閑話:姉上の決闘というか、やや、いやほぼ戦争? と言う名のお見合い(中編)
今度こそ祝! ブクマ1000記念!
いや、今日見たらきっちり1000の大台に乗ってました!
嬉しいです!
あと、普通にバカなこと書きたくてやりました!
後悔は・・・・・・多分してない。
それから数週間後。
姉上とソンザエルの王子、ソンシとの見合いのセッティングはスムーズに進み、今日、この日を迎えた訳だが……。
晴れ渡る青空に白い雲。
シュタイン王国から南西に位置するタリスマン領の平原に、僕はソンシと騎馬と歩兵合わせて一〇〇〇のソンザエル軍と対峙していた。
あれ?
お見合いってこんなだっだ広い平原で、こんな殺気だった兵士に囲まれてやるもんだっけ?
ソンザエルからシュタインに、平原の使用許可とか軍の移動許可とか打診されてた時点で、だいたい察しはついてた。
こっちも姉上不在で文句は言えないし、それにサラサラいう気もない。
ちなみに姉上には見合いのみの字も言っていない。
はずだ。
「ふはははっ! シルヴァーナ嬢を我が貰うには力を示せと言われたのでな。我が国の精鋭を用意してみた。我の国は個の強さより群れの強さに重きを置いているのでな」
してやったりと、得意満面のソンシ。
なるほど、姉上より強いってくだりを、集団の武力だと解釈したか。
思わず感心してしまう。
でもまあ、そんな頭が回るんだから、少しはまともに話し合いが出来ると良いな。
わずかな希望を残し、僕はお見合場所としてテーブルやらイスやら、軽食やらががセッティングされている、平原のど真ん中に歩き出す。
それを確認したソンシも、僕に向かって一直線に馬を歩かす。
もちろん、背後の一軍も一糸乱れぬ行軍で、僕に向かって真っ直ぐにだ。
「我が名はソンザエル王国第一王子ソンシ! それで、お前は誰だ? 姿形からして下民よりちょっと上みたいだが……タリスマン家の小間使いかなにかか?」
ソンシが名乗り、騎乗したまま僕を見下し片手を軽く上げると、背後の軍が声を揃えてわざとらしく笑いだす。
まあ、統率は取れているようでなによりだ。
きっと、合唱コンクールなら予選落ちってことはないレベルで揃っている。
「お初にお目にかかりますソンシ王子。私はタリスマン家次期当主。アルサス・タリスマンです」
まあ、これぐらい『俺様』じゃなきゃ、姉上に一瞬で気圧されるかな?
そう思い込むことにし。
兵達の嘲笑の中、僕は他国からわざわざ来た客人に、出来るだけ丁寧に礼を尽くした。
「ふむ。そなたが……ずいぶん田舎臭い小僧じゃないか。お前の姉は本当に『シュタイン王国の秘宝』なのか? もしや我をたばかっておるのではないだろうな?」
僕が名乗ったにも関わらず、いまだに馬上で(しかもこちらに聞こえるように!)ニヤニヤと隣の側近に耳打ちするソンシ。
ま、まあ、これぐらい厚顔な方が、姉上の口撃に耐えれるかな?
愛想笑いを浮かべながら、なんとか平静を保とうとする僕に、
「それで、我が側室に向える姫はどこだ? 出迎えにも来ぬとは……よほどの恥ずかしがり屋か、調教が必要なじゃじゃ馬か?」
品の無いソンシの冗談に、またも下卑た笑い声が平原に響く。
いやいや、それよりなにより、
「ソンシ王子。私の効き間違いでしょうか? 我が姉、シルヴァーナ・タリスマンを、あなたの側室にすると聞こえたのですが?」
クール!
僕はクールに外交をしてるよ!
冷静沈着に外交をしてると自分に言い聞かせ、再度問うのだが、
「世迷言を。我は、我が国は、そなたの国との友好のため、そこそこ美貌と武勇で有名な、たかが伯爵程度のタリスマン家のじゃじゃ馬を側室にとってやろうというのだ。有りがたいだろ? だったら早くソレを連れて来い!」
そんな暴言を、タリスマン領で、この国で、声を高らかに言ってしまう高慢ちきな他国の王子。
いや、もう、元ってつけた方が良いかもしれない。
へ?
