2
中二病をこじらせ、今週は風邪をこじらせた作者。
そして「風邪にはアルコール消毒じゃ!」と酔っぱらっいながらも、投稿再開です!
出来るだけ頑張りますが、毎日投稿できるかは、皆様の応援にかかっています!(なんか、脅迫っぽくてすみません)
『別に姉がいるから何?』
普通はそう思うだろう。
でも、
「これから皆さまは、城外にはびこる魔物に対抗すべく、色々な物事をこの学園で覚えていくでしょう」
檀上で姉上の歌声のように響く声。
流れるサラサラな銀髪に、透けるような色白の肌。
見る者を魅了してやまない、微笑む緋色の瞳の絶世の美女に心奪われるだろう。
『弟なんかいなくても、いいんじゃね?』
そう思うだろう。
だが……。
「――――なので、この学園に在学するうえで、一点だけ注意があります。特に女子生徒、それは…………」
眉を潜める美女の次の言葉に、この場の誰もが耳を傾けた。
「私の溺愛してやまない愛弟に、絶対、絶対、ぜ~~~~~~たい! 色目を使わないって事ですわ!」
「「「「「………………」」」」」
もちろん、何言ってんだか分からない新入学生は首を傾げるが、姉上にはそんなこと関係ないんです!
こんな弟大好き姉上を置いて、余所の学園に行けると思う?
そんな僕の自己犠牲なんて、ぶっちぎりで無視して、
「そこで、今すぐあなたたちは去勢しなさい! 女子は全員! 男子は……アルが新たな扉を開く前に、やはり去勢しましょう!」
暴走する姉上に思わず、
「なんで入学式で全員去勢しなきゃならないんですか!」
失敗した!
つい、いつもの調子でツッコんでしまった!
反射的に声を掛けてしまったのだ!
そんな僕に姉上は、とてもとても愛おしそうな視線を向け(さっきから向けていたが、さらに)、桜色の唇を嬉しそうに開いた。
「あらあら? こんなに人がいる中で私を見つけ出すなんて……やはりアルってば、私のこと大好きなのですわね!」
「うん。人は沢山いるけど、姉上物凄く高い壇上にいるから! 現在進行形で超目立ってますから! それより最初から人ごみに隠れてた僕を見つけてましたよね? ちゃんと気配遮断の魔法も使ってたんですよ!」
「もちろんそれは……『愛』ではないでしょうか?」
「うん。千歩とか万歩とか譲って、『家族愛』ってことで手を打っていい?」
「あらあらアル! やっと私と結婚する気になったのですね!」
「結婚とか誰も言って無いから! 血が繋がってるから結婚出来ないって言ってるだけだから!」
どうしよう?
勢いでこの場でツッコんでしまったが、ここの生徒。
新入学生はこれを呆然と見いるが、それ以外の二年と三年は……。
「女神様のご神託じゃ!」
「アル様を女神様に供えることが出来れば、その者が勇者じゃ!」
悪魔に魂でも売ったの?
と思えるほどの信者の集まりだった。
こらはさすがに、この国の権力者である王族にも、意見が言える強者の集団。
教師の皆様が止めるだろうと……。
「「「「「…………………………」」」」」
動きが無い。
ただの役立たずのようだ。
「「「「「女神様に貢物を! 新入生には去勢を!」」」」」
「物凄い理不尽! なんで学園に入学しただけで去勢されなきゃならないの! 物凄い勢いで貴族の数が減るよ!」
僕のツッコミはスルーし、上級生の態度を当然のように受け入れる教師たち……。
「ここはどこの邪宗教集団だよ!」
思わず吠える僕に、
「静粛に!」
姉上の凛とした声が、戸惑う新入生に今にも襲いかかろうとしていた、上級生どもを踏み止まらせた。
まあ、焚き付けたのは姉上なのだが……。
「すみません。私の言い方が雑過ぎました」
ぺこりっと素直に頭を下げる姉上。
それに対し、「我々愚鈍のモノに、頭を下げるなど恐れ多い!」とか、「私たちにお言葉を掛けて下さった!」とか、なんか物凄く過激信者みたいな言葉が行き交う。
なんとか収拾させる気なのか? いやいや、姉上に限ってそんなことは…………。
「あらあら、勢い余ってとんだ失言をしてしまいました……。今のは無しで! 皆様の学園生活が良きものであることを願い、代表の挨拶とさせていただきます!」
あれ?
なんかあの姉上が、本当に事態を収拾させた?
呆然と僕と新入生が見守る中、姉上は優雅なカテーシーで壇上を去った。
なんとか無事? に入学式が終わったのか?
なんてさすがに思えない。
なぜなら、
「「「「「イエス! ユアマジェンダ!」
姿勢を正し、訓練されたように声を合わせ、一糸乱れぬ行進で退出する上級生たち。
その影で姉上の表情から、何かを読み取り数人が姿を消し。
姉上の退場と共に、学園長が真っ青な顔で席を立ち、後を追ったからだ。
それにしても……。
(姉上、なんで学園牛耳ってるの? 教師まで取り込んで一体どこに向かってるの!)
そう、声を上げなかった自分を、物凄く褒めてあげたいと思った……。
再開記念。
風邪っぴきのお見舞い。
等々、ブクマ、評価にてお願いします。