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よろしくお願いします!
『さあ、今回はなんか、色々予定外のことが起こった魔物狩りですが……今! 集計が終わりました!』
津波が起きた数日後。
魔物狩りの最終日に、僕たちは結果発表を聞きに広場に来ていた。
僕の体も、連日のマリアーナの治癒のおかげ(治療の度に彼女が半泣きだったのは、この際見なかったことにしておこう)で、全快に近く回復したのだが……。
「あらあらアル。疲れているのではなくて?」
右腕を姉上に拘束され、
「おろお主殿、そこに段差(指一本分)があるのじゃ、気を付けるのじゃ!」
左腕をヒルデに拘束された僕がいた。
うん。
この数日。
なぜか、魔力回復薬を無理やり飲まされる不憫なマリアーナを横目で見ながら、姉上やヒルデの手厚い看病を受けた。
手厚すぎて、
僕にアーンを、どっちっがするか?
とかで、王国一デカイ病院を全壊した。
正直、やりすぎだと思うのだが…………。
『それでは、発表しま…………え? ええ! なんで? 私頑張ったのに! それなのに一番盛り上がるこの……へ! 特別報酬に有休! …………はい、突然ですが、今回は特別! 発表はシュタイン王国国王カノン・フォン・ローゼンリッター様から発表されます!』
相変わらず本音ダダ漏れの僕らの担任。
でも、
ここまできといて、いきなり司会の交代?
嫌な予感しかしない。
そんな僕の思惑を余所に、
『それではシュタイン王国国王、カノン・フォン・ローゼンリッターが告げる! 今回の魔物狩り優勝者は…………学園代表アルサス率いる「お姉様大好き! 好き過ぎて結婚して!」チーム!』
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
テンションマックスの城下の人々。
でも、僕の心は、マックスに冷めていった。
「今まで知らなかったけど、なにそのチーム名?」
魔物狩りとか勇者とかで頭がいっぱいだった僕は、この時初めて自分のチーム名を知ったのだった!
呆然とする僕に視線を合わせ、壇上の王様がさらにたたみかけた。
『総合得点は、二位の勇者チームの三千ポイントを大きく引き離し、一億飛んで四千五百ポイントだあ!』
ノリノリの王様に、
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
城下町の人々、いや、さらに近隣の村人も歓喜の声を上げていた。
うん?
だが疑問が残る。
例え津波から村を守ったとしても、これは多すぎだ。
もしかして、これは……。
無意識に姉上とヒルデに、交互に視線を向けると、
「……あらあら、その……アルが寝ている間、暇だったので……つい……」
「おろおろ、そうなのじゃ! 思ったより勇者の仲間が手応え無かったのでのう。つい……」
「あらあら、そうですわね。あんなぐらいでは、この悶々とした体が、疼いてしかなかったのですわ!」
「おろおろ、そうじゃとも! 禁呪も打てぬような相手じゃ、消化不良も良いとこじゃて!」
うん。
二人の中では、勇者の仲間は雑魚扱いだった。
それならもう、二人で魔王でも何でも退治しに行けばいいじゃない!
自暴自棄な僕の耳朶に、王様直々の発表が続く。
のだが、
『それでは最後に、勇者ジオルドから一言』
僕が声を上げる前に話し出す王に、思わず不穏な気配を感じた。
『ご紹介に預かりました、元勇者のジオルドです!』
んん? 元? 元ゆうしゃぁぁぁぁぁ?
頬が引きつり、背中からは気持ち悪い脂汗が滝のように流れる。
「姉上、ヒルダ。もう帰ろ! 帰って明日の学園の準備を……」
すぐに帰ろうと背を向けたい僕に、
「あらあら、良いじゃありませんか。コレを聞いた後でも……」
ギュッと姉上が右腕の拘束を強め、
「おろおろ、良いではないか。例え主殿が疲れたとしても、わっちっが主殿を……ぐふ!」
左腕では、口元を拭うヒルデが拘束していた。
『これはもしや…………』
どうやら僕が眠ってる間に、回避不能な罠が張り巡らされてたようだ。
なんてことを考えてた僕に、
『いままで、『本当に俺が勇者なのか?』っと疑問を胸に勇者を名乗っていた俺ですが、今回の魔物狩りではっきりしました! 本当の勇者は俺では無く、シュタイン王国侯爵子息。アルサス・タリスマンであることを!』
奴は、とんでもないこと言い出しやがりました!
「「「「「………………………………」」」」」
ジオルドの言葉に、声を無くし戸惑う人々だが、
停止した頭は、アルサス・タリスマンが今回の優勝チームのリーダーだと気付くのに、それほど時間が掛からなかったようだ。
知って知らずか。
チラチラとこちらに視線が集まる。
「あのガキィィィィ!」
動けないながらも、僕の侯爵子息らしからぬ声は、
「「「「「う、うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 新勇者アルサスさまぁぁぁぁぁ!!」」」」」
人々の歓声に掻き消され、
さらに、僕をはさんで、姉上とヒルデの視線が交差した。
刹那。
「おろおろ、わっちの主殿は……」
人々の視線を集めたまま、ヒルデが右手を高らかに上げて特大の火球を空に向けて放ち、
「あらあら? 私のアルは……」
さらに姉上が目にも止まらぬ剣戟で、ソレを切り刻み、
「世界最強の勇者なのですわ!」
パーンパーン! パパーン!
ドドドドドドドッ!
真っ青な空に、オレンジ色の火花が滝のように流れた。
そんな幻想的な光景に、
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 新勇者アルサスさま、ばんざ~~~い!!」」」」」
人々は、さらに僕を褒め称えた。
そして、
『なので俺はこれから、アルサス様を勇者の中の勇者として、彼の元で努力していきたいと思います!』
沸き立つ人々の声の間を縫った、清々しいジオルドの言葉で、魔物狩りが締めくくられた…………。
そして僕が、勇者に復活した日でもあった…………。
最後までお読みいただきありがとうございます!
三部も、次回のエピローグで最後です。
正直、四部のことをまったく考えてません!
新作も書きたいので、ここらで終わってもいいかな?
それとも、学園編の続きか、勇者編とか書こうかな?
なんて思ってる今日この頃。
ブクマ、評価もありがたいですが、誰か、どうしたらいいか教えて!




