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昨日更新できなくてすみません。

だって!

だって!

後書きに続く。

「ふっふっふ。どうやら陽動とは気付かず、人間どもは四方の門に兵力を分散してくれたようですね」


 西門の前でほくそ笑むのは、魔王軍一二騎士一人『真の知将』と呼ばれるメフィスト。

 そして彼の背後に待機するのは、九名の一二騎士とそれが鍛えた魔物の精兵軍だった。


「さあ、三つの城門で我らと互角に戦えていると希望を見い出す人間どもに、絶望と言う名の美酒をくれてやりましょう!」


 やや独創性に欠けた台詞を吐き、魔王軍の本隊が西門へと進軍する。

 そんな彼らの目前に、一人の人間の少女が立ちふさがった。

 もちろん、誰何するまでもなく、

 千を超す魔物たちを前に、臆するどころか満面の笑みを浮かべるのは、


「あらあら? 私が愛して愛して愛して止まない、愛弟に任されたこの西門(結婚式場)無粋な魔物(招待されてない方)は、通せなくてよ?」


 朝日に輝く銀糸の髪をたなびかせた姉上だった。



 今さら言うことでもないが、姉上は見た目だけはどうこからみても可憐で儚そうな令嬢だ。

 しいて言えば普段着用のやや動きやすいドレスを身に纏い、扇子を優雅に口元に運ぶ美少女。

 まあどんな姿をしていても、見た目だけなら超が五つぐらいつく美少女だ。

 そんな少女が、戦場のど真ん中にいることが異常だと思う。

 だが、


 魔物たちはそう思わなかった。


「ぐははは! 人間にしてはちょっと美しい(魔物の美的感覚でも十分超が付く美少女)の小娘一人が、何を偉そう…………」


 いつもなら本能で感じとれたかもしれない。

 でも、戦争という特殊な状況下で感情が高揚し、危機管理能力が鈍ってしまったのだろうか?


 戦場の空気に酔ってしまった魔王軍一二騎士の一人。

 オーガの上位種である、オーガキングのザブザが、魔物の軍勢に立ちすくんでいる(ように見える)姉上の肩に、そのごっつい腕を伸ばした、

 刹那。


「あらあら? 私の体に、私の許可なく触れていいのは、私が愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して止まない、愛弟だけですわよ?」


 しとやかに姉上が呟くと、その細い指先をそっと丸太のようなザブザの腕に這わせ、


 ヒュンッ!


 っと反対の腕に持っていた扇子を、鋭い音を立て一閃。

 まあ、当然の結果なのだが。


「え? え? え? ええええええええええ! おでの、おでのうでがぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ザブザが驚愕に目を見開いたその先には、


「あらあら? ちょっと撫でただけですのに、粉砕骨折だなんて……カルシウム足りてます? ちゃんとお魚食べてます?」


 心配そうな言葉とは裏腹に、まったく心配して無さそうな、むしろ面白がってる節のある態度。

 それに、粉砕骨折なんて見た目じゃ分からないから。

 完全に分かっててやってる(確信犯)としか思えない姉上は、


「あらあらそれでは始めましょうか? |あなたたちとのパーティー《魔物殲滅戦》を!」


 それはそれは、とても良い笑顔を魔物たちに向けたのだった。



 それからの西門は、まあ、いつものように?


 姉上の独壇場だった。


ガーディアン(防御力の高い)部隊を前面に展開! 魔術部隊! 高出力攻撃呪文の用意! 魔力の残りなど心配しないで、撃って撃って撃ちまくれ! あの化け物(人間の女)を、血祭りにあげろ!」


 四天王バルサスの一二騎士一人『真の知将』と呼ばれるメフィストが叫ぶ。


「あらあら? こぉ~~~~んなにか弱くて、大人しくて、愛弟の愛が無いと生きていけない脆弱な淑女に向かって、化け物だなんて……乙女心が傷つきましたわ!」


「そんな戯れ言、誰が信じるというのだ! お前の両手にあるのは、何だと思ってるんだ!」


 きっと魔物の中では冷静沈着で、切れっ切れの魔物だったのだろうメフィスト。

 そんな彼が半狂乱で叫ぶ姿に、魔物たちがざわめく。

 いや、まあ、魔物たちがうろたえているのは、それじゃないのだが、

 だって、


「あらあら? 私の右手にあるのは、『くたばれ人間のメスが!』っと、アルに『戦ってても姉上は綺麗だ! 僕のお嫁さんになって欲しいぐらいに!』なんて言ってもらえるように着飾った私を冒とくした無礼者で」


