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一時間かけてパソコンを立ち上げ、
三十分かけてサーバーにアクセス。
パソコンさんの機嫌が悪くなる前に、
ササッと投稿!
「さて、それじゃ、明日も休みか…………」
ヒルダを腕にぶら下げたまま、僕は何事もなかったかのようにこの場を去ろうとした、
刹那。
「アッルゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
いつもよりテンション三割増しの、小脇にマリアーナを抱いた姉上が、
「五分ぶりですわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
僕の胸に(もはや閃光じゃね?)っと思う勢いで飛び込んできて、
「あっらあら、えい!」
「ひぶしゃっ!」
マリアーナを抱く反対の手でご機嫌に僕の腕に絡んでいたヒルダを吹き飛ばした。
メキメキメキッ!
その衝撃をモロに受け、全壊した僕のアバラに、
「ぐびぐびっ! 超! ウルトラスーパーゴージャスデリシャスハイパーヒール!」
間髪入れずにマリアーナの、これ以上ないぐらいの最上級回復魔法が飛ぶ。
この傷を瞬時に治すなんて…………もうマリアーナって、死人でも蘇らせられるレベルなのでは?
そんなことを考える僕の胸の中には、
「アル! アル! もう、もんすごっ、寂しかったばい!」
なぜか北方の訛りで僕の胸に顔をスリスリする姉上。
きっとたぶん、そういう気分だったのだろう。
「どうしたんです姉上。今日はやけに甘えん坊さんですね」
さすがに今回は姉上がらみではないので、口調が柔らかくなる僕に、
「はっ! 今日はアルが優しい! 妊娠!? これはもう、私は妊娠しているのですのね!」
いろんなことを吹っ飛ばした姉上が、キラキラした視線を向ける。
「うん。無いから。一〇〇パーありえないから、それより姉上……」
いつも通りの受け答えをする僕だが、どうも今日の姉上の様子がおかしい。
いつもより抱き付く力がやや強いとか、
いつもより僕の匂いを嗅ごうとする息遣いが深いとか、
大したことではないのだが…………なにか違和感を覚えた。
「姉上? 何かあったのですか?」
いまだ僕の胸に顔をうずめる姉上の肩に手を置き、ぐいっと、いや、メリメリメリメリっと彼女をはがし、その瞳をうかがうのだが、
「あらあらアル。そんなに見つめられたら、妊娠してしまいますわ!」
さっきの妊娠はどこ行った!?
そうツッコみたいのを我慢し、僕はジッと姉上を見つめた。
すると、
「伴侶となる私の、ほんの少しの機微に気づくなんて…………さすがはアルですわ!」
誰もが見惚れるような、それはそれは嬉しそうに頬を染めた。
うん?
…………正直僕は見惚れた。
いやいや、ほんの少しだけだ!
そんな僕に姉上はいつものようにはしゃぐでもなく、
「あらあら…………アルの顔が見れて、よかったですわ」
なんて言って、どこか愁いを帯びた笑みを浮かべ、
「これから私は、ほんのちょっと、アルと会えなくなります。とても、とても寂しいですが、私は頑張り、また逢う日を生きる糧にしていきます!」
「え? 姉上。昨日も一昨日も、そのセリフ言いましたよね?」
言葉にした通り、これはつい昨日、寝る前にも聞いたセリフだ。
でも…………。
なんだろう?
姉上の笑みが、
どこか遠くに感じて…………。
「はい。ですから、すぐにまた会いに来ますわ!」
そんな姉上の言葉の意味を、
僕はたいして考えもせずに、後姿を見送ってしまったのだ……………………。
そして…………。
ある晴れた昼下がりの教室。
小鳥がさえずり、
競技が延期になり、でも連日休日だといろいろと体裁が悪いので、急きょ登校日となった今日。
少々だるげに授業を進める教師の声と、生徒のヒソヒソトした声が聞こえたり。
たま~に…………誰かの悲鳴が聞こえたり…………。
そんな柔らかい日差しの午後に………………………………………………………………とんでもない事件が起きたのだった!
最後までお読みいただきありがとうございます!
今日のようにパソコンさんの機嫌をうかがいながら更新していきたいと思います!
途中で心が折れないよう、応援よろしくお願いします!