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二十二話「光」


そこは暗いリビング。俺の家にも似ているが、造りも配置も違う。


「お兄ちゃん、誰?」


リビングの奥、隅から子供の声が聞こえた。

その声は何処かで聞いたことがあり、されど、その姿は見えない。

この声の主が自殺志願者なのか?


「あのさ、電気、つけてもらえる?」


「うん」


タタタと歩く音が聞こえ、少し待てば部屋中の照明に光が灯る。

スイッチの処には長い黒髪の少女、幼い、まだ小学生にもなっていないであろう明美がいた。


「明美?」


「うん。あけみだけど、何でお兄ちゃんわたしの名前しっての? 変態さん?」


「変態ではないけど存在は変態みたいなもんだ」


「なにそれよくわかんない」


「あのさ、明美は何してんの」


「パパを待ってるの。ここで大人しくしてなさいって」


「パパは何処にいるんだ」


「二階にいるよ」


その時、昔、明美から本当の父親の話を思い出した。


「ってことは親父さんかよ!」


自殺一家にもほどがある。呪わてんのか!


廊下に出て階段を上る。三つの部屋、何処にいるのかわからない。迷っている暇もなく、突き当りの部屋に飛び込むと、外から叫び声が聞こえてきた。


「いったぁい! おじさん何してんの!」


窓から外を見てみると、スーツをきた男と女子高校生が絡み合っている。いかがわしい様に聞こえるが、現場そんな甘いものではなく、倒れている男を女子高校生が懸命に揺らしていた。


「ちょっとそこで見ている人! 救急車呼んで!」


俺を見つけた女子高校生は的確な指示を飛ばしてくる、確かに救急車を呼ぶのが先決だろう。リビングに戻り、受話器を手にっとって救急車を呼ぶ。だが、此処は何処だ? 此処が何処なのかもわからないのに救急車を呼ぶことなんてできない。


「明美! 住所とかわかるか!」


「わかるよー」


流石神の真似事をする女の子。子供の頃から優秀だ。


受話器を渡して俺は外に出る。あのスーツの男、恐らく明美の父親だ。これで死なれたらもう俺の役目は無い。


「おい! そのおっさん大丈夫か!」


「大丈夫。たぶん骨折はしているだろうけど命にまでは関わっていないと思う」


「よかった、助かったよ」


「見たことろ、君のお父さんって感じではなさそうだけど。友人?」


「そんな処だ。お前は?」


「私は煌めく時の女子高生、光だよっ」


光。俺はその名前を知っている。

焦っていて顔もまともに見ていなかったが、しっかりと見てみればそこには光がいた。天界の光と変わらない、明るい茶髪のポニーテール。ハキハキとした物言い。俺の知っている光がそこにいた。

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