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今回!

作者には珍しくホンワカデレデレ回です。

楽しんでいただけたら恐縮です。

「アルゥ~~~」


 猫のようにゴロゴロ喉を鳴らす姉上。

 え? もちろん僕のアバラはバキバキだよ?

 ちゃんと回復薬の飲まないとね!


 そう思っていたのだが、


「アルゥゥゥゥ~~~~。すや~~~~」


 いつの間にか、姉上が健やかな寝息を立てていた。


「え? 姉上!? 起きて! 自分の部屋で……うぐっ?」


 脇腹の痛みと姉上のホールドで動けない僕の口に、回復薬を突っ込んだのは、


「おろおろ、今日ぐらい良いではないか? 模擬戦が終わった後のこ奴は、わっちでも見ていられぬぐらいうろたえておったからのう」


 やれやれと肩をすくめるヒルダだった。


「え? 花歌交じりに魔王と対峙する姉上が?」

「ああそうじゃ。ウロウロしすぎた摩擦で…………。自分の部屋はおろか、女子寮全体が色々大変じゃったのじゃ」


 あ、うん。そこら辺は詳しく聞きたくないのでスルーした。

 それにしても、


「ありがとうヒルダ」


 この状態の姉上をここに連れて来るなんて、魔王戦より激しい攻防があったはずだ。


 それでも僕の婚約者ってだけで、面倒を掛けたヒルダに改めてお礼を言う。

 ただそれだけだったのだが、


「ぬひょ!? そ、そそそそそそんな、わっちは、ただ、義理姉上殿がうるさいから……。それに、わっちは主殿の婚約者じゃから……そんな、そんなストレートに俺を言われると……照れるのじゃ……」


 耳まで真っ赤にしたヒルダが、


「そ、そうじゃ! そ、それならば、ほ、褒美をしょ、所望しようかのう?」


 姉上をベッドに運ぶ僕に、さらに顔を赤く染めて呟く。


「ん? 良いよ。僕が出来る範囲でなら」


 腕を離さない姉上を剥そうと、四苦八苦している僕に、


「きょ、きょきょきょきょ今日は! 主殿と一緒にねたいのじゃあぁぁぁぁぁ!」


 ヒルダが爆弾発言を落とした。



「ヒルダ、大丈夫? 痛いとか苦しいとかない?」


「うむ。全然じゃ、むしろ空に浮かんでるような気分なのじゃ」


 真っ赤な顔したヒルダの要求を、僕はなんだかんだ言いながらも叶えた。


 灯りを落とした部屋の中。

 暗闇になれた僕の目には、恥ずかしそうに微笑むヒルダが映り、


「すぴ~~~~~」


 その反対側からは、僕の腕をつかんで離さない姉上の幸せそうな寝息。


「うむうむ。まったく、義理姉上殿は……あれだけ暴れて(寮を半壊させて)おいて……」


 うん。なんかヒルダの物騒な独り言を聞いた気がするが、

 きっと、もう眠いから空耳だろう。

 そう思うことにして僕は、


「改めて、ヒルダ。いつもありがとう」


 日頃言えない言葉をヒルダに向ける。


「ひょへ? ななななななな何を突然、ヤブ医者からスティキーに……」


 古代の格言『藪から棒に』と言いたかったであろうヒルダは両手を頬に添えたまま、ゴロゴロとうろたえまくり、


 ごとんっ!


 キングサイズのベッドから、転げ落ちた。


「むにゃむにゃ、ヒルダ、ざまぁ……」


 姉上は良い夢でも見ているのかな?

 助け起こそうとする僕に、姉上の腕が絡みつく。


「おろおろ、主殿酷いのじゃ。そういう言葉は、突然言われるとびっくりしてしまうじゃろ!」


 ベッドに這い上がって来たヒルダが、なぜか恨めしそうな視線を向ける。

 ただいつもの思っていることを言ったつもりなのだが……突然過ぎたのか?


 やや思う所もあるが、まあいいや。

 この際なので思ったことを全部言おう。


「ヒルダは、僕の婚約者ってだけで、知り合いもいないこの国に単身来て、いつも僕のわがままや姉上のフォローまでしてくれてるだろ? ここのところゆっくり二人で話せなかったから、今言っとこうと思ってね」


 社交辞令の笑みではなく、出来るだけ素の笑みを浮かべる僕に、


「ふぇ? しょ、しょんなとつじぇん、しょんな……」


 え? 体内の魔力が暴走したの!?


 っと思えるほど、暗闇でも分かるぐらいにヒルダの体全体が真っ赤に染まって、


 ……………………ぼんっ!


 ヒルダが爆発した!?

