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今回、ちょっとざまぁです。
ちゃんとしたざまぁは、もう少しお待ちください。
「うおぉぉぉぉぉ! 勇者様じゃ! この地に女神ばかりか、勇者様まで来て下さった!」
その一言で、皆のやる気が物凄く上がった!
のだが、
「さあ、私たち勇者一行が来たからには……あれ? なんか村の人、少なくない? それにジジイとババアばっかだしぃぃぃ?」
「きゃは! 良く燃えそうだから……薪にでも使う?」
勇者の横にいた魔法使いのエマリアとデイジが、そんな声を上げると、
「ダメですよ! たとえどう贔屓目に見ても、あと数年が寿命の人達ばかりで、勇者の偉業を広められないから、いっそ……なんて思っては!」
聖女が、本音ダダ漏れの癖に、なんか、物凄く救われそうな笑みで、村に残った老人たちを見下ろした。
「「「「「…………」」」」」
姉上と、勇者の登場で盛り上がった士気は、いとも簡単に物凄く下がった。
さらに、
「そ・れ・にぃ~。なんでか出来損ない君までいるんじゃん! エマリアの気分ダダ下がりぃなんですけどぉ?」
真っ赤な唇に指を当て、言いたい放題のエマリア。
当然、姉上とヒルデからの殺気&報復を予知した僕は、手を上げて二人を止めた。
「一応、生きてれば戦力。潰れればただのゴミです。今は無駄なことに力を割かないで下さい」
彼女らだけに聞こえるように囁く。
「あらあら? それではコレが済めば攻撃は可と?」
「おろおろ、それでは、コレが済んだ後にでも、特大魔力を込めた麻痺で、魔物の前に放り、芋虫のように逃げ回るのを見物しようかの?」
「それは名案ですわね」
「そうじゃろ?」
「うふふふふふ」
「おほほほほほ」
なにやら物騒な事を言ってる二人を無視し、僕はジオルドの元に行く。
「勇者ジオルド、津波はもうそこまで来ている。僕らはここで津波を防ぎたい。協力してくれないだろうか?」
「津波を? この人数で?」
向けられた人懐っこい笑みの瞳の奥は、なんだか僕を値踏みしているようで落ち着かない。
「でもぉ、その態度ってぇ、人にモノを頼む態度じゃないんじゃね? それってもしかしてぇ、貴族君だからぁ?」
貴族とか関係なく、普通に頼んでいるのだが……。
どうやらジオルドの隣にいる彼女には、お気に召さないらしい。
まあ、これぐらいで戦力に余裕が出来るのなら、
「ここの人達を助けるために、お願いします!」
「アル!」
「主殿!」
姉上とヒルデの悲鳴のような声を耳に、僕は腰を九〇度に折り頭を下げた。
「へえ、元……なのに、侯爵の息子なのに、普通に頭下げるなんてありえなぁぁぁい!」
「きゃは! すぐに頭下げる……やっぱこいつ、偽物でまがいモンじゃん!」
僕の姿に、とても嬉しそうなエマリアとデイジ。
まあきっと、勇者が来たってことの小芝居なんだろうけど……。
エマリアとデイジの声にピクリとも反応しない僕に、
「…………頭を上げて下さいアルサス様。分かりました。あなたのこの村を守る気持ち、しっかり伝わりました! 俺はこの村も、村の人々も守る!」
二人を視線で窘め、馬上で腰から剣をスラリッと引き抜き、天に掲げるジオルド。
きっときっと、勇者を迎える小芝居なのだろう。
まあ、
「あらあら? 塹壕はこれぐらいでよろしくて?」
「姉上、それは人が隠れられる深さじゃないから!」
姉上が剣戟で、村の周りに深い深い穴を作っていて、
「おろおろ、ゴーレムはこれぐらいでいいかのう?」
「ヒルデ? この村にゴーレム三桁は多すぎ! 半分にして、残りは壁にして!」
村人の居場所さえ奪うぐらいつくられた、所狭しと並ぶゴーレム。
「うん。二人のせいで、三文芝居が台無しじゃないかぁぁぁ!」
思わず叫んでしまった(でも棒読みの)僕の台詞に反応したのは、
「ちょちょ! なに三文芝居ってぇ? 勇者わぁ! くたばり損ないのジジババとか、なりそこないのアンタたちのためにぃ、こんな小芝居までして頑張ろうとしてんでしょ? それなのに……」
「うん。エアリア、少し黙ろうか?」
羞恥で頬を染める勇者が、エアリアを窘めるがもう遅い。
ちなみに、僕と勇者の小芝居は、二、三人ほどのご老人が見ていた。
だから彼らは、僕らに協力せざるを得ない。
「ははは……それじゃ、作戦を聞こうか?」
「ぐぬぬぬぬ!」
「ふん。出来損ないの分際で小賢しい手を……」
乾いた笑みを漏らす勇者はともかく、いきり立つ勇者の仲間の目を盗み、姉上とヒルデに微笑みかけたのは、僕らだけ秘密だ。
とにかく、僕らはこのメンバーで、数時間後に現れるだろう魔物の大軍を止めるための作戦を実行に移した。
最後までお読みいただきありがとうございます!




