11
よろしくお願いします!
「どっせい! ふひゃひゃ! 女神様のおるこの地の魔物ごときをのさばらせたら、末代までの恥じゃ!」
骨と皮ばかりのガリガリの老人が、塹壕を飛び越え城壁に取り付こうとする魔物に、一抱えもある岩を落とす。
そして、城壁に取り付く魔物に対し、
「勇者様にも会えたんじゃ、こんな話、孫に聞かせるまで死ぬわけにはいかんわい!」
城壁の上からぐつぐつと湯気たつ熱湯の入った鍋をひっくり返し、魔物を引き剥がす老婆。
見くびってた訳じゃないけど、城壁の守りは大丈夫みたいだ。
だから、
「ヒルデ!」
「分かっておるのじゃ!」
僕の声に反応しヒルデが両手を広げると、迫りくる魔物は雨のようにばらまかれる魔法の槍に串刺しになる。
暴力的で、圧倒的な魔力に、魔物たちが怯んだ隙に、
「姉上!」
「あらあら? ようやく私の出番ですわ!」
僕の指示に朗らかな声で答え、地面を蹴り、塹壕を飛び越え、魔物の群れに飛び込んで行く姉上。
そして、抜身の刀身を閃かし。
「はあぁぁぁぁぁ!」
裂帛の声を上げて、当たるを幸い、魔物たちをバッタバッタと斬り伏せていく。
「あらあら? もうお終いですの? まだ最初の舞踏も終わってませんわよ?」
狂気に駆られた魔物たちの足が止まった。
姉上とヒルデの圧倒的な攻撃力を前に、彼らたちが恐怖したのだ。
「ふぅ。これで何とかなったかな?」
津波の恐ろしい所は、死を恐れない突進力。
まあ、数はまだいるけど死を感じてしまった魔物相手なら、普通に対処できる。
そんなことを考えてる僕の耳朶に、
「ぶっはぁぁぁぁ! ぜい、ぜえ! あ……げほっげほ! ごぼげほほほほほ! ごは、ごほほほほほほ!」
元ゴーレムだった高台に登った元王子が戻ってきて、意味不明の何かを叫んだ。
「元王子の言葉を翻訳しますと『森から帰った! 魔物の姿はもうほとんど見えない! ああ、死ぬかと思った!』です!」
涙はともかく、鼻とか口から体液を流す元王子の言葉を、後ろから来た息も斬らしてない護衛が訳してくれた。
うん。この王国にも、まだまだ逸材はいるもんだ。
さらに、
「やあ、左の森にも、もう魔物はほとんどいなくなったよ!」
「だからぁ、帰ってきたんですけどぉ?」
真面目な勇者の声と、可愛げも、愛想の無いデイジの言葉。
勇者一行も無事に戻ってきたようだ。
「ふう。まだ油断は禁物だけど、とにかく何とかなりそうかな?」
前線で戦っている姉上とヒルデには悪いけど、見る限り彼女らが遅れを取る様な魔物はいない。
ふぅ。っと、今まで貯めていた息とともに、肩の力を抜いた。
刹那。
「とことでぇ。出来損ないであるあなたが立てた作戦にしては、完璧すぎて気持ちが悪いんですけどぉ?」
「きゃは、そうそう! そ・れ・にぃ? 勇者一行をモブ扱いって酷いんじゃねー? もしかして、あいつらに魔物を狩らせて、優勝でもねらってんじゃねぇ? だっ・た・らぁ、私らは……。こんな事しちゃっても、許されるんじゃねぇ?」
油断してるつもりはなかったが、津波にばかり注意がいっていた。
いつの間にかエマリアとデイジが、僕の背後にまわり、
「風よ!」
エマリアが背後から僕に向かって、風の魔法をぶっ放し、
「あがっ!」
バランスを崩す僕に、
「きゃはははははは!」
デイジが大剣を振り抜いた。
絶妙な手加減で、僕は鎧と服を剥ぎ取られた。
もちろん服は上半身だけだが、
「デイジ、エマリア! アルサス様に何をしてるんだ!」
鋭いジオルドの叱責に、
「あれぇ~~。メンゴメンゴ! 手がすべっちゃった! それにしても……」
「きゃは! さすがにこれは……」
反省のはの字も無い彼女らの視線の先には、露わになった僕の背中。
「きゃは! 勇者だったくせに、魔物から逃げて背後からの一撃を喰らうなんて、何度見ても不快じゃね?」
「本当に醜いできそないですこと!」
そこには魔物に切り刻まれた、『勇者の紋章』があるのだから……。
次回、反撃開始!
応援、よろしくお願いします!