 いやいや、それはモノの例えだが、

 枕に顔を埋めたヒルダから、物凄い量の湯気が立ち上る。


「え? ヒルダ大丈夫?」


 ヒルダの方へ身をよじろうとした僕の腕を、


「むにゃ!? あまり調子に乗ると……むにゃむにゃ」


 聞き取れない寝言を呟く姉上が引き戻す。


 う……うん。本当に寝てるんだよね?


「…………まあ、とにかく、今日はもう寝るだけだから」


 そう呟いた刹那。


「わ、わっちもアリガトウなのじゃ! 主殿はわっちを色の付いた世界に導いてくれたのじゃ! じゃから、これぐらいなんでも無いのじゃ!」


 感極まった声で枕から顔を上げ、寝転がる僕に覆いかぶる勢いのヒルダに、


 ひゅんっ!

 ばきっ!


「きゃうん!」


 どこからともなく、ヒルダの額を撃ち抜くドングリ。


「すぴ~~~」

「いやいや、間違いなく姉上だよね? 完全に寝たふりですよね!」


 ベッドの端にくずおれるヒルダを横目に、隣で寝息を立てる姉上にツッコミを入れるのだが、


「……すぴ~~~私は熟睡してますわ。少しだけ寝相が悪いだけですわ、すぴ~~」


 説明臭い寝言をのたまわる姉上。


「いやいやいや、その寝言完全におかしいって、姉上本当は寝て無いんで…………しょ?」


 半身を起こして、本格的にツッコもうとする僕の左腕に、スッとからんでくるヒルダの腕と、半瞬遅れで感じる弾力のある双丘。


「いいのじゃ主殿。ちょっとわっちが暴走してしまっただけじゃ、義理姉上殿はちゃんと寝ておるのじゃ」

「え? なに? いつの間にヒルダと姉上って仲良くなったの?」


 いろいろツッコみたい僕なのだが、


「むにゃ~~~。今日はお世話になりましたから、特別ですわよ?」

「ふん。本来なら義理姉上殿の許可なんぞ必要ないのじゃが……そう言うことにしておこうかのう」


 なんか、いつの間にか仲良くなってる二人を色々問い質したいのだが、


「…………まあ仲良けりゃ良いのか? それに……」


 さすがに今日は僕も疲れた。

 体の力を抜き、ベッドに体を預ける。


「アル。良いお友達が出来て、良かったですわね…………あ! むにゃ~ですわ!」


 すでに寝言の域を完全に無視してる姉上の独語と、


「そうじゃの。主殿の気に入りようは、きゃつらの留学期間が終わったら、そのまま付いて行きそうなぐらいじゃ」

「いや、さすがにそこまでは……」


 そう言いながらも、

『タリスマン家には、分家のあいつを養子にして』

 なんて思ってる僕がいた。


「あらあら、アルはいつも、今までずっとわがままも言わずに我慢してきたのだから、家の事なんてお父様に丸投げしちゃえばいいのですわ。もちろん私はアルの行くとこなら、どこにでもついて行きますけど!」

「奇遇じゃのう義理姉上殿。わっちは元からそのつもりじゃ」


「あらあら? しつこい女は嫌われましてよ?」

「おろおろ? それはこっちの言う台詞じゃて!」


 二人のじゃれ合いに、思わず笑みがこぼれ、同時に肩の力が抜けた気がした。

 どうやら自分で意識しないうちに、いろんなモノを背負い込んでいたようだ。

 だから、目の慣れた暗い部屋の、見慣れた天井を見ながら、


「姉上。ヒルダ。ありがとう!」


 いろんなしがらみを振り払うよう、珍しく素直な笑顔で感謝の言葉を伝えた。


「「………………」」


 そんな僕を二人は、


「ぶはっ! アルが……」

「ぐはっ! 主殿が……」


「「………………尊い」」


 ガクリッと力を抜き、

 でも、しっかりと僕の腕をそれぞれホールドして、眠りについた。


 きっときっと、僕の知らない所でも、二人は頑張ったのだろう。

 二人の満足そうな寝顔を見て、


「うん。僕は幸せ者だ」


 身をよじり、二人のおでこに感謝のキスをして、目蓋を閉じた…………。



 追記。

 右手に美女。

 左手に美女。

 男なら誰でも憧れるシュチエーションなのだが、


 でも知ってるかい?

 両手に花(両腕ホールド)状態で寝るのって、寝返りも打てず、頬も掻けず、物凄く寝づらい事を…………。


 そして翌日。


「あらあら、おはようございま~~すですわ!」

「おろおろ、おはようなのじゃ!」


 両手に、肌つやつやでご機嫌の姉上とヒルダを伴い、目の下に隈を作った僕を見た生徒全員に、あることないこと噂されたのは、絶対僕のせいじゃないと思う!

デレ回いかがだったでしょうか?

こういう回もいいよ!

もっとこういうの書けよ!

そう思ったあなた!


ブクマや評価など、ポチッとしてくれたら増えるかもしれません!

感想もよろしくお願いします!

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