表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
121/144

ダークアルサス降臨!

「きゃ~~~! ブランドさまあ~~~!」

「デイト様の不屈の精神。感服しました!」

「モス様! 私、クッキー焼いてきたんですけど……」


 さて、姉上との一戦で、一目置かれる様になったブランドたち。

 まあ中には、


「ゼフトの能無しどもは、いったいどんな卑怯な手を使ったんだ?」

「ちっ! アルサス様がいれば俺だって……」


 誰とは言わないが、彼らの活躍をやっかむ奴らもいる。

 後でシャザー男爵令息と、マンダス伯爵令息は、小一時間ほど説教しておこう。


 とにかく、一部を除いて彼らの評価は龍の滝登りだ。

 そこに、


「ブランド! デイト! モス! おっ! はよおぉぉぉぉ…………」


 手を振り、馴れ馴れしく名前を呼び駆けてくる少女に、どこからともなく飛んできたドングリが、彼女の腹部を襲い、


「ふごおぉ!」


 走り込んできた勢いのまま、くずおれながら床に転がる器用な……あれ? この娘誰だっけ?


「なんですか? イジメ? この国では可愛い、可愛い留学生をいじめる法律でもあるんですか? それに私の名前はアンネ・リゼッタです。念のため!」


 最後の言葉はかっちり僕を見て言った。

 心でも読まれたのか?


 そんな僕の横で、


「やばいやばいやばい。かぶってる! あの娘、絶対私とかぶってるって! これマズイわ! キャラ変する? それとももう一回……いやいやいや、今度裏切ったらそれこそお姉様に……あれ? それもありかも!」


 いつの間にかいたミナが、なにやらぶつくさ言ってる。

 まあ、とても話しかけられる状態じゃなさそうなので、完全にスルーの方向で、


「あ! 授業に遅れちゃう! ブランド、モネ、デイト、さあ行こう!」


 ついでに廊下にうずくまるアンネも通り過ぎようと、棒読みで先を急ぐ僕ら。

 ちなみに姉上とヒルダは僕の腕に引っ付いているので、声は掛けていない。


「ちょっと待ちなさいよ!」


 なのに、やっぱり復活して立ち上がる……。


「ねえねえ! 私こんなに悩んでるのにスルー? ちゃんと一緒に悩んでよ! 私、私これからどうキャラ変していけばいいのよう!」


 ミナにズボンのすそをつかまれた。

 そっちかよ(お前かよ)

 っとツッコむのも面倒くさいので、


「双子キャラ……とか?」


 僕なりに案を出してみたのだが、


「何言ってんですかアルサス様! 双子みたいなキャラって性格かぶっちゃいけないんですよ! 片方がツンならもう片方はユルみたいに! それぐらいちゃんと勉強しといてください!」


 こいつ、本当に何様なんだろうな。

 さらに、


「分かってない! アルサス様本当に分かって……ひっ!」


 なぜか得意げに肩をすくめて首を振るミナだが、


「あらあら? な・ん・で! 私の愛しい愛しい愛しいアルに触れているばかりか、対等に口をきいているのかしら? やはりアレをアレしてアレにしてしまいましょうか?」


「お! お姉様が、私を見てくれたわ! それにお声をかけて……ぐふっ!」


 姉上のにこやかな殺気をモロに喰らい、

 でも、

 なんだか僕らの知らない、未知の領域に踏み込んでくずおれた。


 そんな彼女に注意を向けてしまっていた僕らに、


「ふっ、ふざけんじゃないわよ! もういい! 本当はもっとネチネチとあんたたちを壊していこうと思ったけど、もうこれでお終いよ!」


 いつの間にか復活していたアンネが、どこからともなく取り出した小箱を僕らに向けた。



「これで本当にお終い! あんたらこれから地獄を……」


 得意満面に語るアンネだが、


「あらあら? えい!」

「あいたっ!」


 姉上の扇子が一閃すると、小箱を取り落とす。

 うん。演劇じゃないんだから、やるならやるでさっさとしないと……姉上が飽きるよね?

 そんな、この騒ぎに集まった生徒を含めた僕たちに、


「いや~~~~! 返して! ソレ大事なものなの! ソレでブランドたちをもう一度私の虜にして、アルサスと仲たがいさせて、彼の心の隙をついて私にメロメロにさせて、あんたや婚約者を悔しがらせるんだから!」


 本音ダダ漏れのアンネ。


 うん?

 こいつ今。

 なんて言った?


