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さあ、いよいよ戦闘開始です!
それと同時に、ざまぁカウントダウン開始です!
「ま、魔物です! 魔物が来たから、もう下りて良いですか? そして、そのまま逃げても……」
それからしばらく、元ゴーレムだった見張り台から声を上げるミナ。
「あらあら? 良いですわよ。『魔物の群れに…………』」
「いやぁぁぁぁ! それ以上言わないで! ちゃんと、ちゃんとアルサス君の指示に従いますから!」
直感で姉上の言葉を遮り指示通りに僕の元に駆け寄る、多分、『魔物の群れに飛び込んで行け!』と言う名の令嬢。
「先頭は予想通りゴブリンやコボルトだぞえ、じゃが、数が多いいのう。それが山道を所狭しとこちらに向かって来るぞえ!」
遠目の魔法で確認したヒルデが叫ぶ。
ここらの森の木は、数十年から数百年は経ってるだろう大木が多く、大軍で通るには間隔が狭すぎるので、村に続く開けた道に魔物が集中する。
当然、魔物たちは長蛇の列になる。
それでも、魔物二千に対し、僕らは老人を含めて五〇人弱。
絶望的な戦力差だ。
(いや、もしかしなくても、姉上とヒルデがいれば、どうにかなってしまう気がするのは、多分、気のせいだ!)
「全員、戦闘配置!」
僕の声に、皆が配置に着こうと動き出す。
まあ、テキパキとノロノロの差はあるが、大丈夫。
まだ時間はある……と思いたい。
「それじゃ、行こうかヒルデ、ミナ。姉上! 護衛よろしくお願いします!」
「ええ! ほんとに行くんですか? あの魔物の中に?」
僕との取引に応じ、いったんは作戦に賛同したミナだが、どうやら見え始めている魔物たちの数に腰が引けたようだ。
だが、
「この作戦は君が要なんだ。だから頼むよ!」
僕の誠意ある態度と、
「あらあら? アルの言うことが聞けないのですか? 土下座丸さん? さあ、行きますわよ!」
姉上の説得(別名、強制と言う名の脅迫とも言う)に、ミナは地面に額をこすりながらも、器用に僕らについてきた。
「いだだだだっ! 削れる! 顔、削れるから!」
何かを叫ぶ彼女の声は、忙しいのでこの際無視しよう。
とにかく、僕らはゴーレムで作った城壁(村なのに城壁と城門とはこれいかに?)で囲われた村の、二つしかない城門についた。
城門の手前には、姉上が抉った落し穴(姉上は塹壕といまだに言い張っているが)があり、数百程度の魔物ならそれでこの村に近寄ることも出来ないのだが、今回はそれすら越えてくる勢いの魔物。
だが、準備は整った!
「ヒルデ! 風魔法!」
「分かったのじゃ!」
作戦通り、ヒルデが僕らを起点に、城門に向かって左右に風の壁を作る。
これで声が広がる心配はない。
「念のため、全員耳栓を付けろ! ミナ! 君の『歌姫』の力、存分に使ってくれ!」
「なんか私の歌。不本意で間違った使い方されてるような気がするんですけど!」
ミナが何か言ってるが、すでに耳栓をしている僕には何も聞こえない。
「何言ってんのか分からないけど、さっさと歌え! じゃないと……」
だから僕は、魔物が落とし穴に気付いたタイミングを見計らって、合図を出し、
「聖歌第一章。『勇者たちの行進!」
ミナが城門に迫る魔物たちに向かって歌う。
「ぼ。えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
強く、巨大な魔物に追われる様にしてこちらに走ってくる、比較的魔力に抵抗の弱い魔物は、彼女の歌声? を聞き、
「グオォォォォォ! オお?」
全身にみなぎる戦闘意欲と、力が抜ける脱力感を同時に味わい、混乱して急停止。
そこに、
「ヌオォォォォ!」
力ある大型の魔物がゴブリンたちが落ちるであろう落とし穴を飛び越えようと、勢いよく走り込んでくる。
だが、突然できた障害物に足を取られ、
「ギュラァァァァァ!」
ある者は飛ぶ位置を誤り落とし穴へ。
「ギュ? キュラァァァァ!」
ある者は障害物に足を引っかけ落とし穴に。
眼の前の異常事態に、急停止した魔物は、
「ホッ…………ギュワァァァァァ!」
背後から突進してきた魔物に押され、踏みつぶした魔物の血糊で足を滑らせ、やはり落とし穴へ……。
さらにたちが悪いことに、脱力してる魔物はミナの歌で気力を充実させているため、巨大な魔物がぶつかってきてもその場で踏ん張ってしまい…………。
さらに被害を拡大させていた!
うん。
なんか僕が立てた作戦だけど、物凄くスプラッターな光景だ!
兎にも角にも、僕たちは津波の最大の脅威である突進力を削ぐことに成功した。
もちろん、右の森を抜けようとする魔物には二人の王子と護衛の騎士。
左の森には勇者一行が守っている。
「あれ? 俺って元王子だよね? この扱い、ひどくねぇ?」
「あはははは! それよりシュタインの元王子よ! さっきのオーガの突進! 余の心身にビリビリきたわ! 凄くねぇ?」
とか、
「ねえ? わたしら、あいつのお願い聞いたのに、こんな所で魔物退治ってぇ。モブ扱いじゃね?」
「きゃは! 私らをモブ扱いするなんて……」
とか、
森から来る魔物を死守している仲間から、声が聞こえたような気がするが、今はここの防御に専念しよう。
まあ、
「はあぁぁぁぁ! 火球! 戦乙女の槍!」
風を操りつつも数多の呪文を使い、魔物を蹴散らすヒルデと、
「あらあら? どんぐりの指弾で頭を打ち抜かれ絶命するなんて……脳筋の名が泣きますわよ?」
拾い集めた沢山のどんぐりを指ではじき、魔物を駆逐する姉上。
『うん。なんだか、頭を下げてまで、勇者たちに助力を求めた僕って、何だったのかな?』
そう思いそうになる思考を、僕は頭を振って追い出した。
最後までお読みいただきありがとうございます!
もうすぐ三部のクライマックス!
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