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閑話:ある兵士の絶叫2

すみません。

昨日、

だらだらと休日を過ごすのはよくないと、適度な早起き、適度な運動を心がけたら・・・・・・。

寝落ちしました!

「え? え? なにした? 何が起こった? きっと今俺、悪夢ってやつを見てるんだけど、誰か起こしてぇぇぇぇぇ!」


 腰を抜かしてその場にくずおれるランドの絶叫が、逆に俺を冷静にさせた。

 うん。

 今すぐ逃げよう!

 城門の守衛用のドアをぶち破り、城下町を突っ切って、最短距離で反対側の城門から出て……とにかくここ以外の国を目指そう!

 踵を返そうとした俺の頬を、


「あらあら、あなた、城門を開けて下さらない? 私が開いても良いのですが……。もし壊してしまったら、修理とか国の面子とか……いろいろ大変でしょ?」


 もうすでに城壁壊されてるから、国の面子とか全然関係ないんですけどね!

 なんて事を思うのだが、声が出ない。


「頼んでも、よろしいかしら?」


 女神のような少女に、優しく頬を撫でられるなんて、一生に一度あるかないかの幸運だと思ってた。

 でも、

 実際はなんか違う。

 って言うか、死神のカマを首元に付きつけられた、もしくは悪魔に心臓握られてる気分なんですけど!?


 彼女の手には、なぜかどんぐりが補充されてる。


 ソレ、もしかしなくても逃げたら……ってことですよね?

 すでに抵抗する気無しの俺は、『わあ、美女と一〇〇〇の騎士との戦いか、見ごたえあるな~』なんて現実から目を背け、扉を開くよう合図を送る。


「我が女神様。具申よろしいでしょうか?」


 そんな俺の耳朶に、緊張を纏ったレッドの声。


「あらあら? なにかしら?」


 すげぇ~よ!

 この凍りそうで汗が止まらない空気の中。

 その原因に話しかけられるあんたは、俺の中じゃ精鋭だよ!

 会話の内容が気になり、思わず合図を送る手を止めた。


「この度の戦。アルサス様のお怒りが元と伺っております。さすればその姉上様である女神様自ら出向くのは当然ですが、女神様が直接手を下すのは、いかがなものかと……」

「あらあら? あなた。私のすることに……意見するの?」


 ブリザァァァァァァァァァァァド!

 アンド

 フレイム・オン・ファイヤァァァァァァ!


 氷河だよ! 火山だよ!


 彼女から発する、なんか殺気とか闘気とか超越した物凄い何かで、

 毛穴という毛穴から汗を垂れ流し、でも凍えて身動きできない俺は脳内で叫ぶ。


 このままじゃ彼、いや、俺も含めた周囲が消し炭も残らず凍り付けだよ!


 もう敵とか味方とか関係ない!

 無謀だが勇敢な彼の最後を、俺は見逃さないよう目を見張る。

 だが、


「はい。恐れながら、アルサス様も、あなた様の身を、いつも! 案じていらっしゃいますから」


 いつも! を強調したレッド(すでに俺の心の友になったので、名前呼び)の発言に、


「あ、ああああああ、あらあらあら? そ、そうですの? アルってば……ほんとにそうですの!?」

「はい。アルサス様は常に女神様を気に掛け、もし肌に擦り傷の一つでも出来ようものなら、我らがアルサス様のお怒りを受けてしまします!」


 終焉の女神が、はにかみ、微笑んだのだ!

 しかも、なんか、なんか、


 スプリンタアァァァァァァァァ!


 春だよ春!

 春の女神様がご降臨なされたあぁぁぁ!


 今までのアレ(凍土)はなんだったんだ?

 ってなぐらいの小春日和だよ!


「そ、そう。アルが、私の身を……そ、それではしかたないわね…………あなたにまかせますわ」


 ああ。

 この場に、この光景を目にできた俺を褒めてやりたい。


 薄紅色に染まる、宝玉のような頬に、

 頬に落ちた一房の髪を、頬を染めながらかき上げる仕草。

 

 どの一瞬を取っても、一枚の名画以外のなにものでもない。


「いや~。良いもん見せてもらったわ!」


 この短時間で、まるで超大作の演劇を見せてもらった気分だ。

 今夜は一杯多めに飲んじゃおうかな?


 肩の力を抜き、この場を立ち去ろうとした俺に、


「それではあなた。城門を開いて頂けますか?」


 美しいピアノを奏でるような声。

 もちろん、シルバニア王国の門番である俺は、


「はい! 喜んで!」


 どこかの酒場の店員のように、背筋を伸ばして城門を開ける合図を送るのだった。



「レッド。あなたの部隊の進軍を許します。でも、死んでも殺してもダメ出すよ? だってだって、私の愛しい愛しい愛しいアルは、私はもちろん人が傷つくのが嫌いな、優しい子ですから」


「女神様のお許しが出た! 我らの進軍は女神様の進軍。我らがやることは一つ! 一人一〇〇殺! いや、一〇〇不殺して、この国を攻め滅ぼすのだ! 全軍突撃!」


 一人一〇〇不殺ってなんだよ!

 もしかして、戦争なのにこちらを殺さないってこと?


 そんなのムリ無理。

 でも、


「あらあら、やる気なのは結構ですが、本当に殺しちゃダメですよ? それにあなたたち、も、かすり傷一つ負ってはいけませんわよ?」

「そうじゃの。わっちらが手を出さぬからと言っても、怪我人は主殿が悲しむからのう」


 はあ?

 戦争なのに死者無し?

 しかもそっちは怪我も出来ない?

 何言ってんだ?


 ここまでの殺気を出しておいて、何甘いこと言ってんだ?

 それにあの女神様とか少女と隣の少女は手を出すつもりはなさそうだし、

 この戦力差、どうするつもり?


 気合いを入れるレッドとその部下たちを見据えた俺の視線の先に、


「ぐびぐびぷはぁ~。はい! 怪我をしたらこちらに! 間違って相手を殺っちゃっても、一〇分以内なら蘇生しますから、連れて来て下さい!」


 いつの間にか現れたのは、

 たぽんっ、と揺れる突き出したお腹がチャームポイントの、栗色の髪、栗色の目の美少女。

 

そこ()がチャームポイント!?』っと思う人もいるだろうが、とにかく彼女も、ビックするほどの美少女だ。


 彼女に激励されたせいか?


「「「「「うおぉぉぉぉぉぉぉ! 勝利は我が手に!!」」」」」


 なんか、物凄く彼らはやる気、いや、殺る気だ!


 まあ、最終的には数がモノを言うと思うんだけど。


 そう思いながらも、敵なのに、なんの脈略も無いのに、ほんの少しの期待を抱いて門を開けた。

最後までお読みいただきありがとうございます!

寒かったり暑かったり、コロナだったり大変なGWですね。

皆様も体調管理には気を付けてお過ごしください。

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