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よろしくお願いします!
「我が名はモーリー! 王国に占い師として潜入し早数か月、「あれ? 結構稼ぎあるし、もうこのまま優雅に暮らしても良いんじゃね?」なんて、当初の目的を忘れそうになったけど! それでもなんとか任務を思いだした、魔王軍で唯一、呪詛を極め、『不運菌』を発明した天才術師であ~る! すでにこの部屋には不運菌が撒かれている! これから貴様らは、ものすっごい不運に見舞われるのであ~る!」
「ふうん……うぎゃ!」
言わなくていいつまらないダジャレを言ったセツナが、何もない所で転んだ。
さらに教壇にあった花瓶がその振動で倒れ、彼の頭を直撃。
「あらあら」
「まあ、つまらぬことを言ったのじゃ、あれは自業自得じゃろ?」
姉上の冷たい視線と、ヒルダの冷たい言葉を浴びせられるセツナ。
当然、皆の態度もどこか寒々しい。
「ええ! ちょっと小粋なジョーク言ったぐらいで、なんで俺がこんな目に合わなきゃならんのだ!」
活けてあった、今は彼の頭に上で綺麗に咲いてる花を払うセツナ。
花瓶に入ってた水がそれなにりに多かったのか? 全身びしょびしょだ。
「もう何やってんのよ! ほら、この屋上で干してたタオル使いなさいよ! あ! べべべべべ別に、あんたのために干してた訳じゃなんだからね!」
「あ! ありがとうミナ……」
なにやら甘酸っぱい雰囲気で頬を染め、ミナにタオルを貰いゴシゴシと顔を拭き始めるセツナ。
デレ成分に付け足したようなツン。
それに、なんで学園の屋上で洗濯物干してたの?
もしかしてここに住んでるの?
とか、ツッコミどころ満載のミナの態度…………だが、
ぷう~~~~~ん。
「え? え? くさ! 俺の顔くさ!」
慌てて自分の手や顔の匂いを嗅ぎだすセツナ。
奴がバタバタと動くので、近くにいた僕らにもその匂いが漂って来る。
「うん。この匂いって……」
確か昔、どこぞの夜会で僕を『出来損ない勇者』っと面と向かって言った、伯爵家の次男坊に、
「あらあら? これ、あなたの忘れものではなくて?」
っと、姉上がどこから集め、どこから取り出したのか分からないが、彼の背中にざざざっと大量に入れた、危機を感じると臭い匂いを放つ虫の匂いだった。
「いくら洗っても匂いが取れないって……あいつ、鼻栓しながら泣いてたっけ……」
僕が古き良き思い出? を懐かしんでる間に、
「くさ! くさ!」
そう言いながら、セツナがミナから貰ったタオルを広げた。
そこには……。
「あらあら?」
「おろおろ?」
「えっと……最近、夕方、寒くなってきたから、私のタオルが暖かくて、それで…………」
タオルの裏側に、びっしり! っと蠢く臭い虫。
それにドン引きの姉上とヒルダと、頬を引きつらせるミナが、音も無くセツナから距離を置いた。
「どうだ! 我の最強最悪な不運菌の威力は! 効果絶大であ~る!ふはははは……げほっげほっげほっ!」
高笑いしたせいで吸ってしまった匂いに眉を寄せ、盛大に咳き込みながらも、それでも勝ち誇った様に笑うモーリー。
どうやらセツナの不運は、彼女が作った『不運菌』によるものだったようだ。
「いやいや、そもそも不運菌ってなによ!?」
誰もが知りたいと思われることを、モーリーに聞いたつもりだったのだが、
「はい! 簡単に説明しますと、不運菌とは不運を呼び寄せる精霊たちの総称ですわ。彼らに取り付かれると、不運が集まってくる言われる厄介な菌ですわ。まあ、これだけ集まれば個人にとってはほぼ災害レベルの脅威ですわ!」
なぜか姉上が、とんでもない事をサクッと簡潔に説明してくれた。
「あの~姉上? なんでそんなに不運菌に詳しいのですか? しかもなんでセツナだけ?」
なぜ姉上が詳しいのかは置いといて、不運菌の特性と、ついでになぜセツナだけ不運菌が付いたのかを聞いてみた。
そんな僕に、姉上は極上の笑みを浮かべ、
「はい! 私も不運菌に付いては研究に研究を重ね、ついに不運菌が好む花の蜜を発見しましたの! それを成分そのままで粉末状にし、婚約破棄されるまで会うたびにこっそりアレに振りかけてました。ですが彼女の研究は、抵抗力が弱い相手に不運菌そのものを付ける。ある意味不運菌の完成体と言えるのです!」
うん?
それってもしかして…………。
「もしかしなくても、お前がやった嫌がらせで、俺だけ不運菌まみれってことじゃね~のか?」
「あらあら? もしかしなくても、それ以外のなにものでもないですわ!」
絶叫するセツナに、満面の笑みを返す姉上。
まあ、
もしかしなくても、
彼の不運って、
姉上と関わったことかな?
なんて事を思っても口に出さず、僕は只々彼に生易しい視線を向けるのであった……。
最後までお読みいただきありがとうございます!
早いもので今年もあとわずか!
そういう時って、なんか、やたらに良いことしたくなりませんか?
そんなあなたに朗報です!
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なんか、良いことをした気分になります!
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