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ブ! ブクマが・・・・・・。
後書きに続く。
「ぬ? な? なんで拘束が……がはっ!」
野太い悲鳴に、思わず視線を上げれば。
腕を取り、姉上の華奢な体に体重を乗せて拘束していたはずのオルテガの体が、宙に浮いていた。
「あらあら? あなた、今、なんておっしゃいました?」
この状況を説明するでもなく、ただただ姉上が問う。
それは静寂なる場に響く、涼やかな歌声。
だが、
誰もが聞き惚れてしまうような声音なのに、誰も声の主に見惚れたりしない。
なぜなら彼女は、
「ぐっ……がっ、がっ、がっ……」
圧倒的強者と思われたオルテガの喉元を片手でつかみ、鎧を付けたその巨漢を持ち上げているからだ。
「え? う……そ……きゃ、きゃぁぁぁぁ!」
悲鳴を上げながらもその場からサッと退避し、バカ王子の背に隠れるミナの危機感知能力は称賛に値する。
だが、そんなぐらいの距離逃げて、助かったと思うのは浅はか過ぎだ。
姉上は顔に掛けられたケーキを拭い、ぎゅっと握りしめた後、
「私が質問しているのに、なぜこの方は無言なのでしょう?」
困った様に人差し指を唇に当て、さっぱり理解できないとばかりに、眉間にシワを寄せた。
本当に、なんで起こさなくていい寝た子を起こすようなことをするのか?
彼らを正座させ、一時間ばかり問い詰めたいが、今はそんな場合じゃない。
「姉上! 僕ほら、そんな言葉聞き慣れてるから……」
ホントに面倒くさくて嫌だが、オルテガを救うため出来るだけ和やかな笑みを浮かべるが、
「あらあら? それってもしかして、いつも言われてるってことかしら?」
例えでは無く、この場の温度が一気に下がった。
大湿原《大失言》!
どうやら僕は、選ぶ言葉を間違ったようだ。
鎧を含めた推定体重八〇キロを超えるオルテガがジタバタしても、姉上の腕はピクリとも動かず固定されている。
この異常な状況で、僕は最後まで足掻こうと声をあげる。
「違います姉上。それよりもう、オルテガが限界です!」
「あらあら? アルは床に組伏された可哀そうな私より、このムダ筋肉が大切なのですか?」
うん。言い方を間違えた。
でも、いやホント。
これ言うと後がとても面倒くさくなるのだが……。
人の命には代えられない……かな?
僕は意を決して口を開く。
「姉上のその細い腕が、薄汚い筋肉ダルマを触っているのが、僕は気に喰わないと言ってるんです!」
言ってしまった。
ガシャァァァン!
即座に床に落とされる鎧姿の男。
僕の言動で、一つの命が救われた瞬間だった。
なのに、
「ぐふっ。薄汚い……とは……アルサス……き、きさま……」
なぜだろう?
せっかく命を救ってあげたのに、なんだかとても恨まれてる気がする。
なんか色々後悔してる僕を余所に、
「ひ、酷い! オルテガは何もわるいことしてないのに……」
きっとこの場を和まそうとでもしてるのかな?
ミナがバカ王子の背から躍り出て、キッと姉上を睨みつけた。
バカ!
そこは姉上の射程内だ。
もちろん、そんなこと親切に教えてやる義理は無いので、そっと成り行きを見守る僕の耳朶に、
「シルヴァーナ様! オルテガに謝って下さい!」
ビシッ! と姉上に指をさすという不敬を働くミナ。
それに対して姉上は、
「あらあら? あなた……確かミナ様でしたっけ? 先ほどは美味しいケーキをありがとうございます。これは、ほんのお返しですわ」
不敬を咎めることなく、今まで握っていたケーキ? を、器用に指先で弾いた。
刹那。
ヒュンッ!
ごきゅりっ!
早くて見えなかったが、姉上の放った指弾はミナの体に突き刺さり、なんか鳴っちゃいけない音を立てて体をくの字に浮かせた。
「ごっ⁉ ごふえ!!」
浮遊は一瞬。
その後すぐに床に転がるミナは、とても令嬢が発したとは思えない声と、多量のヨダレを撒き散らしながら、静かにくずおれた。
そして、
カーン。カーン。カーン。カラカラカラ……。
床に這いつくばる彼女の腹部からこぼれ落ちる、ケーキだった小石ほどのなにか。
思わず姉上の顔を伺うと、
「あらあら、時間がたって硬くなってしまったのかしら?」
「へえ、知らなかった。ケーキって小麦と砂糖と水を混ぜただけなのに、時間が立つとあんなに硬くなるんだ……」
とりあえず話を合わせておく。
人間、知らないこと、知らなくていいことって、世の中にあって良いと思う瞬間だった。
ブクマが想像以上に増えてたので、うろたえて片言になってしまいました!
引き続き、チャンチャンバリバり、チャンチャンバリバリ、ブクマ、お願いします!