表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/144

本日予定がありまして、予約投稿とさせていただきます。

よろしくお願いします。

 翌日。

 朝食を男女兼用の寮の食堂(もちろん姉上も一緒)でいただいた僕は、今日から通常授業だと、予鈴一〇分前に席に着いた。

 姉上は「アルとの初授業なので、おめかしして行きますわ!」っと言ってたので、ホームルームギリギリ、いや、姉上の事だから、ぶっちぎりで遅れて来るだろう。

 でも、意外に思うかもしれないが、姉上は化粧をしないし香水もつけない。

 なぜなら幼いころの僕が、


『女性が化粧をするのは身だしなみだと理解するのですが、厚化粧とか香水のきつい匂いって、僕は好きになれないんですよね? その点、姉上は、いつもほんのりと石鹸の匂いしかしなくて、良いですよね』

 

 なんて言ったせいかもしれない。

 なのになぜ?

 僕に会うためのオシャレって何するの?


 そんな現実逃避している僕は今……。


「アルサス様! 今年度の学園の予算を、もうちょっと余所に振りたいのですが……」

「え? これ、僕が見ていいものなんですか? いやいや、『愛弟予算』ってなんですか? 予算の九割とってるじゃなですか! 分かりました。ここにある愛弟予算は破棄して下さい! 姉上には僕から言っておきます!」


「アルサス様! 食堂に『姉弟との愛の席』を設ける案ですけど……」

「却下で!」


「アルサス様…………」


 なぜか生徒会の先輩方々や、その他大勢の人の相談を受けていた。

 その全てが姉上関連なのだが、なんでいちいち僕に言うの?

 僕の席を先頭に、列を作るのやめて!


 言いたいことは山ほどある。

 が、この列が姉上の被害者だと思うと無下に断れない。

 それと、


「おいミナさん? なにその『最後尾』って看板? それに並んでる生徒からなんか貰ってたよね? 制服の異様に膨らんでるポケットから、ジャラジャラと聞こえるのは気のせい?」

「き、気のせいですよ……あは、はははははは……」


 不自然に視線を迷わせるミナ。

 後で姉上にお願いして、全て返すように命令してもらおう。

 それにしても……。


「はぁ。早く授業が始まらないかな?」


 勉強があまり好きではないのだが、心底授業の開始を願っていた。

 そんな僕の願いを聞き届けたのか?

 救世主が現れたのだが、


「おはようございます! さあ、今日から授業を……え? なんで長蛇の列? なんかの儀式ですか? 私新任なんで、そう言うの対処に困るんですけど!」


 そうツッコミを入れるミル先生は、なぜか昨日みたいに、どこかやけっぱちに見えた。


「儀式とかは怖いので、余所でやって下さい! こっちはそれどころじゃ無いんです!」

「「「「「…………」」」」」


 凛と言い放つミル先生。

 だが、彼女の声は物凄く余裕のないようにも聴こえ、それを感じ取った上級生は無言で退出していく。

 どうやら姉上と学園で、最低でも一年過していた彼らは、 危機察知能力を身に付けているようだ。

 そこに、


「あらあら? 皆様朝から騒がしいですわね?」


 いつの間に現れたのか?

 ちゃっかり、僕の隣の席に当然ように座る姉上。

 

「あらあら、アル。久しぶりですわね」

「朝食一緒に食事しましたよね? それでも久しいのですか?」


 朝からの質問攻めに疲れ、思わず皮肉交じりに挨拶を返すが、


「はい! アルと会えない一分、一秒は、私にとっては一日千秋に感じるのですわ!」


 真っ直ぐに、一直線にぐぐっと拳をにぎる真剣な眼差しの姉上が、いじらしくも可愛く見えて、思わず視線を外してしまう。


「それにしても……なんだかあの教師、余裕が無いですわね? まるで昨日、私に会った時のようですわ?」

「あ! ああ……確かに彼女は……」


 余裕の無いミル先生に思い当たることがあり、一人で納得してしまった。

 侯爵家の影の情報で僕は知っているが、確かにアレならミル先生が苛立つのも分かる。


「はい! 今日は……今日も、転校生を紹介します!」


 そんな気丈に振る舞う彼女に、憐憫の視線を向けていると、


 ガラガラガラ!


「うむ。皆のもの! わっちが隣国アルムデル帝国からの留学生。帝位第一位を愛のために捨てた、ヒルデガルド・フォン・ミユーゼルじゃ! よろしく頼むのじゃ!」


 勢い良く扉を開け、見知った美少女が入ってきた。


 帝国内では魔力量が底なしの証と伝えられる青銀の髪と、伝説の魔道士『スレイン』と同じ真紅に光る瞳。

 自己紹介にあったように、二桁を越える子供の中でアルムデル皇帝が唯一、後継者にと願った第一皇女。

 ヒルデガルドその人であった!

 そんな物凄い人物なのだが、


「「「「……………………」」」」


「おろ? なんじゃ? 驚きが今一つじゃな? ほれ愚民ども、驚き過ぎてそんまま倒れ込んでも良いのじゃぞ?」


 なぜか彼女を迎える、生徒の反応は鈍い。

 まあ昨日、王国で知らぬ者無し! っと謳われた姉上が、まさか弟のために留年したなんてことが無けりゃ、彼女の望む反応になったと思うが……。


『ドッキリも、二度同じ内容だと飽きる』


 っと言ったとこだろう。

 教室には『また?』っという空気が蔓延していた。


 そんなことをまったく知らないヒルデは、


「なぜじゃ! なぜわっちの登場に驚かぬ⁉ 帝国の第一皇女じゃぞ! もっと驚愕の眼でわっちを見るのじゃ!」


 催促を促すヒルデ。

 うん。言いながら僕を見るのは止めて!

 いや、知り合いが少ない彼女が、僕を見るのは当然か?

 なぜなら僕は……。


「なぜなのじゃ! 教えてたもれ主殿!」


 そう。

 何を隠そう、彼女は僕の婚約者なのだから…………。

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

ブクマ、評価は二四時間受付中です!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