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翌日。
今日と明日は競技がお休み。
二日続けて国々の友好を深めるお茶会が、王城で盛大な開かれるためだ。
表向きはそうなっていた。
でも、僕の耳には、侯爵家と言う身分で、しかも身内が起こしたことだから、正確な情報が入ってくる。
姉上とヒルデが壊した校庭を整備するのと同時に、
姉上の雄姿!(っと、ここで言っておこう)を見て『自分は彼女に相応しくない!』っと、代表を辞退する選手が続出してしまい、その選手を入れ替えるために設けた期間だ。
そろそろお気づきだろうか?
実はこの親睦を深めるための大陸代表六国選手権なるこの大会の、本当の意味。
それは、姉上とのデート券とか言う生易しいものではなく、
『姉上の伴侶候補を、大陸中から選ぼう!』
っと言う試みなのだ。
説明しなくても分かると思うが、シルヴァーナ・タリスマンの名は、良くも悪くも大陸中に響き渡っている。
魔王を倒した僕の名声?
それは、『ああ、シルヴァーナの弟、彼もそこそこだよね?』なんてぐらいの名声だ。
魔王が大陸に悪さする前に倒しちゃったからね。
ちなみに、僕へ届く釣書の量は毎月馬車一台分だが、姉上のは馬車一〇台分は軽くいける。
とにかく、姉上の名声は止まることを知らないのだ。
いわく、
シルヴァーナ様は自国に限らず他国の小さな農村が、自国の騎士団でも手に余る魔物の被害にあっていると噂に聞くと、颯爽と現れ魔物を倒し、礼も言わせぬまま去って行く。
うん。それって多分、ただのレベル上げだ。
いわく、
シルヴァーナ様は疫病で苦しむ民に、無料で回復薬を配ってくれた。
うん。それって多分、僕が風邪を引いた時に大量に作った回復薬を、邪魔だからとばら撒いただけ。
いわく、
シルヴァーナ様は文字の読めない子供が多い孤児院を訪れては、絵本を使い文字を教えてくれる。
うん。それ完全に姉上の策略だから! 絵本の題名が『姉萌本』って、文字を覚えても内容を理解しちゃダメなやつだから!
っとまあ姉上の行いは、なぜか良い意味で大陸全土に広がっている。
一部のやりすぎを除いて、ほぼ敬愛する姉上のやることが評価されているのだから、嬉しいと言えば嬉しいのだが、
『ホント、姉萌本とか止めて! そんな物を純粋無垢な子供の教科書に使わないで!』
っと、本心では叫びたい。
まあ、いくらか脱線したが、とにかく姉上は知勇兼備とその美貌も相まって、国内外問わず人気が高い。
父上がいろんな意味で腕を振るわなければ(実際、シュタイン王国国王が、『ぜひ私の側室に……』なんて世迷言を言った時には、王様を相手に拳を振るったと言ってた…………。王様の威厳って、一体なんだろ?)わが家には、いろんな所から釣書やらなんやらが、今以上に山積みになっていただろう。
そんなこんながありつつも、すでに姉上もお年頃。
そろそろ婚約者を決めなくては、いろんな意味でこの大陸が大変なのだ。
だから、今回の騒動である。
まあ、各国の裁定基準は僕が送っているし、最終的には僕も審査するので、姉上の婚約者は、並大抵な人間には無理だと思う。
そんなことを考えながら、休日となった今日。
今ごろ王城は、物凄い騒ぎになってるはずだ。
なんたって大会の必要事項を、完全に書き換えなければいけないのだから。
え? 僕は参加しなくていいのかだって?
大丈夫! 僕は勇者だけどただの学生だから。
そう言って王国のお偉様方に丸投げしたから!
それに僕には、
「さて、今日は休日になりました! どこに行きたいですか?」
作り笑いを匂わせないよう爽やかに!
でも、出来る限りにこやかに学園の女子寮から出る彼女を出迎える。
「あらあら? アルからデートのお誘いなんて……いったいどこに行きましょうか!」
そう。
今日の僕の任務は、姉上をエスコートすることなのだから。
姉上の監視と行動の制御。
これは姉上を知りつくし、
姉上の行動に、ある程度干渉できる人物でなければならない。
僕にうってつけ、いや、僕にしか出来ない任務なのだ。
「で、どこに行きます?」
にこやかに姉上に手を差し伸べる。
「あらあら! 今日のアルは、なんだかご機嫌ですわね? もしかして……私とのデートが楽しみだったとか……きゃ!」
頬を両手ではさみ、イヤイヤと左右に体を揺らす姉上の微笑みに、
ガンッ!
近くを通っていた通行人の男性が、姉上に見惚れ壁に衝突。
ゴツッ!
隣の女性は姉上の微笑みに見惚れて他の通行人(多分こちらも見惚れてた)と激突し、
バキッ!
姉上から視線をはずさずに歩いていた男性が、馬車にはねられた。
うん? 最後のは大丈夫なのか?
ま、まあ、そんなこんなで、僕と姉上のデートが始まった。
この時まで僕は僕にとっての、このミッションは簡単なものだと思っていた。
今はその軽率さを、物凄く後悔するのだった…………。
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