5
ついに姉弟喧嘩勃発!?
よろしくお願いします!
さてその日の放課後。
僕たちは先日、ポールと訓練で使った、学生専用訓練場に来ていた。
その訓練場の中心で、
「それでは始めましょう……あら? あらあら? なぜそちらにアルがいるのでしょうか?」
扇子を片手に待ち受けていた姉上が、ブランド、モス、デイトと一緒にいる僕に疑問の声を上げた。
「え? だって、あの場所に僕も一緒にいましたよ? 彼らとは友達だし……とうぜんでしょ?」
なんてすっとぼけた顔で答えた。
もちろん。
「うえぇぇぇぇ!? なんで? なんで今回も私なんですか!?」
審判のミル先生は、ホームルームが終わった時点で確保済みだ。
「え? え? 本当に……私が、アルと!?」
そんあミル先生の泣き言を完全に無視し、いつもなら観戦を決め込む僕の参戦に、戸惑の声を上げる姉上。
姉上がこの模擬戦をする意味は理解しているが……。
僕だって、彼らに協力したいのだ。
もちろん。
別に姉上の模擬戦する意図にも、邪魔はしない。
ただ、僕の持つ知識が、姉上にどれだけ通じるかも知りたいだけだ。
当然、ブランドたちは知っていて、
「面白いなソレ!」
ブランドは片手剣と胸鎧の軽装だが、僕の知る限り最高級の品質の装備をそろえ、
「天災とも呼ばれるシルヴァーナ様に、私とアルの知略がどこまで通じるか……興味深過ぎじゃないか!」
モスは魔術師の杖と、マリアーナみたいにこれでもかと魔力回復薬をリュックに詰め込み、
「アルに鍛えられたこの必殺の一撃を試すのに、最高の相手じゃないか!」
大剣と大盾を装備した、完全鎧に身を包むデイト。
彼らは二つ返事で協力を約束してくれたのだ。
そして、
「みんな! 私のためにがんば…………」
呼ばれてもないのに、観客席で騒ぐアンネに、
「ぎゃふんっ!」
どこからか飛んできドングリが額に命中。
断末魔の声を上げ、彼女がくずおれた。
まあ、死んではいない事を願おう。
さらに僕は戸惑いを隠せない姉上を、落ち着かせる隙を与えず、
「ミル先生、開始の合図を!」
「もう私、知りませんから! 模擬戦開始!」
模擬戦の開始を促した。
さて、僕らの戦法がどこまで姉上に通じるか。
思った以上に心を高揚させ、僕らの模擬戦が開始された。
「作戦通り、デイトは前衛でブランドと僕は後衛。モス、この先の指示は任せた!」
僕たちは午後の授業を全てさぼって考えた、対姉上用の布陣で出迎える。
「あらあら? 先頭がアルでないのなら、一人ずつ潰していけば、アルには……」
心の声ダダ漏れの姉上が、気を取り直して扇子を上段に構え、大盾に身を隠すデイトに瞬時に肉薄。
そこに、
「デイト! 僕が代わる!」
僕は地面を蹴る……。
振りをすると、
「え? アルが来るのですか?」
うろたえた姉上の、振り下ろされようとした扇子がピタリと止まる。
まあ、それでも生み出された風圧は濃縮された巨大ハリケーン級の威力で、
「ぐっ! ぬおぉぉぉぉぉぉ!」
「腰を低く! 盾をもっと突き出すように!」
「耐えろデイト! お前が耐えなければ、背後にいる民がどうなるか考えろ!」
僕とモスの激に、気合一閃。
「うおりゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
デイトが姉上の一撃未満を防ぎ切った。
エンペラーオーガ一〇体分の一撃をしのいだデイト。
やはり彼は、防御が得意のようだ。
さらに、
「僕は右から攻める!」
「え? アル!」
デイトの背後から飛び出す僕を、視線で追い掛ける姉上に、
「下がれデイト! アイスニードル!」
モスが姉上とデイトの間に、氷柱を乱射。
次々地面に刺さる氷柱に、地面から砂埃が舞い上がる。
「あらあら? 何も見えませんわね?」
姉上の視界を遮った所で、
「もらった!」
モスの魔法と囮を使って身を隠し、姉上の背後から奇襲するブランド。
その一撃を、
「あらあら?」
ブランドには意識も向けず、姉上は見えないはずなのに、僕に視線を向けたまま扇子で彼の一撃を受け止め、
さらに、
「えい!」
「ぐわぁ!」
可愛い掛け声とともに、そのままブランドを吹き飛ばした。
苦痛の声を上げたブランドは、そのまま一直線に訓練場の壁に激突するかに思えたが、
「まだまだこれぐらいじゃ!」
空中で器用に体を入れ替え、壁に着地すると、
「とりゃ!」
この前二人で考えた、飛躍の魔方陣を壁に激突する前に展開。
壁を蹴り上げるようにして、再び姉上の元に、
刹那。
「ダメだブランド!」
モスの声に反応し、地面を剣で突き差して急停止した。
なぜならブランドの目前には、
「あらあら? 少しは出来そうですわね?」
彼にカウンターを食らわせようと身構える姉上の姿。
刹那。
「今だデイト!」
「うおぉぉぉぉぉぉぉ!」
隙をついて、デイトが大盾ごと姉上に突っ込む。
だが、
「ていっ!」
姉上の扇子が一閃。
「ぬおぉぉぉぉぉぉぉ!」
その一撃で、デイトが地面を転げまわった。
そんな状況下で、
「はぁ。はぁ。さすがはアルの姉上殿。だが、勝負はこれからだ!」
扇子一つで、重歩兵並みのデイトを吹き飛ばす姉上を見ても、怯まず斬り込んでいくブランドと、
「そこはシルヴァーナ様の射程距離です! ブリザード! 三歩下がって! アースシェイク! そう! そこから仕切り直しを!」
僕が教えて無いのに、姉上の間合いを把握し、なおかつ援護魔法を飛ばすモスと、
「ぐぬうう! まだまだ!」
泥だらけのまま立ち上がり、闘志をみなぎらせ牽制を掛けるデイト。
僕もフォローしていて、姉上も本気じゃないけど、
「「「まだまだあぁぁぁぁぁ!」」」
攻めの姿勢を崩さない三人に、
「そこまで! シルヴァーナ様との模擬戦に、三分持ち堪えられましたので勝負終了、彼らに一等騎士の称号を!」
ミル先生の宣言が響いた。
あれ?
それほど姉弟喧嘩じゃなかった?
とにもかくにも、
ブクマ、感想、評価は、作者のやる気MAXオ〇ックスにつながります!
よろしくお願いします!