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よろしくお願いします!

「え? えええええええええええ! せっかくかき集めた悪霊(スタッフ)たちが全滅!?」


 よほど信じられなかったのか?

 メイビーが二回目ほど同じ言葉を叫んだ。

 

「私が、死霊の王である私が土下座して頼み込んで、渋々頼みを聞いてくれるような、物凄く面倒臭い、卑劣で極悪で、もう『人間の苦しむ姿を見て喜んでる、正真正銘の、本物の悪霊じゃん!』って奴らが…………」


 彼女の言葉を信じるなら、僕の両親の呵責ってやつは無くていいかも…………。


「まあ中には、『私はあの娘の嫁姿を一目見て成仏したいだけなんです。ですから本当に……少しだけですよ?』なんてのも混ざってましたが……」


 なんてことしてくれんだこの悪霊の王は!

 今度こそ本当に、良心の呵責に頭を抱える僕に、


「まあこいつも生前悪さばかりして、その娘も遺産目当てのジジイ相手の結婚なんですけど!」


「いやいや、ホントにぶっ殺すぞ! 僕の良心の呵責を返せよ!」


 真実を知ってしまった僕は、思わず猫と羊の皮を脱ぎ捨て叫んでしまった。

 刹那。


「あらあら?」「おろおろ?」


 いつの間にか僕の左右を固めていた聞き慣れた声が聞こえたと思ったら、


 ちゅどぉぉぉぉぉぉん!


「ひょげぇぇぇぇ! ぐえっ!」


 音を超える速度の火球が、メイビーの腹部を抉るように天井に突き刺したかと思うと、


 ふゅん!


 風切音が一つしか聞こえなかったが、光を超えるほどの神速で五つの短剣がメイビーを襲う。


「ぐふっ……いったいなにが…………」


 それ以上彼女の口は動かなかった。

 火球の威力で天井に張り付いた彼女を、光速で放たれた四つの短剣が四肢に纏うローブの端を縫い付け、彼女の頬を薄く切り裂くように残りの一本が天井に付く刺さったからだ。


「おろおろ、ヌシ殿を本気で怒らせるとは、どこの愚か者じゃ?(ふふふっ! 今回はわっちの方が0.0001秒はやかったようじゃのう? 義姉上殿?)」


「あらあら、私の愛弟を困らせるのは、どこの自殺志願者なのかしら?(くっ! アルが珍しく本気のツッコミしたものだから、思わずその横顔に見惚れて、反応が遅くなってしまったわ。不覚!)」


 なんだか言葉と、その裏に隠れてる駆け引きの真言さえ聞こえた僕の耳朶に、


「ふひぃぃぃぃぃ! ごめんなさ! 私が何をしたのかよく分からいけど、本当にごめんなさ! 土下座でも何でもします! 靴を舐めろと言われれば、靴の裏まで舐めます! だから、だから消滅させないで!」


 絶叫に近いメイビーの悲鳴。


 誤解無きように言っておくが、リッチーとは不死の王で、物理攻撃は当然。魔法の耐性も強い、最強の死霊の王である。

 その王が、


「あらあら、マリアーナ。アルを怒らせた者に、聖者の光りを! そうそう。己の罪を最大限に後悔させるよう、つま先からじわじわと聖火であぶってあげなさい!」

「ぐびぐび! はい! 分かりました!」


「いやぁぁぁぁぁぁ! 私死んでるのに! なぜかじわじわ死がせまってる恐怖うぅぅぅぅぅぅ!」


 四肢を拘束されジタバタしながらも右足から、タポタポお腹の聖女の聖火に焼かれるメイビーに、


「おろおろ? ここはやはり勇者。いや、元勇者の出番ではないのかえ? ほれ元勇者殿。己の剣戟で愚か者を成敗するのじゃ。じゃが一思いに殺るのではないぞ。わっちのヌシ殿を怒らせたのじゃ。ちゃんと極上の恐怖を味あわせるよう、手の指先からネチネチとやるのじゃ!」

「はい! 了解です!」


「いだだだだだだっ! 痛いって! マジで痛いから! あんた! 狙って拘束が解けないように、でも最大限の苦痛が与えられるように狙ってるでしょ!」


 ヒルダの言葉に従い絶妙な力加減で、左腕の指先に、威力の弱い剣戟を連続で放つジオルド。


 うん。

 なんか、僕の放った一言が、彼女(メイビー)の生死を握っているようだ。

 さすがにこれはイジメにじゃなかろうかと、二人を止めに入ろうとした僕の耳朶に、


「いや~~~! お願いだからいじめないで! ホントはアトラクション終了時に副賞として渡そうとした、全十二巻ある、アルサス様の日っき…………」



聖なる業火(ホーリーインフェルノ)!」


 彼女が懐から取り出した淡い銀色の表紙を見て、とっさに僕の持つ最大級の呪文を全力の魔力で繰り出した。

 当然、僕の魔力は枯渇し、内臓を押しつぶすほどの負荷がかかった。

 でも、だからそれがどうしたというのだ。


 金に糸目を付けずに魔道具で防犯し、巧妙に隠され、姉上でさえ踏み込まなかった(まあ、ここに入ったら絶交! っと言ったからだが)あの隠し場所にあったアレの表紙が、魔法の炎で焼かれていく。


「あぎゃあぁぁぁぁ! 燃えるって! 私成仏しちゃうって!」


 僕の秘密(日記)と共に、メイビーが青白い炎で焼かれているのは、まあ自業自得と言うものだろう。

 僕は、


「あははは! すみません姉上、ヒルダ。ラスボスは、僕が仕留めちゃいました!」


 口の端からダラダラと流れ出る血をものともせず、僕はアレが燃えきったことを確認して、意識を手放したのだった…………。

最後までお読みいただきありがとうございます!

四天王編3も、あと二話程度。

なんだかこの回も、グダグダで終わりましたね?

え? いつもこんな感じ?

まったくその通りでございます!

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