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よろしくお願いします!
さて、今さらながらだが、突発的に始まったお祭りの、この学園からの参加メンバーなのだが……。
僕、姉上、ジオルドにマリアーナ。
王族に復帰したセツナに、ミナ。
忘れている方もいるだろうが(僕も忘れてたけど)、留学中のエミールはオルスマンに戻っている。
のだが、
「おう! 主殿! 競技が始まりそうじゃ! サクサク行くのじゃ!」
そう言って手を取ろうとした、僕の婚約者であるヒルデは、
シュバッ!
「あらあら? こんな所に羽虫が」
「お、おヌシ今! アマダイトを使った扇子を全力で振り下ろしたよのう? それ、すぅぅぅぅぅっごく痛いのじゃぞ! 分かっててやったじゃろ!」
姉上が放つ、音の速さを越えた扇子の一撃に阻まれた。
ちなみに、アマダイト製の扇子は姉上が振るえば、軽く地面を割る。
それを凄くとは言え痛いで済ますのは、ヒルダぐらいだろう。
って、
あれ?
「ヒルデって、アルムデル帝国の第一皇女じゃね? 国、ちがくね?」
僕もそう思い聞いてみたのだが、
「おろおろ? わっちっは主殿の婚約者なのじゃから、この国の代表で良いじゃろ?」
なんて、軽く答えた。
彼女はそれでいいのだろうけど、両国の外交官やら王族やらは物凄く焦ったはず……。
まあ、別に僕の負担になってないし、あのいい加減な男が忙しくになるなら良いのか?
そう思い直した僕は、
「そうだね、後の問題はは大人たちに任せて、僕らは子供らしく純粋に楽しもう!」
こうして僕は面倒臭いことは全て大人に任せ、純粋に学園の生徒として、この大陸代表六国選手権を楽しむことにした。
のだが?
『それでは第一競技、玉入れを始めます!』
学園一、いや我が国で一番の司会者になるつつある、ミル先生の放送と共に、各国の代表者たちが自国の籠の前に集まる。
一応役員なんで競技内容は確認している。
内容的にはまったく問題はない。
少々低年齢向きな競技ではあるが、問題は起きない無いはず。
いやいや、普通に考えれば問題なんて起こるはずが無い、そんな訳ないじゃん! のだが…………。
『それでは、競技開始!』
ミナ先生の掛け声とともに、
「攻撃開始!」
「「「「「うおぉぉぉぉぉぉ!」」」」」
気合の入った声が響き、エミール率いるオルスマン王国の代表者たちが、シルバニア共和国の選手目がけ、本来ならカゴに入れるための玉を投げた。
しかも全力でだ!
「うわっ!」
「きゃっ!」
「うろたえるな! 応戦しろ!」
当然、シルバニアの代表者たちは混乱しながらも応戦するのだが、
「うはははは! ぬるい! お前らの反撃などヌルいわ!」
どこに持っていたのか、オルスマンの選手が大盾を構え相手の攻撃をシャットダウン。
その中で勝ち誇るエミール。
「いやいや、玉入れって、そんな競技じゃ無いから!」
なぜか盛り上がりを見せる観客の声援に、僕の抗議の声は掻き消された。
そう。
この競技に限らず、運動会レベルのこの大会内容に、『他者への攻撃は不可』なるものが存在しなかったのだ!
そんなの、考えなくても分かるでしょ?
当たり前でしょ?
そう思うのは僕だけなのでしょうか?
歓声の中で、僕だけが呆然と立ちすくんでいる間に、
「ふはははは! ヌルいのはお前たちだオルスマン! 我が帝国が誇る|重歩兵の進行《ヒルデガルド様への花道》! 止められるのなら止めて見せろ!」
シルバニアを一方的に攻撃するオルスマンの横っ腹を、アルムデルの選手が強襲した。
「………ふむ。我が国は専守防衛。敵の攻撃に供えつつ、競技を継続する!」
荒れる競技場で、宗教大国ロンギヌスのイケメン代表ラインハルトが、いち早く自分たちの位置を確認し、防御しつつ競技を続行。
ゼフト王国の代表たちは、なぜか僕に「我々はアルサス殿を守らなくていいのですか?」っと、意味不明な確認を取った後、守護を拒否した僕に渋々従い黙々と玉をカゴに向かって投げてる。
だから、
「そ、そうですよ! さあ、僕たちも周りに踊らされずに、競技を続けましょう! 僕より多く玉を入れられるのは誰かな?」
どっちかというと籠に玉を入れるより、敵にぶつける方が面白そうとか、姉上やヒルデが思うより早く、玉入れのほうに誘導するのだが、
ぽこんっ!
どこかの国の、誰かが投げた流れ玉が、僕の後頭部に当たった。
別に痛くもかゆくもない、今、この時じゃ無ければ、笑い話にもならない出来事だったのだが…………。
「あらあら? 私の最高で、最愛で、三秒見つめてるだけで想像妊娠が五回ほど出来てしまう愛弟に…………。攻撃したのは………………どなたかしら?」
ある意味白熱した会場が、姉上の目が笑ってない美貌が、一瞬にして凍りついた気がした。
しかも、
「おろおろ? わっちの主殿に敵対するとは……もはや、帝国の者ではあるまいな?」
青銀の髪を揺らし真紅の瞳を見開いた、ヒルデガルドが、漏れ出す炎の魔力で辺りを焦がしながら呟いた。
刹那。
ヒュンッ!
……………………ドコッ!
ボキッ!
ズザザザザァァァァァ!
姉上の放った玉入れの玉が、螺旋を描いてアルムデルの選手を抉った地面ごと吹き飛ばし、
ゴオォォォォォォォォォン!
会場に、両手では足りないほどの火柱が上がる。
玉入れって競技はどこ行った?
兎にも角にも、
「あらあら?」
「おろおろ?」
微笑みながら、
でも、目が笑ってない二人が会場を支配した。
僕は、
「アルサス……様?」
半分涙目のミル先生に『|アルサス君なら止められるでしょ?』っと向けられた視線に首を振る。
だって、プッツンした二人は、ある程度暴れなきゃ僕の言葉も耳に入らないのだから…………。
それにしても、
「玉入れって、こんなに危ない競技だったけ?」
これ以上流れ弾に当たらないよう、頭を低くして呟く僕を、誰も否定は出来ないだろう…………。
大陸代表六国選手権の初日は、校庭の不具合のためこの後の競技を中断した…………。
作者の気分とアルコール度数で、こっそり再開したのに、ブクマ、評価ありがとうございます!
我ながら更新速度が遅いのですが、肝臓が悲鳴を上げるまで頑張らせていただきます!(いやいや、飲まないと書けないのかよ!)