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一話投稿にも関わらず、たくさんのブクマと評価ありがとうございます!
舞踏会なのになんでこいつ鎧姿?
しかも剣を腰に差しているのはなぜ?
さすがに非常識だと思うのだが?
ツッコミどころ満載の男だが、それはもう『バカ王子の取り巻きクオリティー』で片付けることにした。
そんな非常識で脳筋な彼だが、
「ええ! 俺ですか?」
それ故、
『彼女に近付くのか?』
と野生の勘が良い仕事をしてるらしい。
なのに、
「お前しかおるまい。大丈夫だ。いくら侯爵家と言えどもこいつは罪人。不敬にはならぬからさっさと捕えろ!」
顔面蒼白なオルテガの意図を勘違いし、バカ王子が勝ち誇った様に叫ぶ。
「わ、分かりました。ミナ…………愛してたぞ!」
覚悟を決めた絶望的な戦場に向かう兵士のように、オルテガは姉上の元に進む。
それを悠然と迎える姉上だが、
「…………ゴリラのような男に拘束される、か弱き乙女。それを颯爽と助けるマイダーリン!《血のつながった弟》これはいけるかも!」
オルテガが走る鎧の音で、姉上の呟きは聞き取れなかった。
でも、ランランと輝く瞳に嫌な予感しかしない。
もしかして、こんな公の場でヤルのか?
「あの、姉上……出来るだけお手柔らかに……」
当然のように、姉上の反撃があると思ったのだが、
「ええい! 男は度胸! シルヴァーナ様。いや、シルヴァール! 王子の命令でお前を拘束……」
「きゃぁぁぁぁぁ! そんな! か弱い私を、無理やり床に組み伏せるだなんて!」
なんか、オルテガが近寄る前に、自ら床に転がって見えたのは気のせいか?
それに、さっきからチラチラ視線こちらに向けるのが、身内と言えども鬱陶しいと思うのは僕だけか?
「ふっ、ふはははは! な、なんだ、こんなに簡単に抑え込めるとは……やはり噂は噂であって、恐れることなど何もないな!」
「きゃぁぁぁぁ! オルテガ様ステキ!」
オルテガの高笑いに、男爵令嬢の黄色い声。
本来なら「逃げろ! 息の続く限り、金が続く限り、全力で逃げろ!」っと言いたいのだが、それはもう彼らの自業自得なので放っておこう。
本当に、
周りを見て!
顔色が無色透明になった周りの人々を見て!
そう叫ばなかった僕を、誰か褒めて欲しい。
なのに、まったく空気が読めない奴らは、勝ち誇った様で、
「さすがオルテガ様! あの勇者も凌ぐと噂されるシルヴァーナ様を、簡単に取り押さえるなんて!」
「ああ。この大陸一の猛獣を捕えられたのだ。お前こそ大陸一の勇者だ!」
「え? そうですか? いや~。それほどでも……」
突然の称賛に、ニヤニヤしつつも床に寝転んだ姉上の手を後ろに取り、拘束しているオルテガ。
なんでこいつらは、こんな悠長に話してるんだろう?
危険が危ないレベルは、とうの昔に越えているに……。
後は、どこで姉上が爆発するのかを、戦々恐々として待つ場面なのだが?
冷や冷やしている僕の視線を、歪んだ眼で感じ取ったのか?
バカ王子の腕に抱かれる男爵令嬢が、バカ王子に見えないように勝ち誇った笑みを僕に向けた。
「あははは! やはりシルヴァーナのような女よりミナのほうが王妃に相応しい! そう思うだろアル?」
「ステキ! オルテガ様も、私の王子さまも~ん!」
オルテガとバカ王子のドヤ顔と、間延びする声が、いちいち僕をイラつかせた。
多分、僕が彼女の取り巻きにならなかったから、仕返しのつもりなのだろう。
そればかりか、
「オルテガ様! お仕事お疲れ様で~す。疲れた時は甘いものが……あらまあ!」
にこやかな足取りでオルテガに近寄るミナは、猿芝居の猿も真っ青なくらい不自然に持っていたケーキを、
べちゃりっ!
僕の方に視線を送っていた、姉上の顔面に投げつけた。
「あら? ごめんなさい! 手が滑ってしまいましたわ!」
わざとらしく口元を押さえるミナ。
両手で隠された口は、それはそれは喜びに歪んでいるのだろう。
だが彼女は分かっているのだろうか?
死刑執行書に、自らサインをしたことに。
でも、これはさすがにやりすぎだと、僕が姉上に向い一歩踏み出す。
が、
「あれ~? アルサス君、オルテガ様に敵うと思ってるですか~? そんなにおバカさんだったのですか~?」
「がははは! アルサスよ、こいつ《姉》を取り返したかったら拳で語り合うか? まあ、そんな勉強ばかりしてて、なよっちい体じゃ、俺に…………」
ミナとオルテガが声を高らかに笑う。
このバカども、姉上の逆鱗となる言葉を吐いちまった。
僕は姉上に向かう足を止め、思わず片手で両目を覆った。
最後までお読みいただきありがとうございます!
次話からざまぁが始まる予定です。
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あと、『半径三〇センチぐらいの最強勇者』も絶賛投稿中です。
そちらもよろしくお願いします!