閑話:発熱(前編)
片頭痛に花粉(イネ科)に悩まされながらも、なんとか飲み続け・・・・・・いや、書き続け、なんとか書いた閑話です。
魔王退治が終わり。
お祭りも終わった次の日。
「ううぅぅぅぅ………………だるい…………」
僕は実家にある自室で唸っていた。
高熱が出て、体の節々が痛い。
喉もイガイガするし、熱のせいでまったく頭が回らない。
どうやら魔王退治でかなり無理したらしい。
いやいや、無理ならいつもの姉上や婚約者との対応や、その他いろいろな人への対応が僕の負担(主に精神が!)になっているのだが?
「…………ごほごほっ! どうやら日頃の疲れが出たのか?」
とにかく、今日一日寝てれば元に戻るだろう。
そう思い、僕はゆっくりと目蓋を閉じた………………。
刹那!
どごおぉぉぉぉぉぉぉん!
頑丈な僕の部屋の扉(主に姉上が叩き壊してしまうため)をギリギリ壊さず蹴り開いたのは、
「アル! アルは無事ですの!」
やはり、僕の姉上だった……。
「アル! アル! アルゥゥゥゥゥ!」
うるさい。
いつものようにツッコミを入れたいが、声も上手く出せないし出す体力も惜しい。
しかも、ツッコミどころはこの騒ぎだけではない。
扉の前で、エプロン姿で、ミトンで鍋を持つ姉上。
まあ、そこまでは大丈夫。
でも、
「あ……姉上? なんでエプロンしか身に付けて無いのですか?」
そう。
やや縦長のエプロンから覗く四肢は、ドレスも布の一枚さえもまとわぬ、姉上の手足だったのだ!
姉上。
病人には安静を。
食べ物は消化にいいモノを!
そうお医者様に言われなかったの?
声が出しづらい状況なので、出来る限り姉上に目で訴えるが、
「あらあら? 大丈夫ですわ! お医者様が言うには、『病人には消化の良い栄養のある物』が良いと言われてますわ! 」
消化に良い物はまだいい。
でも、
なんで栄養のあるモノ=元気になるモノになるの?
そりゃ、プロポーション抜群な姉上の、そんな姿を見れば、万人(僕を除いて!)は、一部元気になるだろうけど!
それは僕にしちゃいけないことだと思うんだけど!
茹った頭で、必死にツッコミを心の中で入れるが、
「でも、残念です! お父様の執事に止められ、裸エプロンでは無く、水着エプロンなのです! これでは元気半減ですわよね?」
変な期待……いやいや、変な誤解の元を潰してくれてありがとうお父様の執事!
「で! 何しに来たんです姉上?」
すでに物事の善悪、秩序とか理性が崩れかかった頭で、ややぶっきら棒に訪問の理由を問う。
熱があるとはいえ、姉上には少々礼を欠いたかと思う一面。
まあ、姉上だから。
なんて思ってもいたのだが、
「あらあら? アルが病気だと言うので、私が特製のおかゆを作ってきましたの!」
なんと! 姉上は普通にお見舞いに来たのだった!
『驚くとこそこ!』
そう言うなかれ、だって姉上だよ?
普通にお見舞いなんて来るわけないじゃん!
僕が元気になるように! って、ユニコーンの角とかドラゴンの肝とか持ってきそうじゃん!
ん? もしや!
僕は焦点の合わせづらい視線を、無理やり姉上の持つ土鍋に合わせた。
「あの……姉上? その鍋の中身は…………」
熱が上がりきったのに、まだ寒気がする体を鼓舞し姉上に問う。
その鍋の中に色々と不味い物が入っているのでは?
喉がイガイガしすぎて、そこまで声は出ない。
そんな僕を余所に、姉上はとても嬉しそうに、
「はい! 私が作った特製! 元気が出て出て! 思わず作った者に求婚してしまわざろうえない! それよりなにより、我慢が出来ず! 婚前行為を!…………ただのおかゆですわ!」
「最後のなに? 物凄く恐ろしいこと言ったよね?」
「……………………気のせいですわ」
「なんでそこで目を逸らすの? 物凄く珍しく、姉上の目が泳いでんだけど!」
「さ……さあアル。召し上がれ!」
体が重く、それなのに無理してツッコんだ僕を無視し、姉上が土鍋の蓋を開ける。
物凄くアウトだ!
途端に部屋に広がる、出汁が効いてる美味しそうな湯気。
高熱で食欲のない僕でも、物凄く食欲をそそるのだが…………。
なんでそう思う?
それは、今まで姉上と過ごしてきた僕の第六感が、これは危険だと警告を発しているのだ!
「姉上? これは……」
さすがに拒否しようと口を開いたその時!
「「「ちょっとまったぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」」
壊れかけの扉から雪崩れ込む、複数の人影。
僕の部屋に雪崩れ込んできたのは、見知った顔。
「それの毒見。わっちがするのじゃ!」
「それの毒見。私がします!」
「あははは! ボクもそれ食べてみたいな!」
いやいや、こいつら(姉上を含む)僕が病人ってこと知っててやってる?
そう。
僕の部屋に乱入してきたのは、
ヒルデ、ミナ、メイリンのかしましい三人だった…………。
多分。
明日には後編をお届けできると思います。
最後まで、応援よろしくお願いします!




