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毎度ご覧いただきありがとうございます。

今回、なんとあの令嬢がひどい目にあいます。

やりすぎ?

そう思わないでもないけど、書いてて面白かったから後悔はしてない!

「…………うん。チェンジ!」

「あらあら、なにをチェンジしますの? 担任ですか? それともこのハゲ……学園長ですの?」


 言葉の意味を知っていながら、それでもにこやかに笑う姉上。


「はぁ…………一応聞きますが、姉上って確か一学年上ですよね? なんでここにいるんですか? それも転校生って……」


 物凄く正論を吐く僕に、姉上は当然とばかりに我侭と噂される胸を張る。


「あらあら? アルには言ってませんでしたっけ? 私、チュエル共和国に留学していてこの学園での単位が足らなかったことも……」

「初耳ですね! それに姉上、それは転校じゃなくて留年ですよね? さらに言えば昨日も一緒に、僕の入学祝だからって家で夕食食べましたよね? どこに留学してたんでしたっけ? チュエル共和国っていったら、数百キロ離れた国なんですけど!」


 嫌味満載の僕の問いに、姉上はピクリッとも動揺を見せず、


「あらあら、留年……は、聞こえが悪いので、転校っと言う形を取りました。本当のことですわよねぇ、学園長?」


 意味ありげな視線を学園長に向けた。

 確かこの人、元宰相だよね? 今でも結構な権力者だから、貴族の通う学園の長を任されてるんだよね?

 思わず懇願するように視線を向ければ、

 学園長は当然のように、


「はいもちろんです! 全ては貴女の思うがままに!」


 腰を九〇度に折り、完全服従を見せた。

 うん。どうやら彼も下僕のようだ。


「とにかく、私はこのクラスに転向します。皆さん。これからよろしくお願いします!」


 そうにこやかにカテーシーをされれば、このクラスに姉上に抗える人間なんて……。


「ダメです! それじゃあ、ダメです!」


 ガタンッとイスを弾き、姉上に向かってちょっと淋しい胸を張る少女。

 そう。

 たった一人。あの男爵令嬢(ミナ)以外にはいなかった。



「ミ、ミナ君! いくらこの学園内が身分は同等と謳っていても、君が数少ない『戦乙女の歌い手』でも、侯爵令嬢、しかもシルヴァーナ様に物申すのは、ちょっと……」


「そうですよ! 私が担任するこのクラスで、いじめ、は……お給料が下がるんで極力許しませんよ!」


 建前を口にする学園長と、建前のたの字も無い本音をダダ洩らす担任のミル先生。

 しかし、


「そんな事を言っているから、いつまでたっても社会が、世界が変わらないんです!」


 うえぇぇぇぇぇぇ!

 なんかミナが、物凄く頭の良さそうなこと言ってる!

 思わず感心しかけたが、


「それに、この奴隷の首輪! シルヴァーナ様仕様なんですよ! せっかくアル君を色仕掛けで落として解除してもらおうと思ったのに、この女がいたら、なにも出来ないじゃないですか!」


 なんか、清々しいほど自分本位がダダ漏れだった。

 思わず感心してしまった僕の気持ちを返して欲しい。

 まあ、彼女はこれからそれどころではなくなるのだが、

 

「あらあら、それは違いますわ。それは『奴隷の首輪』ではなくて、『絶対遵守の首輪』ですわ」

「それって同じことでしょ!」

「ニュアンスが違いますわ」

「どうでも良いわよそんなこと!」


 いきり立ち、片手息するミナ。

 どうやら彼女は、今どき流行の『キレやすい子供』の部類に入るらしい。

 そんなカルシウム不足の彼女に、姉上はちょこんっと人差し指を桜色の唇に当て、


「あらあら? あなたは確か……『地べたに這いずり、主人を出迎えろ!』様でしたっけ?」


 そう言えば奴隷……ゴホンッ。絶対遵守の首輪って、主人の言うことに絶対服従だった気がする。

 っと思った瞬間。


 べたんっ!


「むきゅぅぅぅぅぅぅぅ」


 強制力で床にひれ伏すミナ。

 それでも、

 

「そ、そんな名前、あるわけないでしょ!」


 躍起になって抵抗を試みる彼女。

 だが、姉上はそれを見て、妖艶な笑みを浮かべる。

 まるでネコがネズミを、いや、ドラゴンがスライムを追い詰める様に似ていた。

 案の定、


「あらあら? それでは『お座り』『回れ』『ティンティン』だったかしら?」


 人差し指を優雅に口元に添えたまま、姉上の『命令』が響く。

 すると、


 はしゅ。

 くるくる。

 しゅた!


 床に座ったかと思うと、急に立ち上がり回り出すミナ。

 そして、全ての命令をこなしたミナが、まるで訓練された犬のように膝立ちのまま、胸元で手をだらんっとさせて待機していた。


「ぐっ……むきぃぃぃぃ!」

「あ、あの……シル? もうその辺で……」


 態度と合わない屈辱に満ちたミナの顔に、さすがのバカ王子も声を掛けるが、


「あらあら? あなた知りませんでした? 私をシルと呼んでいいのは、ここでは愛しい愛しい、愛弟以外にいないと」


 ニコリッと笑う姉上に、なぜか教室の空気が一気に下がった。


「ああ。もう駄目だ。元婚約者だった王子でさえも、女神様を押さえられないなんて……」

「そうね。でも、女神様の手で天に召されるのですもの、きっと天国に行けるわ!」


 天に向かって祈る者。

 姉上に向かって膝を折る者。

 なんか、教室に蔓延するあきらめムード。

 

「いや、ほんとにもう、この茶番終わらせて、寮に帰りたいんですけど……」


 しかたないと僕は、夕食の時間を犠牲にする覚悟で、その場で立ち上がり、


「姉上。もうそのへんで止めましょう。ほら、あと数時間で夕食ですよ。はあぁぁぁあ。折角入学記念に姉上を夕食に誘おうとしたのに……」


 わざとらしくため息をつく僕に、


「はい! 止めます! ミナ様もこれからよろしくお願いしますわ! ささ、担任様。解散の合図を、私、これからアルとの夕食のために、めい一杯オシャレをしなくてはならないので!」


 呼吸すらもままならない緊張の中、僕のたった一言でそれが解かれた。


 誰もが驚愕しながら息を吐き出し、

 そして、僕に向かった視線は、なんだか救世主でも見るような視線みたいだと思ったが、今は姉上の機嫌が良い内に移動しようと考えた。

 この時、僕はもうちょっと考えるべきだったのだ。


アルサス様(この方)に従えば、この侯爵令嬢(超ド級自然災害)がいても生きていける!』


 彼らがそう思っていたことに…………。


最後までお読みいただきありがとうございます!

これからもよろしくお願いします。

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