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ブクマ、評価ありがとうございます!
今見たら、ジャンル別で25位だった!
この調子で、トップ10に・・・・・・入るといいな。
あの後、デイトがぶっ倒れるまで勝負が続き、意気投合した僕らが夜遅くまで語り合ってしまったので、
翌日になってしまったモス・グリーンとの勝負。
「デイトはやられましたが、僕はそう簡単にいきませんよ!」
薄く笑い、メガネをクイッと持ち上げるモス。
頭脳派である彼との勝負はチェスだった。
昼休みに、軽い気持ちで食堂の端で始めた勝負だったのだが……。
「チェックメイト!」
接戦の末、僕が勝った。
のだが、
宰相の息子って聞いたから狡賢く、勝負に異議を言い出すと思った僕の耳朶に、
(個人の感想です。大陸中の宰相さんごめんなさい!)
「くっ! 私の負けだ!」
潔く負けを認めた彼の声。
防戦を得意とする彼の手は、本当に攻めづらく、強固な籠城する城のように守りが堅かった。
それに、ボーンを取られただけで、
「くっ! 私は一般の兵士すら守れない無能なのか!?」
なんて、
まるで本当の戦争を仮定しているような真剣さだった。
いつも僕の相手をしている、力でねじ伏せようとする姉上や、どんなに犠牲を払おうと最後に勝とうとする父上のような腹黒さが無い相手だった。
なので僕も、
「いや、いい勝負だった。本当に僅差だったよ。もし君がここに……」
思わず気軽に声を掛けたのだが、
「ああ! そこか! いや、実は私もそこにしようかと迷ったのだが……いや待てよ? ここに置いたら私はボーンを失わずに……」
チェス談義に花を咲かせ、最終的にはチェスの話から、先日の僕らの籠城戦での騎士の配置や民の退路まで語り合ってしまった。
え? 午後の授業?
そんなの完全にスルーするほど、彼との話は有意義だったのだ。
仕方ないよね?
ちなみに職員室に呼ばれミル先生に正直にそう言ったら、マジ泣きされたので彼との話は放課後や休日を使うことにしたのだった…………。
さらにさらに、ゼフト王国第三王子ブランドとの勝負なのだが、
「うむ。ならばアルサス殿、広範囲に雨を降らすには、やはりこの術式が……」
「いえブランド様、ここをこうした方が……」
「おう! そうか! さすがアルサス殿! 勇者の称号は伊達じゃ無いな!」
「いえ、ブランド様がここまで大がかりな魔方陣を構築した基礎があったからです」
なぜか、彼の研究していた天候魔法を煮詰めていた。
それにしても、この広範囲に効果を及ぼす魔方陣には正直驚かされた。
女にうつつを抜かし、王位継承権を剥奪されそうだと噂されている人間に、こんな事考えられるの?
