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よろしくお願いします。

「オルスマン王国第二王子、エミール・カストロフスであ~る! 余はこの度シュタイン王国侯爵令嬢。シルヴァーナ・タリスマンとの婚約を、王国に打診したことをここに宣言する!」


 姉上の一撃を喰らいながらも数秒で復活したエミールが、キリリとした顔でそう宣言する。

 鼻血さえ出ていなければ完璧な仕草でだ。

 もちろん、


「あらあら? そんなの却下ですわ」

「ふぐっ!」


 姉上の冷たい拒絶に瞬殺された。


「なぜだ? 余の顔は万人に美男子と讃えられる顔ぞ!」

「はい。でもその顔は、アルでは無いですわ」


「では、スタイルは? そ、それに魔法も剣も使えるぞ! 凄いんだぞ!」


 なんか、必死なエミール。

 多分普段もてる男って、あまり自分をアピールしたこと無いんだろう。

 彼の言葉は、どこか稚拙でたどたどしい。

 それに対し、


「あらあら? スタイルもアルでは無いし、魔法も剣も、アルじゃないですか?」


 姉上はバッサリ切って捨てた!

 姉上からの僕の評価は、たっかい高い棚に置いておくとして、

 スタイルはともかく、魔法も剣も僕じゃないって、どう言うこと?

 それにしても、


「いや~~~。姉上ってブレないな……」


 思わず呟いてしまう。

 

「なので私は、結局、まったく、これっぽっちもあなたに興味がありませんの!」


 さらに、止めとばかりに投げつける姉上の鋭い美声に、


「ぐぬぬぬぬぬぬぬっ!」


 いやいや、僕を睨まないで下さいオルスマン王国第二王子!

 なんか殺気のこもった視線に、『いい加減諦めて! じゃないともっと混沌と化すから!』っと必死で生暖かい視線を返したのだが、


「むきぃー! なぜだ! こ奴といるより余と結婚すれば、地位も名誉も思いのまま! 一生ものすごい贅沢が出来るのだぞ!」


 僕を指さし、エミールはなりふり構わないアピールをしだす始末。

 どうやら火に油を注いでしまったようだ。

 

「いや~。それないわ。いくら金持ちでも、そのアピールの仕方は無いわ!」

「そうじゃの、いくら金が好きなおなごでも、ドン引きする言葉じゃの」


 ボソリッと呟くミナに、いつの間にか近くに来ていたヒルデが激しく同意。

 まあ、男の僕でもアピールのレベルが低いのは分かる。

 それに、


「あらあら私、今でも贅沢してますけど?」

「いや、この国の侯爵家なんて、目では無いほどの……」


 ゴロンッ!


 エミールの言葉を、『はあ。所詮、己の容姿と金を自慢するだけの男よね?』っと言外に遮る姉上が、面倒臭そうに床に放った黒光りする鉱石。


「なんなのあの石ころは?」


 首をかしげるミナだけでなく、この場のほとんどの人間は頭がクエスチョンだろう。

 だが、一部の人間とエミールは、驚愕の視線でその石ころを見た。


「うそ……だろ? これって……アマダイト鉱石なのか?」

「はい、その純度の高い鉱石がゴロゴロある鉱山が、我が領土にありますの。そのおかげで我が領土の資金はどの国よりも潤沢ですわ。で・す・か・ら、やる気になれば、王族より贅沢し放題なのですのよ?」


 姉上の微笑に、床に転がる鉱石を手に取り、日の光りに当て驚愕するエミール。

 どうやら純度の高さに気付いたようだ。


「そ・れ・に! これは、私が愛して愛して愛して止まない。凛々しくてカッコ良くて、知的でカッコ良くて、もう! 存在自体が天使! の愛弟が採掘したものですの! 『姉上が怪我をしないように、防御力に定評があるアマダイトで姉上の身も心も包みたい!』なんて言った愛弟は、もはや私の守護神と言って良いのではないでしょうか!」


「それ僕初耳なんですけど? それにアマダイトの鉱山見つけたの、偶然だって何度も言ったでしょ?」


「はい! 一流の採掘師でさえ見つけることが出来ないアマダイト鉱山を難なく見つけられるアルは、世界一の強運! いえ、神に愛されし至上の存在なのです! ぜひ、私との間に子孫を残してください!」

「婚約とか結婚飛ばして、子孫繁栄ですか⁉」


 相変わらずぶっ飛びまくる姉上の発言に対し、


「さすがわっちの主様なのじゃ!」


 そう言って、僕に抱き着こうとするヒルデの足元が、


 パアァァァァァン!


 前触れも無く破裂した。


 まあ、普通の人にはそう見えただけで、実際は姉上が放ったペンが床に直撃して砕け散っただけなのだが、


「あらあら、地べたを這いずる虫(お前の事な!)が、愛弟に近寄ってきましたのでつい……。ご無礼を、節度あるアルムデル帝国の淑女様(ボッチ姫様)


「お、おぬし、今わっちを狙ったよな? 『足の一本でも吹き飛ばせば、少しは静かになるだろう?』って念まで飛ばしおったよな?」

「あらあら、なんのことでしょう?」


 ヒルデ非難の声を、微笑で受け流す姉上。

 バチバチと見えない火花を散らす、二人の睨み合いに、


「そ、そんな……。こんな貴重な鉱山が、簡単に見つかる訳ない。そうだ! アル君! これは君が雇った一流の採掘師、数百人でくまなく領地を調べ、その功績を自分のモノにしたんだよな? 姉に良い所を全て持ってかれた凡庸な男に、そんな事出来るは……」


 ゾワリッ!


 僕の功績を、なぜか認めたがらないエミールの言葉を遮るように、この場の空気が凍った。

 そればかりか大気中の水分が凍り、それが日の光りを浴びて何とも幻想的な現象がこの教室で発生した。


「うわぁ! 綺麗だな!」

(猛烈に現実逃避中!)

 だが当然、物事はそれだけじゃすまなかった。


「あらあら? 私の愛弟の功績を、どこの誰が否定するのでしょうか?」


『エミール逃げて! ここは何とかするから、自分の国に逃げて! そして二年は閉じこもってて!』


 そう念じた僕の優しさを余所に、


「え? ええ? なんでシルが怒るの?」


 困惑を隠せないエミール。

 その数秒で、彼の運命が変わることになる。

 もちろん、物凄く最悪な方向に……。


 どすっ!


 姉上はどこから取り出したのか?

 白い手袋をエミールの頬に投げつけた。


 ん?

 手袋がぶつかる音じゃない?

 それに、


「ひゃぁぁぁぁぁ! がふっ……むきゅぅぅぅぅぅ」


 種も仕掛けも無い綿一〇〇パーセントの、ただの手袋がぶつかった勢いで、エミールが転がり回って壁に激突?

 でもそんなの、姉上クオリティーだからしょうがないだろ?

 姉上に手袋を投げられ、壁に激突して意識朦朧なエミールに、


「今この時! シルヴァーナ・タリスマンは! 我が愛弟を侮辱したオルスマン王国第二王子に決闘を申し込みます!」


 魅惑の胸元を惜しげもなくそらし、気絶したエミールに宣戦布告をする姉上。

 そんな緊張した場面に、


「おろ? わっちは? わっちの扱いがあからさまに適当ではないのかえ!」


 残念皇女ヒルデの叫びは、誰の耳朶に響かなかった………………。

ブクマ、評価、感想、ありがとうございます!

一応、考えていた学園編も大詰め? です。

応援よろしくお願いします!

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