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よろしくお願いします!

あと、後書きちょっと長いです。

「皆さん! おはようございます!」


 お祭り(魔物狩り)から二週間がたった。


 やっと平時を取り戻した教室に、自棄を匂わせるようなテンションのミル先生の声。


 ちなみに僕は勇者になった(戻った?)が、魔王が暴れてるとかの噂が無いので旅立たないで済んでいる。

 まあ、厄介な魔物が出たら姉上とヒルデを連れ、行かなくてはならないのだろうが……。

 そんな僕の耳朶に、ミル先生がやけっぱちの声が響いた。


「さあ、恒例ですがこの教室に、転校生が来ました!」


「え? 転校生って、恒例なの? いやいや、そんなこと無いって!」


 そんな僕のツッコミぐらいじゃ、ミル先生のテンションは止まらない。


「しかも今回は、二人です!」


 もはや、このクラス、呪いとかなんじゃ…………先生?

 そこで僕を見るのは、ぜひ止めて頂きたい!


「さあ、それではご紹介します! 元勇者のジオルド様と、まだ聖女のマリアーナ様です!」


「どうも、元勇者のジオルドです!」

「マリアーナです…………あの、先生? まだ聖女って紹介なんですか? まだって!」


「ああ、口が滑り……いえ、噛んだだけです!」

「噛んでまだとか言います? 心の声ダダ漏れなんですけど!」


 そんな彼女の声に、だが、この学園に来て半年の、大人の事情や理不尽な暴力にさらされたミル先生は、全く意に介さない。


「……さぁ、それではお二人とも、空いてる席にお座りください」


 マリアーナのツッコミを完全に無視し、にこやかに、でも、無言の圧力で席へと誘導する。


「ぐっ……私、私って……」

「まあまあ、愚痴は後で聞くから」


 目の端に涙を浮かべるマリアーナの肩をポンポンと叩き、にこやかに席へと促すジオルド。

 

 それをジッと見つめていた僕を、目の端で捕え、


「何か聞きたそうですねアルサス様。でも、注目を集めてる今は不味いので、お話は後程……」


 僕の横を通り過ぎる一瞬に、彼はそう呟いた。

 そして、

 

 午前の授業が終わり、


「アルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! お昼ご一緒しませんこと!」


 右側から巻き舌気味に、さらに上目使いで僕を見上げる姉上と、


「おろろろぉぉぉぉぉぉ! 何を言っておるのじゃ? 主殿はわっちと昼食を食べるのじゃ! のう、そうであろ主殿!」


 左から姉上の巻き舌に張り合おうとするヒルデの声。


 まあ、いつもならここで一悶着あるのだが、

 今日の僕には予定があった。


「はい。いつものようにお二人と食べたいのですが、ちょっと所用がありまして……良かったら、先に食堂の席を取っておいてもらえますか?」


 そんな僕の言葉に、


「あらあら、それでは、どちが先に、良い席を取れるか、競争ですわ!」

「おろおろ、その勝負。乗ったのじゃ!」


 パタパタ……。

 なんて可愛らしい音なんてせず、


 ギュ、ギュウゥゥゥゥゥゥン!


 なんて音が、彼女らの背後で聞こえた。



「……ま、まあ、とにかく、確かめたいことがあるんだ。わざと勇者を辞めた、元勇者君(ジオルド)


 姉上たちを見送りながら廊下で待っていたジオルドに向かって、嫌味成分をたあんと含んだ言葉をジオルドにぶつけた。


「はい? それはどういう意味ですか? 現勇者アルサス様!」


 きっと彼が犬なら、しっぽ、ちぎれんばかりに振っているように見える従順さだが、

 僕は騙されない。


「あの後色々と調べたんだけど、デイジとエマリア。あの二人『勇者の仲間!』だからって、行く先々のいろんな国の、いろんな村や町で、いろんな騒ぎを起こしてたんだってね?」

 

 さっさと食堂に行かないと、姉上とヒルデが迎えに来そうなので、歩きながら単刀直入に切り出した。

 そんな僕に、


「はい。俺はそのつど窘めたのですが、彼女等は聞かなくて……まあ、俺の勇者の資質とか威厳が足りなかったんでしょう」


 悪びれもせず、ニコリッと笑うジオルド。


 それは(ダウト)だ。

 手合せした今ならわかる。

 ジオルド()の腕前は、二人よりも頭二個も三個も上のはず。

 姉上と対戦して、二分は持つと言えば分かりやすいだろうか?


 それほどの実力を持つ彼なら、力ずくで言うことを聞かせることはできたはずだ。


「もしかして、今回のお祭りに参加したのって……」


 にこやかなジオルドに、僕はあえて抽象的な言葉で問う。


 確かデイジは、過去に何度も勇者と共に魔王を倒したとされる他国の上級貴族出身。

 同じくエマリアは、勇者と行動を共にしたハイエルフ族の末裔。


 侯爵家の僕ならともかく、ぽっと出の、しかも平民の(ジオルド)では、嫌でも行動を共にしなければいけないしがらみだったはず。


「だから、この状況を利用して、二人を退場(ドロップアウト)させた……のか?」


 問い掛けているが、ほぼ正解だと確信していた。

 それなのに、


「え? いやだなぁ。俺はちゃんと制止したじゃないですか? それを聞かずにあの二人、シルヴァーナ様とヒルデガルド様に戦い(喧嘩)を挑んで……。俺の責任じゃありませんよ?」


 パタパタと手を振るジオルド。


 まあそうだろう。

 伝手も、金も、権力もある二人が、姉やヒルデの噂を少しでも聞いていれば、あんな結末(再起不能)にはならなかったはずだ。

 誰かが故意に、情報を操作しなければ…………。


「まぁ、本当は彼女たちのことには、それほど関心は無いんだ。正直、どうでも良い。でも、もう一つの疑問のほうが無視できないんだけど?」

「え? なんですかそれ?」


 白々しく首をひねるジオルド。

 どうせ本心は隠すのだろうけど、忠告の意味でも言わなけりゃならない。

 ため息混じりに頭を掻く僕は、


「なんであのタイミングで僕と勝負した? それに、なんで勇者であることを放棄して、その座を僕に譲った?」


 彼の行動で、唯一これが、僕の理解を越えていたのだ。


 傲慢でやりすぎな二人の仲間(デイジとエマリア)の排除はともかく、各国からいろんな援助を受けられる勇者であることを自ら放棄するのは、僕の手元にある情報だけでは理解できなかった。


 そんな疑問の視線を向ける僕に、


「やだなあ、それはもう、あの場所で言ったじゃないですか。『俺では無く、あなた様が本物の勇者』だって」


 どんな些細な事でも見逃すまいと彼の表情を見る僕に、ジオルドは一点の曇りもない笑顔でそう答えた。


「まったく……。分かった。これからもよろしく、同級生君」


 フッと漏らした僕の言葉(イヤミ)に、


「はい! よろしくお願いします。アルサス様(勇者様)!」


 自然すぎて、逆に不自然な笑みを浮かべるジオルドと供に、

 僕はにこやかなと言う仮面を付け、姉上とヒルデの待つ、食堂へと歩き出した…………。

最後までお読みいただきありがとうございます!


最後は軽くまとめようとしたのですが・・・・・・。

あれ?

なんでこんな意味深な終わり方!?

さあ!

続きを見たい人は、ブクマや評価を!

なんて半分冗談です(半分は本気!)

まあ、続きを書くにしても新作かくにしても、

飲みながら考えまあぁぁぁす!

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