閑話:姉上のお見合い?
続きを書こうとして飲んでたら(執筆しろ!)なぜか一か月たっていました!
いやいや、まじめにコツコツと飲んで・・・・・・書いているんです!
とりあえず、閑話を入れてお茶を濁します!
雲一つない、晴天の空。
ランチや軽食が食べられる、花々が咲き小鳥がさえずる学園の中庭。
絶妙な間隔で配置されてるテーブルは、隣の話し声なんて気せず食事が出来るという優雅な空間であった。
そんな上品な場所なのに、
なぜか僕は、僕たちは、草むらに隠れていた。
なぜなら、
「いや~。シルヴァーナ様と二人きりでランチがいただけるなんて、私はなんて果報者なんでしょうか!!」
優雅な中庭に響く、なんか、物凄くご機嫌な声と、
「(コクコク)」
テーブルいっぱいに並べられた料理を、口いっぱいに頬張った姉上が頷く。
うん、姉上。
その行動、淑女的にアウトです!
「え? あれアウトなの? 私、しょっちゅう……たまにしてしまいますのだけれども?」
訳の分からない事を言い出すのは、僕の右隣に隠れている男爵令嬢のミナだ。
そして、
「おろおろ、義姉上もしょうがないのじゃ。そこはハムでは無く、チーズを先に口に入れた方が、美味しいのじゃ!」
当然のように左にいる僕の婚約者であるヒルデが、必要以上に口に入れる順番を気にしていた。
なんとな~く分かるかも知れないが、これは姉上の見合いだ。
なので、さっきから感嘆の声を上げてる青年も、それなりの身分である。
確か、侯爵か伯爵か……。
名前は……。
まあ。そんなことはどうでもいい。
姉上の態度を見る限り、脈は無さそうだからね。
いやいや、僕は姉上が心配とか、もしかして義兄になるの! とかが心配でここにいるのではない。
絶対ない。
それよりなにより、姉上が騒ぎを起こさないかが心配なだけだ。
だから僕は、
「マリアーナ。準備は万端?」
草むらのさらに奥にいる(ヒルデとミナに居場所を取られたとも言う)彼女に、視線を向ける。
「はい! もう、お腹たぽたぽになるまで、魔力回復薬は飲みました!」
「うん? 確かに魔力回復薬は渡したけど……。まだ魔力使ってないよね? なんで飲んだの? しかもお腹タポタポになるまで!」
何かあった時のために、治癒魔法に特化した聖女である彼女に同行を求めたのだが、
「はい! あれから私、気付いちゃったんです! お腹タポタポになって苦しいのに、我慢に我慢を重ねてから、やっと放出する喜びを! これって放尿プレ……」
「うん。マリアーナはそのまま! 口を開かず待機してようか!」
にこやかに、でも間髪入れずに彼女の言葉を遮る。
誰だよ彼女をこんな癖のある奴にして、こんな言葉教えたのは!
彼女がそんな言葉を知ってるって分かったら、僕がいろんなとこに頭を下げなくちゃならないじゃないか!
すでに新しい扉を開きまくってる彼女に、後で『言ってはいけない言葉全集』を送ることにし、僕は当初の目的である姉上のお見合いに視線を戻した。
確か姉上と見合いをしているヒルアンデス家の子息のなんとか君は、眉目秀麗、品行方正で努力家と釣書に書いてあった好青年なのだが…………。
「あの……聞き慣れているかもしれませんが、シルヴァーナ様のご趣味は?」
そんな当たり障りのない会話から始める彼に、食事を終えた姉上は、
「はい! アルです!」
会話そのものをぶった切る様な言葉を返した!
でも、さすが姉上に婚約を持ちかけてきた家の息子、
「はあ? ある……ですか? では、好きな食べ物は?」
姉上の答えにツッコミを入れず敢えてスルー。
次なる質問をしてきた!
だが、相手が悪かった。
「はい! アルです!」
食後の紅茶を口にした姉上は微塵も揺るがず、優雅に、しかも真っ直ぐな視線を彼に向けて答えた。
普通、姉上に結婚を申し込む輩は、この回答でだいたい激怒するか心を折られるのだが、
「では、好きな男性のタイプは?」
どうやら彼もお家の事情により、簡単には引けないようだ。
まあ、結果は見えているのだが……。
憐憫な視線を彼に向ける間もなく、
「はい! アルですわ!」
唇に細い指を当て、微笑する姉上がいた。
うん。
この仕草ってある意味反則だよね!
そう思いながらも、問いに対する回答を聞けば、さすがにこれは彼も額に青筋を立てるレベルだと思うのだが、
「ぐっ! ぐぬぬぬぬぬ! じゃあ! 好きな食べ物は?」
「はい! アルの好きな物ですわ!」
彼の心は折れず、意固地になって質問を繰り出した。
のだが、
「それじゃ、好きな色は?」
「はい! アルの瞳の黒ですわ、それとアルの髪の色である銀色もです!」
「好きな場所は?」
「アルの好きな場所ですわ!」
「好きな劇は?」
「アルの好きな劇ですわ!」
「好きな色は……いや、これは言った。もう! アル以外の答えはないのかよ! いっそのこと、アルと結婚しちまえよ!」
会話の成り立たない姉上の微笑に、彼が投げやりな言葉を放つのだが、
その瞬間。
「…………はい! 私は私の幸せのために、これまで以上に邁進していきますので、これにて失礼いたします」
席を立ち、ぱあぁぁぁっと幸せな笑顔の姉上に魂を抜かれ、姉上の後ろ姿を膝からくずおれる彼が見送った。
その姿に僕は、
「ふう。良かった。彼が僕の悪口を言うような人じゃなくて…………。じゃなきゃマリアーナの治癒でも間に合わなかったかもね? さっ、それじゃ僕らも撤退しよう!」
ホッと胸をなでおろし、爽やかに言い放つ僕に、
「おろおろ、主様も大外……じゃのう」
「え? え? もうおしまい? 今日はあの最恐最悪の魔女の見合いを、ぶち壊すってことじゃ無かったの?」
「私は回復薬飲みすぎですけど……何事もなく良かったですね! あ! でも、この後の快感が……」
背後でなんか聞こえたが、僕は機嫌よくそれをスルーし、午後の授業へと向かうのだった。
酔った勢いで書いてたこの作品も、気が付けばもう10万文字。
今決めた自分ルールで、あと一話閑話を入れこの作品は完結にしようと思います。
だが、続きは書いているので、もしこの作品を楽しみにしているなんて奇特な読者様は、
『悪役令嬢? 婚約破棄? 何それ美味しいの? 私には弟の愛さえあればいいのです! にっ!』を楽しみにしていてください。
多分、きっと、月末ぐらいに投稿再開できたらいいな・・・・・・・・・・・・。
その時は、応援よろしくお願いします!




