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作者体調不良のため、予約投稿とさせていただきます。
低音だが良く響く声が、会場に響き渡った。
「このバカ王子、セツナって名前なんだっけとか、やっとお出ましかよジジイ! もしかして出るタイミングとか計ってた? とか、僕の感情は後回しにしよう。きっと予想以上の混乱振りに、登場するタイミング逃しちゃったんだろうな」
「うん、アルサスよ、心の声がダダ漏れじゃぞ!?」
「ワザとです!」
「お前、シレッとした顔で不敬を働くな!」
「シツレイシマシタ」
「棒読みだよね? ワシに向かってかなりの無礼だよね?」
バカ王子の父親に八つ当たりし、程々怒りが収まった僕は、これ以上の会話は面倒臭いと頭をたれて膝を付いた。
そう。
このフランクすぎる声の主は、この国の頂点。
国王陛下のものだったのだ。
「ったく、一応ワシ王族だよ! そもそも……」
「あらあら王様? 何しにいらしたのですか?」
愚痴が続きそうなのを察した姉上が、強引に話に割り込む。
まあ、それも十分不敬罪なんだけどね。
渋々と言った顔で白い顎鬚を撫でる国王が、上座に用意されていたイスに腰を下ろした。
「まあよい……さて、今日は無礼講だと聞き及んでおるが……ずいぶんハッちゃけたのう」
(冗談のつもりだろうけど、笑えないから! 見てたんならつまんない冗談で場を和まそうとするな! 余計に寒くなるわ!)
護衛を連れて現れた国王に、心の中でメッチャ文句を言う。
だが、これでやっと事態が収集できると安堵したのも事実。
なのに、
「父上! この騒ぎの原因は、全てあの悪女、シルヴァーナです!」
バカ王子は、さらにこの場を混沌に導く言葉を発した。
(もう、不敬罪覚悟で殴っちゃおうかな?)
さっさとこの茶番を終わりにして帰りたい僕が、そんなことを考えてるうちに、
「そうです王様! シルヴァーナ様は、権力を笠に着て、私を……」
(三流の芸人でも、もっとまともな芝居するわ!)
この場の誰もが思ったのに、自分の芝居に感極まった彼女は、ガクガクと膝を揺らしてその場にくずおれた。
そんな胸焼けしそうな芝居を、
「はあ? バカなの? 何度も言ったじゃん! シルはこの国に必要で、お前の婚約者なんだから怒らせること無く丁重に扱えって言ったじゃん! お前バカなの?」
ミナのことなど眼中になく、国王は己の息子を指さして弾劾した。
それに対しバカ王子は、
「ぐっ……俺……私だって最初はがんばったんです! でも、この女、シルヴァーナは、ことあるごとに私と弟と比べ、ダメ出しするんですよ? 知ってますか? 彼女に好きな宝石を聞いても、好きな洋服も、好きな食べ物も、誕生日プレゼントに何が良いと聞いても全て『弟、もしくは恋弟か愛弟』っとしか答えないんですよ! もう、私は、私は……」
うん。彼も姉上相手に、努力はしていたようだ。
バカ王子って言って済まなかった。
これからは、天災に抗おうとする、ちょっと間抜けな王子に格上げしようと思う。
そんな、本心を吐露するちょっと間抜けな王子に、
「だから、それも含めて頑張れって言ったじゃん! 交際費だって国から結構な額出してるのに、なんでそんなぺちゃ……げふんげふん。男爵令嬢に貢いじゃうかな?」
「王様? 今、私の胸見てなんて言いました? 本当に、ぶっ殺しますよ!」
この場の空気に飲まれたのか?
ミナまでも不敬な言葉を吐くこの混沌。
カツッ~ン!
そんなこの混沌を収めようと言うのか?
姉上がかかとの高いヒールで一歩、踏み出した。
三日連続ジャンル別一位!
三日天下到達!
あと何日この天下が続くのか!
なお、この物語は、皆様のブクマと評価でできております。
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