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よろしくお願いします!

『え? ええ!?…………えっと…………もしかしなくても全滅? あの中にはラスボス級の悪霊もいたのに?』


 アトラクションが開始してわずか一〇数秒。

 広い広いエントランスに生きてる生きて無いにかかわらず、僕らの他に動いている者はいない。


 圧倒的に規格外の僕らに、


『あれ? あれ?』


 呆然と呟くメイビー。

 敵であるはずの彼女に憐憫の思いを向けてしまった僕は、間違いなのだろうか?


 なので僕は、


 こっち!


 なんて書かれてる看板を指さし、


「ああ! 姉上! どうやらあっちが順路みたいですよ!」


 棒読みの僕に、


「あらあら! さすがですわアル! あなたが道を示さなければ、私たち、路頭に迷う所でしたわ!」


 キュッと胸元で手を合わせ、僕を見上げる姉上。

 いやいや、普通に見れば分かりますよね?

 

 などと、野暮なことは言わない。

 だって、悪霊と姉上。

 どっちの方が対処に困るか、分かるでしょ?


 なので、


「きっとこの先に悪霊を退治する、特別なアイテムがあるんじゃないですか?」


 そう言ってなぜか僕は、彼女(メイビー)の思惑にはまっていくのだった…………。



『さ、さあ、皆! 各々の武器を見つけたかな? こ、これからは反撃の時間だ! 手にした武器。それ以外は悪霊に効かないぞ! 本当に本当に! マジで効かないから! それだけ使って! お願いします! なので、もう少し(え? 死霊の追加が間に合わない!? 頑張って! 楽しませなきゃ、私の未来が……)ゆう~~~~くり休んでもらってから、次のステージに進みましょう? ね? ね! 願いですからゆっくり進んで下さい!』


 焦りまくり懇願しまくるメイビー。

 本当なら、さっさとアトラクションを(力付くで)クリアして、帰りたいのだが、


『ほんと! もう少し! もう少しだけ休んでいて! ええ? 浄化されるのやだ? 何言ってんの? ここでやらなきゃ私が……って! 逃げるな従え! 私こう見えてもリッチーよ! 死者の王よ!』


 そんな切ない声を聴くと、


『お願い無視しないで! ちょっと待って! よし! ジャバーレの谷から飛び降りる思いで、お給料倍払うから!』


 もう少しだけ彼女の思惑に、はまってやろうとか思ってしまった僕は悪くないと思う。



「うわぁぁぁ! 姉上、ここには死霊を倒す武器がいっぱいありますよ!」


 誘い込まれた部屋の中には探すまでもなく、これでもか! ってほどの対死霊武器が机に積まれていた。

 その武器(柔らかい素材の模造剣や先に綿の付いた弓矢など)の隙間隙間に、


『それはアトラクション専用の超強力な武器! これ以外の武器は悪霊に効きません! 本当にホント! なので、その他の武器の使用を禁止します! 鉄扇とか魔法とか使うと、ホントに危ないのでホント! 絶対禁止です!』


 っと、殴り書きの、必死感あふれるメッセージが添えられていた。


 四天王の一人であるメイビーが、アトラクションと称して僕らを殺そうとしているのは分かっている。

 でも、なぜかそのメッセージに哀愁やら共感(シンパシー)を覚えてしまった僕は、


「さあ、この武器を使って! この武器だけで、このアトラクションをクリアしましょう!」


 まあ、死ななきゃいいかな?


 なんて、軽い気持ちで部屋の扉を開け……うん? なんか立てつけが悪いのか? 開かない扉を、強引に押し開けた。

 刹那。


「あらあらアル。危ないですわ! えい!」


「え!? ぎょへっ!」


 僕の目の前を通り過ぎようとしていた凶悪な顔をした悪霊に、姉上が持っていたアトラクション用の弓が直撃したようだ。

 

 未練とか恨みを残して現世に留まっていたはずの悪霊が、周りからキラキラとした光りを纏わせ、


「あ、あれ? なんで……ただワシは……孫のために……」


 強引に未練を絶たれ、正常な輪廻の輪へと帰っていった。


 なぜだろう? 

 物凄く良い事のはずなのに、なんか物凄く後味が悪く思えるのは?


 そんな彼がちゃんと成仏できるようにと、その場で目を閉じ十字を切るのだが、


 ドンッ!


 軽く当たった衝撃に、思わず衝撃の先を見てしまった。

 そこにはアトラクション用の資材を持った極悪そうな顔をした悪霊たちが、


「あれ? まだ次のアトラクションは準備中だよ? 準備が済むまで、部屋で……きゃひんっ!」


 親切に言ってくれたのだが、


 ジュッ!


 っと耳朶に響いたと思ったら、


「あらあら、私の大事で、愛して止まない(以後省略)なアルにぶつかっておいて、土下座は基本ではないかしら? 私だって大好きなアルに、偶然を装ってぶつかるなんて、三〇回に一回しか成功しないのに!」


 僕がぶつかった悪霊を力付くで成仏させつつ、姉上が本音を吐露した。

 姉上の殺気に当てられ、悪霊が成仏したようだ。


 どうやらしょっちゅう姉上が殺気に近い物を漲らせて、僕に突撃して来るのはそう言うことらしい。


 どうでも良い謎が解決したのは、ホントにどうでも良いのだが、


「あらあら、悪霊がこんなに沢山。これはもしかしなくても、ボーナスステージってモノのようですわね!」


 そんな姉上の言葉に対し、


「おろおろ! それならば、わっちが高得点を出し、ヌシ殿に『さすがは僕の婚約者! 凄い活躍だったよ!』っと、微笑みながら頭を撫でてもらうのじゃ!」


 そんなことひとっことも言ってないのにいきり立ち、魔力の糸で拘束したアトラクション用の多数の武器を、


「我が意のまま、敵を蹴散らせ!」

「うぎゃ!」

「ええ! 僕、頼まれたコレを……ふあぁぁぁぁ!」


 四方八方に飛ばし、無防備な移動中の死霊に放ち、次々と成仏させていき。


「あらあら、アルが頭を……それは頑張らなくてはなりませんわね!」


 それにつられる様に、姉上が弓を片手に地面を抉る勢いで蹴りだし、


「えい! やあ! とうっ!」

「ままま待って! まだ仕事が……」

「また道半ばで、俺は……」


 可愛らしい声が響き、瞬く間に悪霊を成仏されていく。

 

 悪霊が成仏するのは良い事なのだが、


「なんか、悪霊を成仏させてるのに、物凄く罪悪感を持つのは僕だけ?」


 思わず呟いた僕は、決して、全然悪くないと思う。


 さて、アトラクションの仕込み中だったと思われる悪霊を、わずか一〇数秒で殲滅させた僕らの耳朶に、


「え? えええええええええええ! せっかくかき集めた|悪霊≪スタッフ≫たちがぜっ、全滅!?」


 今この場に来たのか? 死霊の王であるメイビーが、なぜかバケツとこんにゃくを付けた釣竿を肩にかけたまま、呆然と僕らを見ていた。


最後までお読みいただきありがとうございます!


さあ!

ここまでだらだらと続けていたこの物語ですが、なんと!

ブクマがもう少しで四ケタの大台になります!


うわぁぁぁぁぁ! ドンドンドンパフパフ!


皆様のブクマ、もちろん評価、感想などもお待ちしております!

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