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よろしくお願いします!

 そもそも二日前、魔王討伐に集まったのは、

 僕と姉上とヒルデはともかく、


「やあ、やはり元勇者として、見届ける義務があると思うんだ!」


 爽やかに前髪を掻き上げるジオルドと、


「あの……私、聖女ですけど、このメンバーなら、やっぱり行かなくても…………いえ! 行きます! だから、そんな極上に冷たい笑みで睨まないで下さい!」


 微笑んでるだけの姉上とヒルデに、なぜか土下座する聖女マリアーナ。

 まあ、ここまではしょうがないと思うのだが?


「魔王討伐に同行して見事魔王を討ちとれば! 俺は復権できる…………………はず! その時はミナと……」


「頑張ってセツナ様! 私は王都であなたのご無事を……え? 私も行くの!? いやいや、私いらなくない? だって……え? 活躍次第じゃ、首輪を外してくれる? 行く! 『大陸の歌姫』と呼ばれる私は、魔王を倒すために行くわ!」


 なんて盛り上がってる二人と、


「おい、魔王って、はぁはぁ。凄いんだよな? その配下も……鎧の準備を!」


 なんて、色んな意味で痛い奴は、当然無視し、


「姉上? どうしてこのメンバー?」


 いろんな意味を込めて姉上に問う僕に、


「あらあら? 『仲間と共に旅をして、魔王を絶つ!』冒険談の基本ですわ! それに……盾って必要ですわよね?」


「……………………」


 最後の方で呟いた姉上の声を、僕は無言でスルーした。


 そんな王城の城門に集まった僕らの耳朶に、


「はあぁぁぁぁぁぁぁ!」


 姉上の裂帛の声が響き、

 多分、魔王城の方角だと思える場所に向い、剣戟が走った。


 うん。

 見事にいろんなものを抉った大地に、


「あらあら、ヒルデさん?」

「うむ。任せるのじゃ! 氷の行軍(アイスマーチ)!」


 彼女の力ある言葉で、

 人、っと言うか、馬車でも通れそうな氷の、真っ直ぐな道が出来上がる。


 いつのまにかそこのある、全員が乗れるだけの広さの鋼鉄製のソリに乗り込む僕ら。


 しかもそのソリの後方には、火球の魔法を含めた筒が幾つもついていた。


「さあ『ここで歌わないと、首輪を外すどころか……まあ、いろいろ大変ですわよ?』様!」


「はい! 歌います! 魔物ども! 私の歌を聞け! ぼっ、ぼえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 風の魔法で氷の道にしか響かない、ミナの歌声。


「おろおろ、それでは、魔王城に向かって出発なのじゃ!」


 ヒルデの掛け声とともに、ソリに括り付けてあった筒賀火を噴き、


 グオォォォォォン!


 爆音と共に氷の道を突き進んだ。


 途中、氷の道に殺到した魔物たちは、やる気に満ちた表情で(殺気のこもった顔で)、氷の道の端に立ちすくんで、僕らが通り過ぎるのを見送っていた。

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