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前回のクライマックス!
あっという間に終わりましたね(笑)
これぞクライマックスクラシャー・シルヴァーナ!
ニセ王事件の起こった翌日。
いったん国に帰る僕らを見送るのは、
「それではまお…………女神様。この国は我がより良く収めますので!」
シェリーの姿で腰の低い魔王軍四天王の一人、ベルフェゴールと、
「はい、私、いえ、私たち頑張ります!」
どこか吹っ切れたような、爽やかな笑みを浮かべるアンジェリーナと、
「「「「「全てはこの国と、勇者様(が従える女神様)の御心のままに!」」」」」
なんとな~く心の声がダダ漏れの、ベウゼの重鎮たちだった。
別に四天王討伐に失敗したわけでは無い。
でも、この国の事情を詳しく知って、考えが変わったのだ。
だってこの国、
王様がやってた政策よりも、シェリーが王子をそそのかして進めてた政策の方が、民衆の扱いが格段に良くなってんだもの!
それは、姉上がシェリーに止めを刺そうとした時だった。
「ふは! そうか、魔王様はもう……くっ! この国を豊かにし、魔王軍の拠点にしようとした我のもくろみは、無駄に終わったのか……もはやこれまで、さあ、我に止めを!」
僕の説明臭い呟きを聞き、覚悟を決めて瞳を閉じるシェリー。
「その意気は良し! 私とアルのラブロードの糧に、せめて苦しまないよう、あんなことやこんなこと、ネチネチせずに一撃で屠りましょう!」
あれ?
なんか、彼女の壮大な野望に対して、姉上の野望ってちっちゃくないですか?
そんなことを思ってるうちに、姉上が鉄扇を振り上げた。
刹那。
「勇者様! どうか! どうかこの者の助命を! どうか! どうかぁぁぁぁ!」
僕の目前に、土下座をしたまま滑り込む人影。
さっきまで部屋の隅で縮こまっていた、この国の宰相だった。
さらに、
「わ、私からもお願いたします! 例え魔物だとしても、この方は我が国には必要なお方です!」
近衛騎士たちが、土下座する宰相の前で膝を折った。
「え? え? どういうこと?」
そんな彼らの奇行に、僕は姉上を(秘儀:ネコナデ声で)押し止め、事情を聴くことにした。
いわく、
王子が彼女の傀儡になった途端、王族貴族の過剰な贅沢が減り、国民に課せられる税金が減った。
いわく、
シェリーに傀儡にされた王子の指揮の元、不正な重税を民衆に課して利益を貪る貴族が、大規模に粛清された。
いわく、
粛清した貴族から没収した財を、公道の整備や農地の拡大に使い、足りない人手を貧民街の民を国民として認め、使い、貧民街から発生する犯罪が激減し治安を改善させた。
などの改革により、国王が治めてた時より国民が幸せになった。
「私は薄々、彼女の正体に気付いていました。でも、この方が王妃になられれば、税金を上げるばかりで国税を喰い散らかし、ちっとも我らの苦言に耳を貸さない王族のバカども……いえ、ウジムシ……これはウジムシ殿に失礼か。この国の寄生虫と、この国の未来に目を向けない貴族が一掃され、民が笑顔になればと」
「え? だってそれは、魔王軍の拠点になるんだから、食料を充実させようと……それにはまず、国民が豊かにならなくちゃでしょ?」
思いもよらない宰相の言葉に、シェリーが戸惑の声を上げるが、
「我ら近衛騎士団も、薄々偽物だと分かっていました! でも、それでも、王族の命を最優先に、例え王族を守って命が散っても労いの言葉一つ掛けてもらえない我々に、この方は『いつも護衛ありがとうございます。あなたたちのおかげで私は民のために働けるの!』などと、いつも気軽に、優しいお言葉を掛けてくれるのです! そんな心優しいお方を、魔物だからと言う理由だけで殺していい訳がありません!」
近衛騎士隊長っぽい人の言葉に、居並ぶ騎士たちが目に涙を浮かべながらも力強く頷いた。
うん?
これってもしかして……。
思わず首をかしげる僕に、
「違う! それは人間の心を操る術として、魔王様からマニュアルを貰ったからだ! 我はそれを実行しただけだ!」
なぜか頬を真っ赤に染め、言い訳がましく叫ぶシェリーに、
「それでも私が、私たちが忠誠を誓いたいのは、『ああわし、今日は魚の気分だから、料理全部作り直して!』とか、『明日狩りに行きたいから、近衛兵は全員休日返上でわしの護衛な!』とか、ワガママほうだいの王や王子にではなく、『王様。お魚さんは体にいいのですよ!』とか、『王子。近衛兵さんたちは昨日、王子と私の孤児院訪問に付き合ってくれたのです。今日はお休みにし、私たちも城で過ごしましょう!』なんて、我々にまで気を使ってくれるあなたに! あなた様にこそ、私たちの忠誠を捧げたいのです!」
「「「「「我が剣は! 王女《シェリー様》のために!」」」」
騎士団長の言葉と共に、シェリーに向かって膝を折り、剣を捧げ、忠誠を誓う近衛騎士たち。
さらに、
「王女よ! いや、我が王よ!」
いつの間にか集まって来た、良識ありそうな貴族たち(個人の見解です)が膝を折り、忠誠を捧げる。
うん。
これはもう、僕たちが悪役になってんじゃね?