そう思って話してみれば民の事を気に掛けている、もの凄く真面目な王子にしか思えない。
もしかして…………。
「…………失礼ですが、王子がここまで民の事を考えているとは思いませんでした。ああ。これで|民の心をつかむのですか?《王位継承の復権を?》 それとも飛ばされた辺境の自領だけ裕福にして軍備を整えますか?」
人気のなくなった放課後の教室。
彼の本心を知るため、僕は少々意地悪で不敬な質問をする。
無礼者と剣を抜かれる覚悟をしている僕に、
「そんなわけあるか! こんな大規模魔法使う時は、ちゃんと王の了解を得る! それに安全性が確認されたら各領土に教えるつもり……あ!」
自分の失言に気付き、乱暴に頭を掻くブランド。
「ああもう! 俺って本当に腹芸出来ないのな!…………まあ、アルサス殿になら言っても良いだろうってことで!」
激しく後悔の言葉を吐いた後。
お茶をグビッと飲んで、ニッコリ笑うブランド。
真直ぐすぎるその笑顔は、確かに腹芸には向かないだろうが、
「ここまで無能と噂された王子なら、王位を狙うなんて誰も思わないだろ?」
なんて笑う彼の笑顔は、僕にとっては好感の持てるものだった。
「アルサス殿。俺の、俺たちの噂はもう知ってるだろ?」
噂とはゼフトの学園を揺るがしたあの事件の事だろう。
「ここだけの話、俺はアレより前に王位継承権を破棄してるんだ。王なんてガラじゃないし、兄貴たちはそれなりに優秀だからな」
頭を掻きながら、馴れ馴れしくというか、自然な口調で話し始めたブランド。
「それに、そんな俺を王にして甘い汁を吸おうとした奴らを、大量にあぶり出し、兄貴たちと粛清出来たからな」
え? え? それってもしかして……。
「ああ。国の膿を出すために、一芝居うったのさ!」
呆然とする僕の顔を見て悪戯が成功した子供のように、ブランドが笑った。
「うん? でも膿を出すためだからって、落ちた信頼はどう取り戻すの?」
確かに効率のよいやり方だが、いくら芝居と言われても貴族って奴らはそんなに簡単に良い噂は信じない。
困惑する僕に、
「え? 誤解されたままでも良いだろ? さっきも言ったが俺、王位に興味ないし」
ここまで俺の計算通りと笑う彼。
「俺はこの留学が終わったら辺境の領主になるつもりだ。国から受けたアルサス殿や姉上様を誘惑するって言う任務は、もちろん失敗で終わらせるつもりだったんだが……アルサス殿には興味が湧いた。どうだ? 俺と共に辺境の地を城下町以上に発展させてみないか? もちろん軍備強化とか戦争とかは無しの方向でだぞ」
冗談とも本気ともつかない彼の言葉に、思わず息を飲む。
だって、
彼の向かう辺境の地の候補って、本当に気候も厳しい土地で……。
それを、自分の知識と多少の財力だけで発展させるなんて…………。
最高に面白いに決まってるじゃないか!
突然生まれた制御できない感情で、言葉が出ない僕に、
「唯一の計算違いは、思わずぽろっと計画を漏らしちまったモスとデイトと、俺たちの婚約者が、『面白そうだ』って乗っかっちまったことかな?」
途端に苦い顔をするブランド。
「つまり、初めからそのつもりで騒ぎを起こしたのですか? もしかしてアンネ様も?」
僕の影が彼らの正体が見破れなかったのだ。
いつもギャーギャー騒いでるだけに見える彼女も、本当は……。
「うん? アンネは何も知らん。ただ、王族である俺に色仕掛け仕掛けてきたんで利用しただけ、まあ、不敬罪で打ち首になるよりこれぐらいの罰の方が良いだろ? 所で……」
がははと笑うブランドが、一瞬にして緊張した面持ちになった。
「え? どしたんですかブランド様?」
おいおいまだなんかびっくり箱みたいな話するのか?
なんて心の準備をする僕に、
「なあ、その……なんだ。アルサス殿はもうデイトもモスも様付で呼んでないのだろ? それなら俺も、ブランドと呼び捨てで対等に話してはもらえないだろうか?」
どこか自信なさげに視線を彷徨わせポリポリと頬をかく彼を見て、なんだかくすぐったい気持ちになった。
「え? でもあなたは他国の王族で……」
自分の国の王族が呼び捨てなんだから良いんじゃね?
そうも思うが、僕のなんかでは奴と彼とでは格が違うのだ!
でも……。
「ダメだろうか?」
彼の乞うような視線に、
「分かりまし…………分かったよブランド。それじゃ公の場じゃない時はそれで!」
「おう! よろしくたのむぞアルサス!」
「あ! 僕の事はアルって呼んでくれ」
「分かったアル!」
すでに日の光も無い教室の一角で、
僕とブランドは、どちらからともなく手を出し合い、
硬い硬い握手を交わしたのであった…………。
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