。
「あれは……」
標識によるとそれは、カードの博物館らしい。俺が凝視しているのに気づいてハイロが立ち止まる。
「すこし寄ってみますか?」
「え!? いいの!?」
「いいんじゃないでしょうか。カードのことは、ローグさんに任せておけば間違いないでしょうし」
「そ、そうだな……ちょ、ちょっと寄ってみるか……」
期待通り、いや期待いじょうに楽しいところだった。宝石や美術資料のようなカードから、一風変わったなにに使えるのかわからない奇妙な道具のカードまで、幅広く展示されていた。
怪物コーナー戦士コーナー機械コーナー、そして属性ごとに分けられていて見やすい。なかには古代の世界を再現した遊園地のようなアトラクションもあって最高に楽しめた。
特に良かったのは、弱いカード強いカード関係なくどれも大切なものとしてきれいに展示されていたことだ。ハイロと一緒になって、童心にかえったようにはしゃいでしまった。
館内をまわっていると、うしろでなにか聞き慣れた声がしたので振り返った。そこにはなぜかローグたちがいた。
「あれ? どうしたんだこんなところで」ときくと、
「お祭りがやってるのにいかない手はなかったワヌ! アイスと焼きそば食ってたらエイトたちを見つけたワヌ」
「二人がここに入ってくから……」
「わ、私は医者のたまごとして病人をかんしするぎむが……」
「私は止めたのだけどね……」
と、それぞれ言い訳のようなことをいっていた。前からずっと見つけてたなら、声をかけてくれればよかったのに。あえて観察でもしてたんだろうか。
次回「カードゲーム勉強会」更新→あした10時