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二十三話「払ってあげよっか」


緊急搬送された親父さんは事なきを得た。運び込まれた病院は外装が少し廃れ始めているが、内装は綺麗なままだ。此処はいつぞやにきた病院。美咲が建てた病院だった。


「いやー、でもよかった。おじさん無事で」


「ああ、光のお陰だ」


「まぁね。今時の女子高生は人助けがブームだから」


あっけらかんとした態度はこの頃から変わっていないらしい。


「あ、面会できるっぽいけどする?」


「する」


エレベーターに乗って、805号室の前。ドアを開けばそこにはうなだれた30代の男がいた。


「大丈夫ですか」


「君かね、私を助けてくれたのは」


「いや、こっちです」


「どうもー。ご無事でなによりです」


「お陰様で死ねなかったよ、どうもありがとう」


舌打ちをして自身の膝をみる。やはり飛び降り自殺を図ったのか。


「僕はもうおしまいなんだ。死なせてくれ」


「あーあー。わかってます。んじゃ、聞いてくださいね。これ毎回、ってかまだ三回目だけど」


「第114514線地球日本支部復興支援課の四ツ木 真也と申します。自殺少し待ってみませんか」


通例通り、名を告げる。これが最後の試練なのだ。


「何処の復興支援課の者かは知らないけどね、私の借金をどうにかしてくれんですか。無理でしょう。もう私が死ぬしか道はない」


「借金ってどのくらいあるんですか」


「二千万」


「にせっ、なんでそんな」


「信頼できる友人だった。小さい頃からの友人で、苦難を共にした仲だった。だから保証人になってしまったんだ」


飛ばれて肩代わり。それがこの借金の理由。二千万もの借金を抱えて生きていくの苦労なんてもんじゃない。娘と嫁を養っていきくなんてことはできないだろう。


ゆっくりでも返していけばいい。それは無理だ。現実的じゃない。二千万の借金を娘にまで払わせることになる。


今まで精神的困窮からきたものだった。でも今回は違う、金だ。この世は時に命よりも重い金というものが彼の命を摘み取ろうとしている。かける言葉見つからず、喉からでかかった言葉詰まるばかり。


「これが私の終わり時なんだよ。だから」


「私が払ってあげよっか」


一間。女子高生が発した言葉空気を固まらせるのに十分な言葉だった。


「二千万だぞ? んな金どこから」


「ここの病院、私のだから」


「は?」


「だから、この病院私のなの! 正確には違うけど、二千万くらいなら払ってあげるよ」


俺、くる意味あったのか?

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