 多分アレは、一二騎士の一人『剛腕の将』と呼ばれた片目のミノタウロスのミノンだ。

 そんな彼は今、顔をパンパンに腫れ上がらせ、自慢だった頭部の二本あるうちの一本は根元から折られ、姉上に残りの角を持たれて引きずられてる。


 そして、


「あらあら? そして左手にあるのは、『貴様の四肢を折って動けなくした後、目の前で大事な者たちを一人ずつ殺して、絶望を味あわせてやろう!』なんて……私の愛弟を! 私の愛して愛して愛して止まないアルの殺人予告をした、ただの愚か者ですわ!」


 身を縮めても姉上より大きな物体は、『狂乱の狂戦士』と呼ばれていた、巨漢特有の剛腕と驚異の回復力を持つトロールナイトのチュエインだ。


 彼は宣言とは逆に姉上に両手両足を砕かれ、驚異の再生能力で再生した両手両足をさらに砕かれ…………なんて事を数えるのがバカらしくなるほど繰り返され、


「生意気言ってごめんなさい。生きててごめんなさい…………」


 姉上に首根っこをつかまれ、うつろな瞳で引きずられていた。


 まあ、姉上にそんなこと言ったら、『地獄めぐり(死にたくても死ねない恐怖と苦痛!)』っていうツアーにサインしたようなものだけどね。


「と、とにかく、やっちまえ!」


 不毛な言い争いだと感じたのか、知的さの欠片も無くなったメフィストの号令の元、彼を守るように固まるガーディアンの頭上を越えて、色とりどりの魔法が姉上に飛来。


 まるで大国同士の戦争のように、頭上から雨あられのように降り注がれる攻撃魔法。

 よほど勇者レベルの人間でない限り、防御は無理、回避不可能の攻撃だ。


 そんな窮地に(みたいなものに)立たされたはずの姉上だが、


「あらあら? そんな雨あられ程度の攻撃では、淑女である私は倒せなくてよ!」


 淑女は関係ないと思うのだが?

 しかも、


「いだっ! いだだだだっ! そこ折れてるから! なんで折れてる場所を集中的に当ててんだ! いえ、ごめんなさい! ホント済みません! だからいだだだだだっ!」


 姉上は降り注ぐ魔法を、躊躇することなくチュエインを盾にし、さらにせっかく治った四肢に当てているのだ。

 トロールが持つ回復能力で回復したての場所を、姉上が右へ左へと動かし魔法を直撃させていた。


 高速で降り注ぐ魔法を防げる技術は物凄いのに、なぜだろう? とても残念感があるのは……。


 それにチュエインを盾にしたのは、やはり家族ネタ()を使った脅し文句を、まだ恨んでいるようだ。


 とにもかくにも、魔物たちの攻撃を完全に防いだ姉上は、

 

「あらあら? もう終わりですの? それではそろそろ、私の番ですわね!」


 姉上の言葉に一陣の風が吹き、美の女神と思わせる笑みに、魔物たちの背筋が凍りついた。

 刹那。


 ずざざざざざざぁぁぁ!

 ばきっ! ぼこっ!

 どっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!


 目の前にいた、数百の魔物が忽然と姿を消した。

 そう。

 姉上が高速で放ったチュエインの巨漢に、皆空高く吹き飛ばされたのだ!


 その中には、名前も名乗れなかった一二騎士の魔物の三人が含まれていたようだが……。

 良かったねっとしか言いようがない。


 だって姉上の攻撃が、それだけで済む訳ないのだから、一撃で楽になれた彼らは幸せじゃない?

