閑話:鉄壁のマリアーナまたの名を、お腹タポタポ聖女の物語
今回、作者の独断と偏見と多量のアルコール成分により、マリアーナにスポットを当ててみました!
「マリアーナ後は頼んだ!」
そう言い放ち、アルサス様がヒルダ様と共に消えていった。
姉であるシルヴァーナ様がモノ質を取られ、ミナとセツナ様が奮闘しつつも劣勢な西門に向かったのだ。
それは分かっているのだが、南門だって十分劣勢だ。
なのに、アルサス様は西門に行った。
もしかしてこの門は、この町は見捨てられた?
いや、そうではない。
彼の指示は無謀でも、南門を放棄したのでも、ましてやこの町を見捨てたのでもない。
だってだって、ここには!
「ぐびっ! アルサス様に任されたからには、この門。ぐびっ! このマリアーナがしっかり防いでみせましょう!」
背後から魔物たちが殺到するのに、頬に流れる金髪をかき上げ見栄を切る|私≪マリアーナ≫がいるのだから!
アルサス様がこの門を、私に信頼してこの門を任せたからだ!
なんとなく二回言ってみた。
それにしても…………。
殺到する魔物に対し、南門に立つ美少女。
たぽんっ!
魔力回復薬でお腹がタポタポして無かったら、物凄く絵になる光景なのに……。
だが、そんなお笑い担当のような私でも、元々勇者を支えた強者の一人。
一〇や二〇の魔物相手に遅れを取ることはない。
まあ、南門に殺到する魔物は軽く三桁を越えているのだが。
しかも、私は一騎当千といっても補助魔法や回復魔法のエキスパート。
とても純粋な攻撃力では、魔物の軍団と渡り合えるとは思えない。
誰もがそう思い、気持ちが萎えはじめた所に、
「武器強化魔法! 城壁右翼の皆さん先行する魔物に一斉射撃! 火炎付与強化魔法! 左翼の皆さんは出来るだけばらけて矢を! 敵を混乱させて下さい!」
私のたぽんと言いうお腹の音と供に、キリリとした声が響く。
「お……おう!」
戸惑いながらも補助魔法とその声に、思わず動き出す兵士の足取りは軽い。
魔法が効いているのだ。
指示通りに動いてくれる兵士、傭兵たちを確認した後、私は破られた南門に向い、
「絶対零度の壁!」
アルサス様がいなくなり、一時的に反抗が弱まる南門に向かって雪崩れ込んでくる魔物に向い、地面から飛び出た氷の槍は、魔物たちを串刺しながら網目状の壁を作りだした。
予期せぬ反撃に、魔物たちが浮足出すが、
「怯むな! 魔法部隊、弓隊、中央で指揮する人間の女を攻撃しろ! あれさえいなくなれば敵は総崩れ! この門は容易く落ちるぞ!」
魔物を指揮する魔物(グライオンの参謀で、現指揮官のムルル)が目ざとく私を捕え、的確な攻撃指示を与える。
それに応える魔物により、私に向かって来る攻撃が苛烈になる。
それに対し、
「重歩兵前へ!」
即座にマリアーナの前に大盾を構えた重騎士が立ち並ぶ。
大盾で魔物の視界から外れた所で、
「究極防御! そのまま二分現状を維持し、その後後方に下がって待機。その間に私は左翼にて指揮を執ります!」
魔物の意識を中央に寄せたまま、重騎士や他の兵士に隠れ左翼の城門の到達。
「武器強化魔法! 狙いは後方の魔術師部隊! 打て!」
私の号令の元、左翼の弓兵は強化された弓矢で、はるか後方の魔術師部隊を襲う。
「左翼はそのまま門に近付く魔物を威嚇、それと、重傷者は中央後方へ集めて下さい。あとで一気に治療します!」
対して魔物の軍は、
「くっ! ちょこまかと動きおって……。指揮する娘を探せ! 見つけ次第魔術師部隊は即座に攻撃しろ!」
ちょこまかと移動するマリアーナに狙いを定めるが、
「ふふふ。回復魔法と補助魔法しか使えない私が、なんで激戦ばかりの勇者と一緒にいて生き残ってたのか、少し考えれば分かりそうですのに」
魔物の遠距離攻撃を巧みに避けながら、しかも、たぽたぽと大きなおなかを揺らしながら、
さらに、
「グビグビッ! ぷはぁぁぁ! 武器強化魔法!」
移動中にも二本の魔力回復薬を飲み干し、兵士たちに支援魔法を繰り出す。
その後、アルサス様が戻るその時まで、魔物たちは門を越えることすら出来ず、転々と拠点を変える私に翻弄され続けた。
後に町民たちは語る。
南の門を死者も出さずに守りきったのは、|金色の髪をなびかせた完全無欠の少女《鉄壁のマリアーナ》もしくは妊婦のような守護者だと………………。
「ちょちょっと待って下さい! 私の活躍これで終わりですか!? この後、ピンチになってからが凄いんですよ? それに、お腹タポタポの少女って二つ名。物凄くカッコ悪くて嫌なんですけど!」
なんにしても、どんな二つ名でも、彼女の名声は大陸全土に広がった…………(笑)。
最後までお読みいただきありがとうございます!
閑話ってなんだがSSみたいで楽しいですよね、何となくこの人の閑話が読みたい!
なんて奇特な方がいれば、ぜひ感想欄にでも書いてみてください。
もしかしなくてもがんばります!




