表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/144

よろしくお願いします!

 そんな騒ぎから一週間がたち、僕たちは今、アンジェリーナと共にベウゼの王城にいた。

 なぜ? とか、

 展開はやすぎない? とかいうなかれ。


 詳細は端折るがあの後僕たちは、彼女(アンジェリーナ)の家族を安全な場所に隠し、いろんな証拠と切り札をかき集めたのだ。


 もちろん、シュタイン王国国王を脅……説得して、特使としてベウゼ王に謁見できるようにしてもらっている。

 代わりに『少しでも王族としての人気が回復するように、我が息子(バカ王子)をよろしく!』っと、念を押されたのだが…………。

 大丈夫!


「ブツブツ…………はいお姉様! 私はあなたの下僕です! それと他国から嫁いでいらっしゃったお姉様! 大丈夫です! 私はあなたの言葉に従順です!」


 宙に応答する、危ない空気のミナと、


「え? え? お二人とも、何をやったんですか!? この娘(ミナ)の心。あともうちょっとってところで壊れかけてるんですが?」


 それを心配しながらも魔力回復薬を飲み続けるマリアーナ。


 二人がこうなった元凶の、|姉上とヒルダ《セツナ以上に厄介な二人》がいるのだから!


 まあ、そんなこんなでベウゼ王と謁見した。

 もちろん、当事者である王子と男爵令嬢のシェリーもいる。


『さあ、これからかき集めた証拠を元に、お前の化けの皮を剥いでやる!』


 そう心の中でほくそ笑んだ僕の耳朶に、


「あらあらあなた? それでも人間に偽装したつもりですの? 魔物臭がプンプンしますわよ?」


 姉上が鋼鉄製の扇で口元を隠し、眉を潜め、

 さらに、


「おろおろ、それに擬態の魔法も稚拙じゃのう? わっちの低級解呪(ディスペル)の魔法でも解けそうじゃが?」


 ヒルダが、やれやれという様に肩をすくめた。

 それでも、


「え? この方たち、何を言ってるの? 訳が分からない。怖いわライデン様!」


 額に大量の汗を滲ませ……いや、滝のようにダラダラと流し、さらに引きつった笑みを浮かべながらも、王子の影に隠れるシェリー。


 その態度に、怪しいと感じていたのか?

 側にいる宰相や近衛騎士の視線もどこか猜疑的。

 逆にソワソワしすぎで、見方によっては心配しているようにも見えるほどだ。


 僕らはいろんな情報を元に、ほぼ一〇〇パーこいつ(シェリー)が四天王の一人だと分かっていた。

 それにもかかわらず、

 

「そんなに私を疑うのなら、『真実の鏡』を持って来ればいいのよ! あ! でも、王家の秘宝の『真実の鏡』は………………」


 それでも本性を隠し、わざとらしくこの国の国宝の『真実の鏡』を出せと言い出すシェリーに、


「あらあら? これって国宝でしたの? 城下町の商人がたたき売りしてましたのよ?」


 知ってるくせに!

 この鏡が国宝だと知ってるくせに!

 とても良い笑顔で、見せびらかすような姉上の右手には、『真実の鏡』が握られていた!

 僕らは、入念に隠されていた『真実の鏡』(手鏡ぐらいの大きさ)を見つけ出していたのだ。


 まあ実際は、


 アンジェリーナとその父親の証言を元に、この国の隅から隅まで駆け巡り、

 やっとこさっとこスラムの盗品市にあったのを、姉上の魅惑の笑み(殺気と言う名の笑み)で譲り受けた(脅し取った)ものなのだが…………。


 早々と切り札を切った僕らに対し、男爵令嬢に化けた四天王は、


「え? え?、それ、ほんとに本物? いやいや、それは無い! それは無いって!」


 王子の背から身を乗り出すほど動揺して、不自然に視線が宙を舞う。

 そんな彼女に、


「あらあれ? それでは、こうすれば分かるのではないでしょうか?」


 笑みを浮かべた姉上が、手鏡(真実の鏡)を持ったまま床を蹴った。

 刹那。


 バキュ!


