閑話:主殿とわっち1
よろしくお願いします!
「はぁ…………。つまらんのじゃ…………」
そうぼやいたわっちは、全然悪くないと思う。
じゃってじゃって、この世界は面白くないのじゃから…………。
眉目秀麗、魔法に特化。
さらに魔力が多いとされる青銀の髪で生まれ出たわっちは、生まれた時から特別じゃった。
しかも、六才の時。
他の追従を許さぬほど魔法が使えるようになったわっちは、二桁いた兄者たちが必死で追い求めるものまで手中にあった。
アルムデル帝国皇帝の第一継承権じゃ。
別段ほしいものでは無かったのじゃが、くれると言うものを無下に断るのも無粋。
わっちは素直にそれを受けたのじゃ。
そのあと、わんさかと兄たちが暗殺者を送ってきたのじゃが、もれなく魔法の練習台になってもらった。
練習がてら専属の侍女や護衛の騎士まで守れるよう、防御魔法も使えるようになったのじゃが、
「ヒルデガルド様は、いくらでも替えの効く侍女の私にさえ慈悲を掛けてくれる!」
「ヒルデガルド様は近衛騎士でも、傷を負うなと憂いてくれる!」
まあ、お気に入りの絨毯が彼ら彼女ら血で、汚れるのが嫌だっただけじゃった……。
ちなみにそれを言葉に出した……のじゃが、
「ヒルデガルド様は、照れ隠しでそんなことを言った」
「ツンデレ最高!」
なんか、物凄く好意的にとられてしまった。
それにしても………………ツンデレってなんなのじゃ?
とにかく、わっちがやることなすこと、全てが臣下に、国民に良いように取られた。
まあ、わっちにはどちらでも良かったのじゃが……。
そんなこんなで、帝国の跡継ぎがわっちだと国の隅々まで行き渡った一二の年になったころには。
欲しい物は言う前に、わっちと懇意になりたい者の手によって送られてきて、
なので、使い道のない小遣いを、街道整備(禁呪を使うには、帝都から結構離れなければならないため)を行なえば、
「ヒルデガルド様は、末端の民にまで慈悲を下さる!」
なんて称賛され、
暇つぶしに魔物を魔法で吹き飛ばせば、
「ヒルデガルド様が、我らのために魔物を駆逐して下さった!」
っと讃えられた。
『はあ? なんなのじゃ? もしかしてわっちは、変な呪いにでも掛かっておるのか?』
そう思えるほどわっちの人生は良好で、逆に良好過ぎて、退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で退屈で…………。
『いっそ、暇つぶしに大陸全土を巻き込み、戦争でもしてやろうかのう?』
なんて思ってたわっちに、皇帝から呼び出しがあったのじゃ。
「ヒルデガルドよ。そちに縁談の申し込みが山のように来ておる。まあ釣書を見て、気に入らなかったら断れ。気に入ったとしても、会って気に入らなかったら断れ。会って気に入っても断れ!」
帝国の『冷血皇帝』と呼ばれた父じゃが、わっちには物凄く甘かった。
とにかく、他の兄弟が私を陥れようとしたと噂を聞くぐらいで、死刑。もしくは幽閉決定の沙汰を言い渡すぐらい甘々の父じゃった。
それにしても…………。
バカみたいに山盛りの釣書の数。
まあ、次期女帝の伴侶になれるかもしれないのじゃ、わっちの目に留まれば幸いと思ってのことじゃろう。
じゃから、
「ふむ……そうじゃのう?」
わっちは、こいつらを使った暇つぶしを思いついた。
それは…………。
「うむ。ヌシの言いたいことは分かったのじゃ。じゃが、わっちはわっちより弱い者を夫にはせぬ! わっちを嫁にもらいたくば、わっちと戦い、わっちを屈服させてみよ!」
そう。
わっちは、釣書の人物を片っ端から呼び寄せ、そう宣言したのじゃ!
じゃが、
「うえ? そんなのムリです! 私はただ、君と一緒に帝国の未来を……ひやぁぁぁ!」
わっちっが放った初級魔法で吹き飛ぶ、どっかの貴族。
つまらぬ、つまらぬ、つまらぬ。
会う男、男、男、つまらぬ者ばかりじゃった。
自分で考えた暇つぶしじゃが、思った以上につまらなかった。
自国、他国を問わず呼び寄せた者たちは、全て貧弱じゃったからじゃ!
中にはやる気の対戦者もおったが、わっちが威力を押さえた極小の火球(馬車ぐらいの大きさかのう?)を二、三個作りお手玉を始めると、皆逃げていったのじゃ。
「ふむ。つまらぬ」
まったくあいつらは、わっちに何を求めておるのじゃ?
じゃが、そんなある日、わっちは運命的な出会いをしたのじゃった!
作者的に長くなったので、ここで切ります。




