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よろしくお願いします。
「さあアル、次の四天王は…………」
四天王に狙われたベウゼ王国の危機? から二週間後。
次の四天王を姉上が選んでる、学園の昼休み。
姉上が自分の皿にあるチキンソテーを、ナイフで一口大に切り、
「はいアル。あ~~~~~ん!」
なんてフォークで僕の目の前に差し出しながら言った言葉だった。
ぱくっ
「もぐもぐ、ゴックン! っで、まだ四天王退治をやるんですか? 魔王から四天王たちに直接『もう終わりだから』って言ってもらった方が早くないですか?」
姉上から差し出されたチキンソテーを素直に口に含みながらも、反論する僕。
なんで『あ~~~~ん』をしたか?
決まってるでしょ。
だって、姉上の『あ~~~~ん』を拒否したら、姉上が泣く(嘘泣きする)んだよ!
すると食堂がシイ~~~~ンっと静まり返り、
姉上親衛隊たちが駆け寄って来て、
「どうしたんですか! 我が女王様! は! もしかしてこの料理が気にくわなかったと…………よし、この学園の料理人の名を、『女王様を泣かした』リストに追加しろ! なに、さすがに直接殺しはしない。まあ、王国内では路頭に迷うこととなるだけだろうがな!」
なんて物騒な事を言い出すんだよ!
さらに、
「はい、我が女王様を泣かせた罪。私たち料理人、及び女房子供の命で償いさせていただきます!」
なんて言いながら料理人たちが厨房から出て、僕らの前で一列に並んで土下座するんだよ!
さらに土下座しながら向けてくる視線は、僕に『あんたの一言で、俺等は助かるのに!』って言ってるんだ。
そんないたたまれない状況で、見ないふりして食事を進める胆力は僕にはありません!
ということで、僕は姉上の『あ~~~~ん』攻撃を、素直に受け止めりことにしたのだ。
まあ、思い切り話がずれたので戻すが、
「若様。俺の元に、こんな情報が来てるんですよ?」
いつも困った顔をしている『姉上の影』が、今日は一段と眉間にシワを寄せて姉上に一枚のメモ用紙を渡した。
正直、嫌な予感を取り越した僕が、脱兎のごとくこの場から逃げ出そうとするのを、
「あらあらアル。まだデザートが来てませんわ」
「そうじゃぞ主殿。確か古代の格言に『親が死んでもデザートは残さず』なんて格言もあるのじゃぞ!」
いつ動いたのか分からない、背後に回った姉上とヒルダが、それぞれ立ち上がろうとする僕を指先一本で止めた。
さすがに二対一では敵わないと負けを認め、渋々見たそのメモ用紙には、
『我がメゾンの町が、魔物の軍団に包囲されています。誰か助けて下さい! 特に最近勇者様と名高いアルサス様! ぜひお助け下さい!』
なんて、ピンポインとなメッセージが書かれていた。
「いやいや、これ、どう考えても罠でしょ?」
正論を吐く僕に、
「あらあら、罠と言うのは食い破るものですわ」
なんて瞳を輝かせる姉上と、
「おろおろ、罠とな! 面白い。どんな罠か吟味し、完膚なきまでに叩きのめすのが至上の快楽よのう!」
同じくキラキラ瞳のヒルダ。
「うん? なんで罠を力ずくで壊すの前提?」
なんて僕の意思は尊重されず、
どうやら午後の授業は受けられそうもなかった。
そしてその日の夕刻。
ヒルダの連続テレポートでたどり着いたのは、海沿いに面した町としては数千人規模と小規模な、メゾンの町が見下ろせる小高い丘だった。
まあ町を見下ろせば、
「ギュウラァァァ!」
「グオォォォォォ!」
「ピギャ! ピギャ!」
少々、いや、かなりお粗末な防護壁と、それに群がるように町の外を埋め尽くす、圧倒的な数の魔物たち。
「いや~。普通これ、一時間持たないでしょ?」
この光景を見て、なぜか今回はやけに素直についてきたミナが、誰でも分かる様な評価をすると、
「うむ。ミナの言うことは最もだ!」
なんてしたり顔で無意味に同調する、今回も呼んでもいないのに付いてきたセツナ。
さらにさらに今回は、
「大丈夫です! 昨日、魔力回復薬五〇本の大台に乗ったので、大丈夫です!」
なにが大丈夫なのかと問い掛けたいマリアーナと、
「あははは! やはりアルサス様たちと一緒だと、勇者だったころよりエキサイティングだね!」
能天気に笑うジオルド。
僕と姉上、ヒルダとミナとセツナ。
それに元勇者だったジオルドと、聖女マリアーナ。
今回はこのメンバーで来ました!
まあ、テンションを上げて紹介しても、ヤルことは同じ。
「あらあら、それでは!」
「おろおろ、そうじゃのう?」
姉上とヒルダが、もの凄く悪い顔で笑い合い。
「まずは町に入り、情報を聞き出すため」
「こいつらを」
「「強行突破ですわ!(じゃの!)」」
そう言い放った姉上とヒルダは、メゾンの町に夕刻に着いたにも関わらず、町周辺を埋め尽くした魔物たちを日の沈む前に殲滅した…………。
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