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少し短めですが、よろしくお願いします!
『ああ、全身が痛い。久々で加減が分からなくて……きっと手足の筋肉、ズタボロだろうな……あれ? なんでこんなことになんたんだっけ?』
疑問と苦痛に、顔を歪める僕に、
ふわりっ。
背後から、柔らかくて、優しくて、なんだかとっても安心する香りのする何かが、僕を包み込んだ。
『ああ。悩みや痛みの消えるこの安心感。これ、確か、前にも、どこかで……』
ぼんやりとした僕の耳朶に、
「あらあら、もう心配ありませんわ! さあ、あなたの出番ですわ! アルを! 私の愛弟を! 暫く動けないけど、痛みが無いレベルまで治してくださいな!」
「なんですかその細かい注文は! そんな治療できませんよ! それに私、もう魔力もほとんど残ってませんし!」
「あらあら? そんなこと無いでしょ? ほら! ここにまだ魔力回復薬が……」
「いやぁぁぁぁ! もう私、お腹タポタポです! 端から見たら妊娠五か月ほどの妊婦さんみたいです! これ以上は……」
「あらあら?」
「うぐっ、そ、そんな笑顔けられても、私は勇者の……」
「あらあら?」
「わ、私はこれでも聖女です! 政情は、脅迫には……」
「あらあら?」
「………………グビグビ! げぶっ! さあ、治療を始めましょうか!」
「うふふ。それではよろしくお願いしますわ。そのために、あなたを無傷で生かしておいたのですから……」
ん?
あれ?
これは姉上とマリアーナの会話?
意識が朦朧とした僕は、ぼんやりそんな会話を聞いていた。
ああ、そうか。
元勇者だった僕は、アノ力を使ったんだっけ……。
勇者の力。
それは人智を超越した人外の力。
文字通り、生身の体では制御出来ない力。
だから、それに耐えうるようにあるのが勇者の紋章なのだ。
僕からは勇者の紋章の効力が無くなったのだから、勇者の力も無くなって当然なのだが……。
なぜか勇者の力は残ってしまった。
なぜ勇者の紋章を失った僕が、勇者の力を使えるのかは謎だ。
でも、
きっときっと勇者の紋章をくれた女神様は…………。
「あらあら? 治療は終わりまして? 愛弟は? アルは大丈夫ですの?」
「はい! ちゃんと完全回復しました! これで……」
わがままで、自分勝手に動いてる風で、
「あらあら? 私は、暫く動けないけど、痛みが無いレベルまで治してくれとお願いしましたのよ? それではアルに、『もう、動けないのならしかたないですわね。はい、あ~ん!』って出来ないじゃ何ですか!」
「あなたは治癒魔法に何を求めてんですか!」
でも……。
「もちろん! 私とアルとの幸せ結婚生活ですわ!」
僕をちゃんと見ていてくれる姉上のような女神なのかもしれない。
「あらあら、それではもう一度私が…………ふぐっ! で、出来ないですわ! 私が、私がアルを傷つけるなんて……あなた! もう一度アルを動けないようにしなさい! でも、少しでもアルに痛みや苦痛を与えたら……『死』覚悟して下さいましね?」
「だ・か・ら、そんな器用な事出来る訳ないでしょ! 私はタダの聖女なんですから!」
タダの聖女ってなんだ?
治癒魔法を受けたとしても、僕は一応、重傷者なんだけど?
ぎゃあぎゃあと騒ぐこの空間で、僕はなぜか安心して力を抜き、睡魔に誘われるまま深い眠りについた…………。
すみません、昨日、今日と、いろいろとあって更新できませんでした。
三部も残すところあと二話ぐらいで終わりです。
応援よろしくお願いします!