 せっかくできた僕の友達と…………。

 姉上やヒルダが認め、喜んでくれた僕たちの絆を…………。


「あらあら? これがそんなに大事なものなのですか? それはそれは……ひっ!」


 右手で掲げた小箱を奪おうとするアンネの頭を押さえ、楽しそうにしている姉上の顔が僕を見て引きつった。


「ねえ返して! ちょっと背中が物凄く寒いんですけど! そんなことより返し……」


 小箱を奪おうと、隙をうかがってたアンネが振り向き、


「ねえ君。それってどう言うことなのかな?」


 質問する僕と視線があった。

 刹那。


「ひゃ、ひゃひ!?」


 おかしな声を発し、その場にくずおれた。


「あれ? どうしたの?」


 目を見開き、視線を離さない彼女にゆっくりと近づく僕の耳朶に、


「各自、特級防衛シフトを! ジューク! 学園長及び、国王とタリスマン家に通達。全戦力を学園に集結させよ!」


 姉上の凛とした声。


「あれ? おかしいな? 姉上、それは姉上が暴走した時にする最上級の防御シフトだよ? 姉上が暴れて無いのに、なんで姉上自身がそれを知ってるの?」


 ただ疑問で聞いただけなのに、


「ア、アアアアアアアアアル。そ、そうよね! アルは、アルは何も悪くないわ」

「なに言ってんですか姉上。僕はなにも悪いことしてないですよ?」


「そ、そそそそそそそそそそそそそそそよね。アルは何もしてないわ。ほ、穂ほほほほほほほほホント、私ってばそそっかしいわね!」


 なぜか引きつった笑みを浮かべる姉上。

 まあ、それを問い質す前に……。

 僕は姉上にニコリとほほ笑み、倒れ込んでいるアンネに向きを変えた。


「あひっ! ち、ちかよら……わた、私、なななななななにも……」


 なんだろう? 寒いのかな?

 彼女が何かを言いたそうに唇を動かすけど、良く聞き取れないや。

 だから僕は、さらに彼女に近付く。

 もちろん。

 いつもの人懐っこいと言われる社交辞令スマイルでだ。


「ひっ! ひぃぃぃぃぃぃ! ち、ちか…………よら……ひゃ!」


 彼女の前まで来た僕が、腰を折り、そっと耳元で囁く。


「で? 僕とブランドたちを、姉上をどうしたいって?」


 出来るだけ優しく言ったつもりなんだけど、


「あっ……あっ……」


 ……じょぉぉぉぉぉぉぉぉ。


 よほど体調が悪いのか?

 彼女は体をガクガク震わせ、顔を新雪のように真っ白にして、失禁してしまった。


 これはマズイ。

 紳士淑女の集まるこの学園で、人通りのある廊下で、

 しかも、なぜか今は誰もかれも立ち尽して、こちらを注視している中での惨劇だ。


 僕はソレが見えないよう、彼女が隠れるように体を動かし、


「大丈夫。誰にも気付かれないよう、消しておくよ」


 彼女を安心させようと、僕が口角を上げた瞬間。


「ひゅよわ! ひょうへぇぇぇぇぇ!」


 え? どこから声出したの?

 そう思えるほどの奇声を発し、アンネが廊下を走り去っていった。

 走り去る彼女を見送りながら、

 

「ああ。やっぱデリカシー無かったかな?」


 肩を落とす僕に、


「危機は去った。特級防御シフト解除。各関係者は速やかに撤収せよ!」


 姉上の声と供に、廊下の空気が弛緩した。

 ん? もしかして訓練だったのかな?

 姉上のために構築した防御シフトを、姉上が訓練するなんて何とも言えないが……。

 まあいいか。

 訓練って大事だもんな。


 ややたどたどしく近寄ってくる姉上を、笑顔で迎えるのだが、


「あれ? そういえば彼女、僕の質問に答えて無いや。まあ、後で聞いてみよう」


 ピシッ!


 僕の独語に、なぜか再びこの場の空気が凍った。

 あれ? まだ訓練の途中だった?

最後までお読みいただきありがとうございます!

クライマックス間近ですが、作者の体調? やる気?

が、すぐれないので(コロナじゃない! っと思いたい!)

投稿が少々遅れるかもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ダークなアル、めっさ怖えぇ・・・・ お姉さまの専用の防御体制を取らざるおえないアルの実力もまた人外なのでしょうね( ; ゜Д゜) [一言] 更新、お疲れ様でした。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