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よろしくお願いします。

 魔物たちを殲滅し悠々とメゾンの町に入った僕ら。

 まあ町と言うには馬車道も石を敷き詰めたものでなく、ただ馬車と旅人に踏み固められた道で、近隣の大きな町と町の経由地点という訳でもない、人口三〇〇〇人ぐらいのびっくりするほど何も無い町だった。


 そんな町の町長と名乗った老人、ピサロの家に招かれ、そこそこ豪華な夕食を頂いた後で、僕たちはこの町の状況を聞いていた。


「そうですのじゃ! 奴らはただの先遣隊ですのじゃ! 本隊は魔王四天王の一人デグルドと名乗る魔物が率いる精鋭部隊なのじゃ!」


 きっと入れ歯だったら吹き飛ぶ勢いで説明する(唾を飛ばす)ピサロ。


 町長の話を『姉上の影』に確認した所…………。

 四天王のデグルドと魔王軍一二騎士も確認できた。

 率いる魔物はおよそ二万。

 こんな町なら、ただ進行するだけで潰せる戦力だ。


 そんなマズイ状況なんてことは町長に伏せ、僕は興奮冷めやらぬ彼をなだめすかし話の続きを促した。


 一週間前、漁業とわずかな交易で暮らす、国の要所でも、ましてや経済の要でもないこの町に、突如魔物の大軍が押し寄せた。

 それはこの町のわずかな兵士(ほぼ素人の自警団)が抵抗する気も起きない数だった。


 だが、魔物たちは町を囲むばかりでいっこうに町には入ってこない。

 さらに、決死の思いで四方に放った救援を求める早馬を、魔物の群れは攻撃しないどころか道を譲って通した。


 しかもさらにおかしなことに、救援に来た兵士や冒険者が魔物の異常な数に引き返し、王都へ騎士団の要請を乞う早馬は、ピンポイントで魔物の群れに襲われ、命からがら逃げ帰ったという。


 さすがに町長も魔物たちの行動に、これはおかしいっと思ったそうだ。


 ならば苦肉の策でと、個人で最大戦力である勇者あてに早馬を出した。

 するとどうであろう。

 魔物たちは、どこぞの聖者が海を割るように道を開けた。


「これはきっと、神様の思召しじゃと思ったのじゃ!」


 思ったのじゃ! じゃね~よ! これ完全に……。

 俺は適当に相槌を打ちながら、視線を仲間に向ける。


「…………やはり、俺たちをおびき寄せる罠だね」

「ぐびっ! はい、それ以外、ぐびっ! 考えられませんね!」


 真剣な眼差しで答えるジオルドと、魔力回復薬をがぶ飲みするマリアーナ。

 うん。

 そもそもなんで(マリアーナ)は、何もしてないのに魔力回復薬をがぶ飲みしてんの?

 すでに中毒症状(色々ヤバイ)のマリアーナを冷めた視線で見ていた僕に、


「おろおろ主殿! 町の柵は城壁以上の強度の壁にしてきたぞ!」


 土魔法で町の全集に防壁を作ってきたヒルダと、


「あらあら私も! 私もちゃんとアルのお願い叶えてきたわ!」


 色々と無茶なお願いを叶えて来てくれた姉上が、元気よく帰って来た。


 どんな小細工を頼んだかは後のお楽しみだ。

 まあ、罠だって分かっていたから、それなりの用意はしてきたし準備も出来る。

 今はそんなことより、


「主殿! わっちはがんばったのじゃ! それはそれは、物凄く頑張ったのじゃ!」

「私はぼっちの倍が頑張りましたわ!」


「おろおろ?」

「あらあら?」


 お互い微笑んでるのに、なぜかバチバチと音がしそうな二人の視線にのほうが危険だ。

 そんな二人は、お互い視線を外さぬまま僕の方に早足で移動してきて、


 ぐいっ!

 ぐいっ!


 なぜか頭を押し付けるようにしてくる。

 もしかして…………。


「いやいや、そんな、いい年し…………ごほんっ。花も恥じらう乙女の二人が、まさか頭を撫でて欲しいとか…………」


 こくりっ!


 こくりっ!


 呟く僕の目前で、二つの頭が上下した。


 まあ、なんか恥ずかしいけど二人の労働の対価としては、めちゃくちゃお安いのでは?

 そう思わないでもないが、口に出して言うともっと凄い事を要求されそうなので、僕は意を決し、そっと二人の頭にそれぞれ手を乗せ、優しく頭を撫でた。

 刹那!


「ごろにや~~ん!」

「ごろごろごろごろ」


 猫なで声では無く、本当に猫の鳴き声をまねた美少女が二人いた!


「いや、ホント、なんて言うか…………」

「そうですね。私が言うのもなんですが…………」


 生暖かい視線のジオルドにマリアーナに、


「うん。言いたくないなら言わなくていいよ! むしろ何も言わないで!」


 そう懇願する僕に、


「あ! アルサスの二つ名は『二匹の美獣使い』ってのはどうだろう?」


 真面目な顔して、僕に変な二つ名を付けるセツナと、


「うわ、引くわ! 魔映写機があれば、絶対撮っておいてゆすってやるのに」


 ドン引きしながら、怪しい発言をするミナ。


 良しミナ、後で絶対泣かす!


 格たる思いを胸に、僕らは明日本腰を入れて攻撃してくるだろう、四天王への準備を整えるのだった。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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