そんな空気の中、さすがに姉上も…………。
「さあアル! 四天王! 一匹目、撃破ですわ!」
うん。
姉上は少しも手心を加える様子もなく、己の欲望を完遂しようとキラキラと瞳を輝かせ鉄扇に魔力を込めていた。
「いやいや、さすがにそれはマズイでしょ?」
この場の雰囲気に流され反射的に口にしてしまったが、僕にだって思う所はある。
確かにシェリーの政策は、良い物なのだろう。
でも、それによって不利益を被り、死にそうになった善良な人々《アンジェリーナの家族》のような者もいるのだ。
彼女の行いは、国的には良くても、被害者は、処刑未遂? という被害は受けてる訳で…………。
さすがにそれは不味いのでは?
そう思う僕が、無言のままのアンジェリーナに視線を向けると、
「確かにあなたのしてきた政策は、私もすばらしいと思いました。ですが、私の家族を殺そうとしたことは許せません!」
凛とした立ち姿で言い放つアンジェリーナ。
それに対し、
「それに関しては本当にごめんなさい。でも、言い訳をさせてもらえば、あなたたちを本当に殺すつもりは無かったの。あの後、勇者たちが乱入してこなければ、すぐに『可哀そうだから許してあげて!』って、王子に懇願して、優しい男爵令嬢として、さらに人間たちの信頼を上げようと思っただけなの!」
あっさりと、素直に頭を下げるシェリー。
まあ、確かに、
王子と男爵令嬢。
身分差を考えれば、あざといと思えるほどの人気取りをするには理にかなってる。
さらに、
「それに、あなたが婚約破棄されて、処刑されそうになった所を助けたら、是非、私付の女官になってもらいたかったの! もちろんあなたの意思は尊重するけど、でもこれを、この改革を、あなたと一緒にしてみたかったの!」
どこから出したのか?
シェリーが手にするのは、『この国を、より良い国にする一〇の条件』なんて表紙のある紙の束。
「え? そ、それは……」
それに反応したのは、アンジェリーナだった。
「それは私が、王妃になってから進めようとした、この国の改革案じゃないですか! なぜあなたがそれを?」
戸惑の表情を浮かべるアンジェリーナに、シェリーは微笑を浮かべ、
「はい。あなたの侍女を魅了して手に入れました。そして驚愕しました。あなたが、ここまでのこの国のことを考えていることに!」
紙の束を持たない反対の手を、ギュッと握りしめ、アンジェリーナを強い眼差しで見つめるシェリー。
「え? こんなこんな叶いそうもない夢物語を?」
「何を言ってるの! 確かにこれは理想! でも、この改革が出来れば国は飛躍的に豊かになるわ! それを夢物語で終わらせるの!? これは、民衆のために叶える夢なのよ!」
「シェリー様……」
「シェリーと呼んでアンジェリーナ様! いえ、アンジュ!」
いつの間にやら舞台の女優のようになった二人は、大仰に手を握り合い感涙の涙を流し抱き合う。
「ええ? もう僕たちいらなくない? このまま帰りたいんですけど?」
そう本音を吐露した僕は、全然悪くないと思う。
そんなこんなで、納得いかなそうな姉上をなだめすかし、僕はこの国をこのまま放置することに決めたのだが、
「荒神様の怒りを収めた、あなた様こそ真の勇者です!」
とか、
「これもあなた様のおかげです。これよりベウゼ王国は、あなた様個人に忠誠……とまではいきませんが、この国の王族(主に王と王子)よりも|忠誠(便宜をはかることを)誓います!」
なぜか僕はこの国を、(魔王軍からではなく、腐敗した貴族から解放した)英雄として、ベウゼの国を後にしたのだった…………。
追記。
「姉上? この国を去る時、この国の影の王と何話し込んでたんですか?それに何か貰ってたみたいですが?」
上機嫌の姉上に、なんか物凄く不安になる僕が口を開くと、
「あらあら? 別に大したことは話していませんわ、そう、それほど大したことは……」
「へえ。そうなんですか?」
そんな姉上の言葉を聞き流してしまったことを、数年後、僕はとても後悔することになった。
だって、この国では、
『愛し合っていれば、人間と魔物とかの種族を越えても、同性同士でも、例え血縁関係であっても、特に姉弟だったら! 無条件で婚姻を認める!』
なんて、どう考えても頭の悪そうな法律が、なんでかすんなり施行されてしまったのだから…………。
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