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さあ、この魔力を封じられた状況で、姉上はどうするのか!
なんとな~く結果がわかっちゃってる人も、最後までお読みいただけると幸いです。
「これで魔力は封じたわ! さあ、さっさとこの女にぎゃふんと言わせて! そして私は健気で頑張り屋で、心美しい美少女として幸せを手に入れるの! きゃはははははははあははっはははは!」
ちょっといっちゃてるミナの笑い声。
「いやいや、さすがにその顔で健気とか心美しいって言われても……」
魔物の群れが、魔力を封じられた姉上に殺到するのに、思わずモニターに映し出される、悪役令嬢? 物語に出てくる悪い魔女? を思わせる物凄く悪い笑みにツッコんでしまう。
え? なんでそんなに余裕なのか?
だって、そんな危機的状況である、渦中の人物って、
「あらあら……う~~~ん……これはこれでチョーカーみたいでアリかと思ったのですけど…やはりダサいですか? どう思いますアル?」
いつの間にか持っていた手鏡で、髪をかき上げ自分の首元を確認。
さらに僕に意見を聞いて来る姉上だからだ。
「うん姉上。それより魔物が来てますけど!」
さすがに余裕持ちすぎだろ! っと警告を鳴らすのだが、
「あらあら? 私の愛して愛して愛した止まないアルとの逢瀬の邪魔をするなんて、なんて無粋な者たちでしょう?」
「あはははは! なに余裕ぶっこいてんの? 魔力を封じられたら、もう人外以上の力使えないのよ? 泣いて喚いて逃げなさいよ! ね? ね? いやいや早く早く逃げなさいって! さもないとあんた本当に…………」
なぜか裏切ったミナが、姉上以上に姉上を心配するような言葉を飛ばす。
だが、その瞬間。
「やはりアルの好みではないわね、えいっ!」
ぶちっ!
ミナの言葉を完全に無視し、姉上が力任せに魔力封じの首輪を引き千切った。
いや、まあ……うん。
そうなるだろうなと思う僕を余所に、
「「「「「え? えええええええええええええええ!?」」」」」
バルサス、ミナ、器用に飛び掛かって来ていた魔物が、空中で動きを止めた。
それぞれ時が止まった様に、驚愕の表情を浮かべる。
「あらあら? 私の力の源が魔力だなんて、誰が言いましたの?」
姉上は静かに笑みを浮かべるのだった…………。
「え? なにそれ、あんたのその力、魔力じゃないの!?」
人類を裏切ってまで姉上の不意を突いた策略がいとも簡単に覆された瞬間を、呆然と見つめるミナと勝利を確信した次の一瞬に、それを覆されて飛び掛かった場所で着地。
そのまま立ち尽くす魔物たちを前に、姉上は、
「あらあら、魔力を使って敵を攻撃するなんて、魔力が鼻からダダ漏れて、いつも鼻毛をひーふーとなびかせているぽっちの誰かさんしかいませんわよ?」
言いながら姉上は優雅に地面を蹴り、その場から後退。
刹那。
ちゅどぉぉぉん!
ちゅどぉぉぉん!
ちゅどおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉん!
一瞬前まで姉上がいた場所を中心に、数発の火球が超高速で被弾。
当然。
「ぎゅおぉぉぉぉぉ!」
「むげら!」
「あぴょぉぉぉぉぉ!」
近くにいた魔物たちとミナが、当然のように吹き飛ばされた。
「ちっ、外したか」
僕は『マガツー君』から聞こえたぼっち……ごほんっ。
彼女の言葉は聞こえないふりをした。
「ふぐぅぅぅぅぅぅ! なんで? なんで私ばっかり!」
爆風で吹き飛ばされ、地面に這いつくばること数度目のミナは、口から砂を吐き出しながら地面を叩く。
そんな彼女と並み居る魔物たちに、姉上は、春のそよ風の如く柔らかな笑みを讃え、
「あらあら? 私の力の源は……もちろんアルですわ! この力はそう! 思い起こせば十数年前。心地よい風が吹く夜でした…………」
身内の自慢話を語り始めるのだった。
最後までお読みいただきありがとうございます!
っと、
いつもいつも、誤字脱字報告ありがとうございます!
最後までお読みいただいてわかるように、結果はまあ、姉上ですからっという感じです。
次回、姉上の自慢話で終わらぬよう頑張りますので、応援の方よろしく威願いします!