 そんな間にも、


「それでは……えい! やあ! とおっ!」


 少々気の抜けた声で、魔物の軍団の中央に降り立ち、見るも無残に魔物たちを服飛ばしていく姉上。

 その光景は、敵である魔物に恐怖と言う名の癒えることのない傷を心に刻み、


「はぁぁぁぁぁぁ! えい!」


 味方である人間にも、『いやいや、このお方には絶対逆らっちゃいけねぇ!』という、絶対服従の精神を植え付けた。


 さらに姉上の快進撃は続き、数百の魔物と半数以下に減らされた一二騎士をほぼ吹き飛ばした。


 ああ。そう言えば、『真の知将』と呼ばれるメフィストなんて魔物もいたみたいだけど、腹に食らったぐーぱんの一撃で戦場の片隅でうずくまり、


「ぐごっ! うぷっ! いやもう勘弁して下さい! ほんとにもう、私はバカです! あなた様に(破壊の女神様)に逆らうなんて、私は大馬鹿です! ぐえぇぇぇぇぇぇ!」


 色んな物を地面に吐き出しつつ、天に祈りをささげていた。


 そんな状態で、魔物の軍団がちゃんと機能しているはずもなく、


「うわあぁぁぁぁぁぁぁ! みんな! みんな殺される! いや、それ以上の事を…………うわあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 死よりも恐ろしいという恐怖を感じ、魔物の軍団は敗走。

 そして、多くの魔物が逃げ出し、姉上の視線の先には、まだ逃げ出すのをこらえている魔物数匹と、


「…………よもや、我が相手をすることになるとは」


 三メートルはある人外の体躯に、それを覆う全身鎧。

 さらに鉄柱のような腕には大剣と大盾を持つ超ド級重歩兵。

 一二騎士最後で最強の騎士、バルサスであった。


「ふはははっ! 面白いぞ人間の小娘よ!」


 兜から漏れる、場数を踏んだ冒険者でも逃げ出すような、殺気を多量に含んだ赤い眼が姉上を見下ろすのだが、


「………………あらあら? もう最後(中ボス)ですの?」


 そんな殺気どこ吹く風?

 っとばかりに、優雅に笑う姉上。


 そんな一触触発の空気の中。


「はい! お姉様お疲れでしょ? お飲み物をどうぞ!」


 場の空気を読めないのか?

 もしくはわざと読まないのか?


 場違いに明るい声を上げ、ミナが姉上に水筒を捧げた。


「あらあら? 珍しく気が利くわね」


「いえ、お姉さまと一緒だと、ただ単に他にやる事がないんです」


 遠まわしに「こんな戦場のど真ん中だけど暇だ!」っと言ってるミナが差し出す水筒を受け取る。

 だがしかし、姉上はそれに口をつけること無く動きを止めた。


「ん? どうしたんです?」


 姉上のモニター越しに、コクンッと首を傾げるミナ。

 いくら暇だといっても、姉上がいなければ確実に死ぬと分かっているのか?

 今日のミナは気味が悪いぐらい素直だ。

 そんな彼女を確認する事も無く、姉上の視線は空に向き、


「ちょっと野暮用を思い出したわ。ミナ。三時間ほどここをお願いしますわ」

「え? ちょちょっ! ちょっとま…………」


 ミナの静止を初めからスルーした姉上は、陥没するほど地面を蹴り、空のかなたに消えていった。

 去り際。


「あらあら、よろしかったらソレ(チュエイン)使ってもよろしくてよ!」


「ちょっと! なに言ってんのよ! こんなのか弱い私に待ちあがるわけ無いでしょ! ………………ゴリラ女」


 ドスッ!


 この距離なら何も出来ないだろうと叫んだミナの言葉と同時に、姉上が持っていた水筒が、鈍い音と供に地面深くにまで突き刺さったのは、気のせいだと思いたいミナだった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

前書きに書いた、更新できなかったその理由は!

なんと!

昨日はノンアルコールデイだったのです!


本当は更新したかった!

でも、

酔っぱらって書くのが、この作品のスタンス!

だから、涙を呑んで・・・・・・・・・・・・寝ました!


こんな作者ですが、今後もがんばっていきたいと思います。

なので、ブクマ、評価、感想などいただけたら幸いです。


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