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よろしくお願いします。

「……………………うん。姉上はちゃんと魔物を倒してるようだし、ヒルデは……」


 姉上の行動(デイジの惨劇)から目を背け、気を取り直そうとする僕の耳朶に、


「天空より導かれし光りよ! 我が槍となり敵を打つのじゃ! 『流星の槍シューティングスターランス!』」


 空を埋め尽くしそうな光の輪から、まさに流れ星のように輝く数多の槍が、エマリアを中心に降り注ぐ。


「ちょちょ、ちょま! こんな大魔法……防ぎきれるわけ……うぎゃぁぁぁ!」


 ヒルデの淡々とした声と供に、およそ淑女(レディ)らしからぬ悲鳴を上げるエマリアが、狙い澄ましたかのよう(いや、完全に狙ってたなアレは)に魔物がはびこる地面に激突した。

 もちろん、魔物も光りの槍で串刺しになってるから、アホズラで気を失ってる彼女がすぐに襲われることはない。

 だが、

 

「ギュルルルルルル!」


 仲間を滅せられた魔物たちが、一人でも多くの敵に報復しようと思うのは、自然の流れで……。


「うは! ちょちょ! 無理無理無理無理! 私今、動けないから! こんな魔物に囲まれ……ぎゃぁぁぁぁぁ!」


 ヒルデの魔法を受け、生きてるのが不思議なエマリアが意識を取り戻したと同時に、怒り狂った魔物に襲い掛かられようとした刹那!


「『そこそこ防御力のあるただのシールド』」


 ヒルデの魔法が、魔物の攻撃からエマリアを守った。


「あ……ああ。たすか……」


 だがしかし、


「おろおろ? 名高き勇者一行の、それも『最強の魔術師』との戦いで、わっちの魔力も底をついたようじゃ。すまんのぉ、その防御魔法も、いつまでもつかのう……」


 ヒルデに限って魔力切れなんて絶対嘘だ。

 そう思うが、彼女(エマリア)には、僕も含む所があるので何も言わない。

 そんな中、


 ビシッ! ビシリッ!


 力任せの魔物たちの攻撃に、防御魔法に亀裂が入った。


「おろおろ? そろそろ壊れてしまうかの?」


「い、いやぁぁぁぁ! だじげで! だれが、だじげてぇぇぇぇぇ!」


 きっと、うずくまってしまった彼女は知らないだろう。

 ビキビキと音を立て防御魔法が壊れそうな瞬間を狙って、ヒルデが防御魔法を重ね掛けしているのを、


「おろおろ、もう少しで壊れるかのう? 後は……頑張るのじゃ!」


 悲痛な演技……いやそれすらしてない、ほくそ笑むヒルデ。


「むりでずぅ! だじげて、だじげてぇぇぇぇぇ!」


 懇願するエマリアを、ヒルデは見下すように笑みを浮かべているが…………。


「ああよかった。姉上もヒルデも、魔物の事忘れた訳じゃ無かったんだ」

「それは良かったって言っていいことですか?」


 隣で不満げな表情のジオルドが呟くが、

 姉上を泣かせ、ヒルデを怒らせたんだ。

 それぐらい仕方ないじゃないかな?


 僕はジオルドに、無言の笑みを向けた。

最後までお読みいただきありがとうございます!

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