「どへひぇりゃ!?」


 バリィィィィィィィィィン!

 ギュルリンッ!


「ぐろらあぁぁぁぁぁ…………………………」


 グシャリッ!


 小気味いい音と、何かが砕ける鈍い音の、

 とても不快なハーモニーが王宮に響き、


 この国の国宝である『真実の鏡』でシバかれた、ニセの男爵令嬢は(四天王)、己の体を竜巻のように高速で回転させながら壁に激突した。

 


「ぐっ……き、きさまぁぁぁぁ!」


 そして、ひび割れた壁から這い出る、元男爵令嬢の姿を見て、誰もが短い悲鳴を上げ、


「あらあら? やはりあなたが四天王の一人でしたのね?」


 姉上だけが、物凄く良い笑顔で微笑んだのだった!


「………………うん。姉上? それって(真実の鏡)、そう言う使い方じゃないと思うですけど?」


 あっけにとられ、手遅れ気味なツッコミを入れる僕に、


「あらあらそうですの? でも、当初の目的は達成しましたわ!」


 砕けた手鏡(国宝)の柄の部分だけを持ち、それでも笑みを崩さない姉上に僕は、


 ええ! 少ない情報(ヒント)で、この国中を駆け巡り、口論(主にヒルダが原因)や、殴り合いの喧嘩に発展しそうなほどの仲たがい(主に姉上が原因)を越え、やっとのことで見つけた国宝(真実の鏡)が、鈍器扱い!


 そんな魂の叫び(ツッコミ)は外交上、心の奥底にしまい込み、


『え? この(国宝)の使い方って、これで間違ってませんよね?』


 呆然とするこの国の重鎮に無言の笑みで、『黙秘しろ!』っと促す。

 もちろん、

 |この国にこれ以上の被害を出さ《外交問題にさせ》ないためだ。


 とにもかくにも王族を含めたこの国の重鎮は、姉上の行動にいまだ呆然と立ち尽くしていた。

 そんな何とも言い難い空気の中。

 姉上の一撃で擬態の魔法が解け、深刻なダメージを受けた四天王は、


「ぐがっ! いだだだだ! そ、それ、使い方違うから!」


 そうツッコミを入れた。


 ここでツッコミを入れるとか、さすが四天王と呼ばれるほどの強さだ!

 さらに、


「ふぁふぁふぁ! 擬態の魔法は(ほぼ強制的に)解かれたが、我の力が擬態だけだと思うなよ! 貴様ら矮小な人間など、我の強力で…………え?」


 『真実の鏡』で吹き飛ばされた時点で分かって欲しかった。


「あらあら? その剛腕で、私をどうしますの?」


 瞬時に傷を回復させ、本来の姿に戻ろうとした元シェリーの目前に、いつの間にか扇(鋼鉄製)を手に持つ姉上。

 なので、僕のすることはただ一つ。


「ヒルダは姉上とニセ令嬢を中心に防御魔法を! マリアーナはそれに被せるように結界を! 後の奴らは、力の限り逃げろ!」


 僕の発した言葉なのか?

 自身に備わってる危機管理能力なのか?

 我先にと逃げ出すこの国の重鎮たち。


 そして数秒後。


「ぐはっ! もはやこれまでか……我はこれで潰えるだろう。だが、これで終わったと思うなよ? 我は魔王軍四天王の中でも最弱! ………………貴様らの進む道はこれより先、修羅の道となろう! ぐふっ!」


 キメ台詞を残し、床に零れ落ちるニセ男爵令嬢。

 本来ならとっても重要なシーンなのだろうけど、


「あ~、うん。ゴメン! もうすでに君より強い人(魔王)倒しちゃってるから!」


 満足げな四天王(死んでない)に、僕は視線を逸らして呟くのだった…………。

最後までお読みいただきありがとうございます!

そして、ブクマ、感想もありがとうございます!

極暑の日が続きますが、みなさん体調を崩さないよう、お酒もほどほどにしておきましょう!

(お前が言うな!)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