13
お待たせぶっこきました!
ざまぁ、第一弾です!
「き……きゃは! ず、ずずずいぶん気の抜けた一撃じゃん。こ、ここここんなの何発く、くく喰らったって……おいマリアーナ。早く治癒の呪文をしろ!」
「はい! 治癒! あれ治らない? ええ! デイジさん強がってた割にはダメージマックスじゃないですか! 最上級治癒!」
「うるさい! きゃは! お楽しみはこれからじゃん!」
勢いある声を上げ、最上級治癒を掛けてもらってもなお、生まれたての小鹿のようにプルプルしながらなんとか立ち上がるデイジ。
姉上と対峙して、まだそんなこと言える根性は称賛に値する。
「あらあら? さすが勇者のお仲間様。それでは私からプレゼントですわ!」
いつの間にか、姉上の手にはパンパンに物が詰まったカバン。
それをマリアーナに向けて放った。
「え? え? これなんです?」
一連の流れから、どう見ても敵対してる姉上が投げたカバンを、なんの迷いもなく手に取るのはどうかと思うが?
それでもそこには、
「うわぁぁぁぁぁぁ! こんなにいっぱいの魔力回復薬……もらっちゃって良いんですか?」
素直に喜ぶマリアーナの姿に姉上は、
「はい。すぐに必要になるものですから、ですから……高価だからと言って出し惜しみ無いようお願いしますわ」
意味深な笑みを浮かべる姉上に、
「はい! 私、頑張ります!」
これから起こるであろう惨劇に気付かず、ニパァァァっと満面の笑みを浮かべるマリアーナ。
その横では、
「どこの皇女様だか知らないけど、『大陸最強の魔術師』の称号は、私んのもんだからぁ!」
「おろおろ、わっちが欲しいのは、『アルの良妻』の称号じゃ! そんな称号はヌシにくれてやるのじゃ。じゃが…………ヌシはやってはいけないことをした……。それ相応の罰は受けてもらわねばのぅ?」
「はっ! 出来るもんならやってみな!」
「「飛行!《フライ》」」
ギュンッと音を立て飛び上がり、空中に静止する二つの影。
「いやいや、盛り上がってるとこ悪いんだけど、まだ魔物いるから! 津波終わってないからね!」
「そうだぞデイジ、エマリア! ここに来たのはこの村を守るためだろ? なぜ仲間同士で争うんだ!」
でも、僕のツッコミも、ジオルドの静止の言葉も、頭に血の上った彼女たちには届かないようだ。
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
姉上の裂帛の声が響き、
「きゃは! そんな拳……ぶへげはぁ!!」
防御しようとしたデイジの剣をかいくぐり、腹に姉上の拳が直撃。
「ぐへぇぇぇぇぇぇ!」
瞬時にデイジは地面に激突。
余波で周囲の魔物が勢いよく吹き飛んだ。
さらに、
「あらあら、そこの聖女さん。さっさと回復しやがりませ!」
「は、はいぃぃぃぃぃぃ! 究極治癒魔法」
視線も合わせないのに、姉上の言葉一つでマリアーナから回復魔法が飛んできた。
彼女って聖女なのに、姉上の下僕感がハンパないのはなぜだ!?
「ぐっ……ぐぞぉぉぉぉ!」
回復魔法を受けたデイジが、なんとか立ち上がろうとするその足を、
「あらあら? こんな所に、歪で不格好で口が悪いですが、丁度いい棍棒が……」
「へ? なに? わたしぃ、棍棒なんかじゃ……ぎやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
逃げようと必死にもがくデイジの足を、姉上が容赦なくつかみ、
「ええぇぇぇぇぇい!」
気の抜けるような気合の声と供に、近寄って来た魔物に向かって振り回す。
「ぎょえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! だじげ……もうむぢ……じぬ! じんちゃうぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
姉上が武器と化したデイジで、近くにいた魔物を一蹴。
そして、
「ぼ、ぼうむり……」
姉上の手を離れ、満身創痍で這いずるデイジに、
「あらあら? 武器が痛んでボロボロになってしまったわ。治癒。お願いね?」
「はいぃぃぃぃぃ! 喜んでぇぇぇぇぇぇ!」
マリアーナに武器の補修を頼む物凄く良い笑みの姉上。
「あらあら、まだまだ魔物が来ますわね!」
「いぎゃぁぁぁぁ! やめでぇぇぇ! もう、もう……」
体だけは治癒したデイジの足を、再び持つ姉上。
彼女の地獄は、まだまだ始まったばかりだった……。
最後までお読みいただきありがとうございます!




