11
本編再開です!
でも、主役はアルではなく・・・・・・。
よろしくお願いします!
「はあ? なんで俺が新国王のお披露目パーティーに!?」
「はい! 新国王ロンド様の指示でございますブランド様!」
商業国家であるゼフトは結構金持ちで、王宮だって歴史は浅いがそれなりに贅を尽くしている。
そんな王宮の一角で、友のいたシュタイン王国からつい三日前に帰って来て早々、王宮の一角に軟禁されていた俺に王命が届いた。
「しかも、セリーナと一緒にだと? 兄貴は……兄上はそれほど……」
『それほど俺が憎いのか!?』
使者の前なので、その言葉は飲み込んだ。
いや、当たり前か。
アルという友人を得たが、俺が前国王に課せられた任務は失敗。
そればかりか、国を攻めさせる口実を作った張本人の一人だ。
敗戦国のストレスを、俺に向けさせるのはしょうがない。
でも、いくら言っても婚約を解消しないセリーナまで矢面に立たせるなんて……。
「彼女は、彼女はただ……」
新緑を思わせる、髪と瞳。
おっとり系の美人なのに、物凄く感が鋭く、俺の思惑を完全に看破したうえで、
『ああ、それは私も、やりがいがありますわ!』
なんて言って、
『王子に捨てられた、可愛そうな婚約者』とか『色ボケ役立たずに捨てられたのに、いまだにソレにすがりつく、バカな女』とかの陰口を、
ほっこりする笑みで受け止めてた彼女を思う。
「これ以上、彼女をさらし者にするのか?」
バキッ!
使者が去った後、俺は力任せに備え付けのテーブルに拳を叩きつけ、真っ二つに割れるテーブル。
どうやらアルと頑張った日々を、この国のテーブルは受け止めきれなかったようだ。
「謹慎中だから、モスとデイトとは連絡取れないが、きっと彼らもストレス解消の道具としてパーティーに招かれるだろう。なんとか彼らと婚約者たちは守りたいが……」
今の俺たちに、そんな力は無いと知っている。
だが、無駄な努力と分かりながらも、俺は圧倒的な力に怯まずに立ち向かう親友を思い浮かべながら頭を動かし続けた。
「うん。でもまったく良い案が思いつかなかった!」
パーティー当日。
誰に言うでもなく婚約者を迎えに行く馬車で、一人吠えていた俺だが馬車が停止し、侯爵家に着いた。
不意に彼女のどこか諦めたような笑みが、脳裏に蘇った。
「アルに俺の夢を語ったのは、つい先日だったはずなのに……」
今の俺は指先で押せば折れるほど、心が弱っていた。
そんな俺の耳朶に、
「ブランド様!」
珍しく興奮した様子の、セリーナが駆け寄ってきた?
「え? え?」
「あら? 私ったらはしたない……でも、今日の私、どうですか?」
モジモジとしながらも、満面の笑みを浮かべた彼女は俺の胸元に飛びこんできた。
そんな彼女を優しく、確認するように肩を抱いて距離をとる。
「これって、もしかして……」
もしかしなくても彼女のドレスは、今は遠くにいる友の言葉を思させた。
だって、このドレスは、
『今、領地で試みてんだけど、なかなか量産まで行かなくてね。軌道に乗ったら君たちの婚約者にプレゼントするよ。君たちを選んで、貧乏くじばっかじゃないってね』
悪戯っぽく笑って差し出されたソレは、今まで流通していたどんな生地より滑らかで、表面がロウソクの火にも反射する、確かシルクとかいう生地なのだ。
だが、
俺が友の事を差し置いて、優先したのは!
今流行の、なんかフワフワしているプリンセスドレスではなく、体のラインがはっきりくっきり出る、なんか、物凄くエロ……いや、色っぽいドレス。
「いやいやいや、これ、ダメだろう?」
オーダーメイドで作られたと思われるソレは、英才教育で鍛えられた俺の頬筋を、秒で破壊し緩ませるほどの破壊力。
「こんなの、他の野郎に見せたら……」
そう言えば、アルから貰った『一等騎士』の祝いで貰った長剣が馬車に忍ばせてある……。
いや、それより、アルの姉上の一撃を数秒耐えた、大規模防御魔法を彼女の周囲に展開して誰も近づけないようにしたほうが良いのか?
セリーナを守る、数十の案を思案している俺に、
「ブランド様? に、似合いませんか?」
両手を胸元で結び、見上げてくる婚約者。
セッ、リィナアァァァァァァァァ!
今すぐ彼女と婚約しなくては!
いや、もうすでに婚約している!
じゃあ、じゃあその先に…………。
駆け引きの無い、純粋な彼女の瞳に、色っぽいチャーミングさに、俺の頬筋は崩壊し思考が停止してしまった!
その後、王城へ向かう馬車の中で俺は、
「とても似合ってる。いや、俺の婚約者は……」
本能だけでドレスを褒めちぎり、そればかりか今までの彼女の良い所、美貌、性格を一つ一つ上げいった。
もちろん時間が足りず王城に着いてしまい、もう一周すると言ったのだが、
引きつった彼女の笑みに、なぜか強引に馬車から連れ出されてしまった。
「おいおい、これからの二時間が最大にお前の良い所なんだぞ! それを聞き逃すなんて……」
「はいはい、その続きは……その……私の一生を掛けて聞きますから……今日はこのぐらいで……それに、今日は二曲続けて踊って頂けるのでしょ?」
なぜか頬を染める彼女に腕を引かれ、渋々馬車から出て顔パスで城の扉を潜り抜ける…………。
ん?
もしかしなくても、彼女は、一生かけて俺の話を聞くと言ったのか?
しかも二曲続けて踊るのは、婚約者同士でしか出来ない。
………………ぐはっ!
どうやら彼女の良い所を、俺は六時間以上話せるようだ。
俺は勢い余って吐血した口を拭い、雲の間からひっそりと顔を出すお月様に、そう誓った。
最後までお読みいただきありがとうございます!
きっとたぶん。
明日も更新できると思います!
こんな中途半端な作者ですが、
応援よろしくお願いします!