姉上を側室にするとか、さらにソレ呼ばわりされて、
僕が怒ってる?
そんなことはない。
こんな奴には、まかり間違っても姉上は渡せないってだけで……。
だから、
「すみません。馬鹿な国のバカ王子。そこまでアホな要求は、一〇回死んでから、寝言で言ってそのまま永眠してください。じゃ、僕はこれで!」
出来る限り穏便に、そして紳士的に『この見合いは無かったことに』と言った僕を、
「きさま! 我を、我が国を愚弄する気か!」
バカ王子がシュッと抜き放った剣が襲う。
同時にソンシの後ろに控えてた一軍が、僕に向かって剣を抜いた。
きっとこのままなら、数秒後には僕の体に無数の剣が突き刺さるだろう。
まあ、このへんが頃合いだろう。
僕は首だけ傾けソンシの剣戟をかわし、口の端を吊り上げて片手を上げ、
「交渉は決裂だ。野郎ども! 戦闘準備!」
僕が声を上げた刹那。
「「「「「おおおう!!!」」」」」
ソンシが率いる一軍の左右をはさみ込むように、塹壕を隠したカモフラージュ用の板をはねのけ、弓を引き絞る左右合わせて四〇〇の弓兵と、
「お嬢の覇道を邪魔する奴は、俺等に蹴られて死んじまいな!」
なにやら怪しい事を言い放ち、ソンシの軍の背後に現れる重騎兵三〇〇。
さらに、
「ギョエェェェェェ!」
威嚇の声を上げながら、上空を旋回する竜騎兵一〇〇。
僕の一声で、ソンシの軍は、我がタリスマン家精鋭部隊に囲まれていた。
まあ、本当は彼らって、タリスマン家とか僕じゃなくて、姉上個人に忠誠を誓っているのだが、今回は特別に(僕が姉上の見合い相手と会うと言っただけだが、なぜか率先して)協力してもらっている。
ちなみにどれだけ精鋭かというと、
彼らは姉上と一分間。対峙した事のある勇者だと言っておこう。
そんな彼らの(ソンシが姉上を側室とかソレなんて大声で言うもんだから)本気の殺気に囲まれたソンザエルの兵士は、
「死んだ! 俺、さっきの殺気で、五回死んだわ!」
「あ、あれだ! 帰ったら結婚しようとか言ったの、アレがフラグだったんだわ!」
ガクガクとくずおれるばかりか、
「ひんっ。 ひひひひひひん!(ダメだよこれ。もう馬肉になるしかないじゃん!)」
訓練された軍馬でさえ、その場で膝を折る始末。
(協力を頼んでおいてなんだけど、こいつらの殺気。ハンパないわ!)
油断すると持って行かれそうな気持ちを、微塵も出さずに、
「彼らの他に、ソンザエルとの国境には一〇〇〇の兵を、それとは別に姉上に従う『影』の部隊(姉上に従う時点で、他国では精鋭中の精鋭)一〇〇が、すでにあなたの国の王を含めた重鎮の側にいます。この意味、、分かりますよね?」
「くっ! きさま…………」
僕が言った意味を正しく理解したのか?
ソンシが奥歯をギリギリと鳴らす。
さらに、
「王子! 魔通信具での王都への連絡が『天使が我らに罰を与えに来た!』との言葉を残し途絶えました!」
「ソンシ様! 王都の方角から、天上に向かうような光が! それになんだかオレンジ色に見える、炎のようなものと煙が……」
ソンシの耳元で側近たちのうろたえた声を拾う。
あれ? 僕は王都を燃やせなんて指示してないんだけど?
そう思ったが、まあ、今の状況的にはいい方向だから黙っておこう。
ここが落としどころなのだ。
このままいけば僕の権限でこの婚約は無しって、それ以外被害は無いよってことで、治められる。
ソンシの自尊心が少しばかり傷ついただけで、この茶番を済まそうとしたのだが。
「アッ! ルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!」
天から響く、聞き慣れた声に、
(ああ。すまないソンシ。どうやらこのまま終れないみたいだ)
彼の行く末を案じ。
僕は心の中で、静かに両手を合わせた…………。
最後までお読みいただきありがとうございます。
おかげさまで1000ブクマです!
でも、これに満足せず、頑張っていきたいと思います。
引き続き、ブクマ、評価、感想、よろしくお願いします!




