14
よろしくお願いします。
「……………………うん。姉上はちゃんと魔物を倒してるようだし、ヒルデは……」
姉上の行動から目を背け、気を取り直そうとする僕の耳朶に、
「天空より導かれし光りよ! 我が槍となり敵を打つのじゃ! 『流星の槍!』」
空を埋め尽くしそうな光の輪から、まさに流れ星のように輝く数多の槍が、エマリアを中心に降り注ぐ。
「ちょちょ、ちょま! こんな大魔法……防ぎきれるわけ……うぎゃぁぁぁ!」
ヒルデの淡々とした声と供に、およそ淑女らしからぬ悲鳴を上げるエマリアが、狙い澄ましたかのよう(いや、完全に狙ってたなアレは)に魔物がはびこる地面に激突した。
もちろん、魔物も光りの槍で串刺しになってるから、アホズラで気を失ってる彼女がすぐに襲われることはない。
だが、
「ギュルルルルルル!」
仲間を滅せられた魔物たちが、一人でも多くの敵に報復しようと思うのは、自然の流れで……。
「うは! ちょちょ! 無理無理無理無理! 私今、動けないから! こんな魔物に囲まれ……ぎゃぁぁぁぁぁ!」
ヒルデの魔法を受け、生きてるのが不思議なエマリアが意識を取り戻したと同時に、怒り狂った魔物に襲い掛かられようとした刹那!
「『そこそこ防御力のある盾』」
ヒルデの魔法が、魔物の攻撃からエマリアを守った。
「あ……ああ。たすか……」
だがしかし、
「おろおろ? 名高き勇者一行の、それも『最強の魔術師』との戦いで、わっちの魔力も底をついたようじゃ。すまんのぉ、その防御魔法も、いつまでもつかのう……」
ヒルデに限って魔力切れなんて絶対嘘だ。
そう思うが、彼女には、僕も含む所があるので何も言わない。
そんな中、
ビシッ! ビシリッ!
力任せの魔物たちの攻撃に、防御魔法に亀裂が入った。
「おろおろ? そろそろ壊れてしまうかの?」
「い、いやぁぁぁぁ! だじげで! だれが、だじげてぇぇぇぇぇ!」
きっと、うずくまってしまった彼女は知らないだろう。
ビキビキと音を立て防御魔法が壊れそうな瞬間を狙って、ヒルデが防御魔法を重ね掛けしているのを、
「おろおろ、もう少しで壊れるかのう? 後は……頑張るのじゃ!」
悲痛な演技……いやそれすらしてない、ほくそ笑むヒルデ。
「むりでずぅ! だじげて、だじげてぇぇぇぇぇ!」
懇願するエマリアを、ヒルデは見下すように笑みを浮かべているが…………。
「ああよかった。姉上もヒルデも、魔物の事忘れた訳じゃ無かったんだ」
「それは良かったって言っていいことですか?」
隣で不満げな表情のジオルドが呟くが、
姉上を泣かせ、ヒルデを怒らせたんだ。
それぐらい仕方ないじゃないかな?
僕はジオルドに、無言の笑みを向けた。
最後までお読みいただきありがとうございます!




