最終章2:なんでこうなった?
ご無沙汰してます岸根です!
世の中コロナコロナで大変ですね。
そこの外出自粛しているあなたも、外出しているあなたも!
そんなあなたたち!
暇つぶしにこんな作品はいかがでしょう?
いろんな意味でボロボロになったポールが実家に強制送還され、
「……私の! ウンディーネちゃんは! 私のモノなんだから! 私の魔力だけ食べてればいいのよ!」
っと、モノ欲しそうにヒルダを熱っぽい瞳で見つめるウンディーネに、目の下に隈を作ってまで魔力を与えるカナリアが、なぜかまだこの国にいる教室で、
「おっ! はようざいま~~~~す!」
ゼフト王国の留学生。
アンネ・リゼッタ男爵令嬢は、僕が席に着いた途端、元気に駆け寄りにこやかに挨拶をしてきた。
「おはようございますリゼッタ様。でも、ゼフト王国じゃどうだかわらないけど、この国じゃ自分より身分の高い人に、下位の者から話しかけちゃいけない、暗黙のルールが……」
ひまわりのように笑い掛ける彼女に、僕はこの国のルールを話そうとするが、
「え? あ! いっけな~~~い! それブランド君にも言われてたんだ! でもでも! 挨拶って大切でしょ? それに私、最近男爵家に引き取られた平民だし……そんな所もアルサス君に教えてもらいたいな?」
人の話聞いてたか?
それにいきなり侯爵家の僕を君付け?
ツッコミどころ満載の彼女は、僕が座る机の前で膝を折り、机に顎を乗せる形で僕を見上げた。
『うわっ。これ、ミナがセツナたちにやってたやつだ!』
思わず引きつりそうになる頬を、なんとか押さえ、
「うん。それなら自国で覚えてから留学しようか?」
『そんな礼儀も習ってないなら、さっさと国に帰れ!』
っと、かなりスパイスを利かせた僕の言葉に、
「うんもう! 私は、アルサス君に教えてもらいたいんだぞ!」
ぷっくり頬を膨らませアザと可愛いと呼ばれる仕草で、彼女が立ち上がり僕の頬を、その白く細い指先でつつこうとした。
刹那!
ぽきっ!
「え? ふぎゃあぁぁぁぁぁぁ! 指が! 私の指があぁぁぁぁぁ!」
およそ、可愛いから真逆の位置にある表情で、右手を押さえて床でのたうち回るアンネ。
僕の頬にたどり着く前に、彼女の指が間接とは真逆に曲がったからだ。
まあ、当然のことながら、
「あらあらアル。高貴で崇高でエーデルなあなたの頬に虫が止まりそうでしたわ!」
口元を扇子で隠し、いつの間にか僕の隣で静かに微笑んでいる姉上が犯人だ。
「いたあぁぁぁぁ! 折れてる! これ折れてるって!」
三日間転校生が来なくて(もしかして最長記録?)なんて話している、同級生たちの和んだ会話しか聞こえなかった教室の床で、曲がってはいけない方向に向いた指を掲げて叫び続けるアンネ。
そんな彼女の叫びを耳朶に気ながらも、一切そちらに視線を向けず僕を見つめる姉上が、
「あらあら? ずいぶん騒がしいですわね?」
っとパチンッと指を鳴らすと、
「グビグビ! はい! 治癒!」
背後に控えていたマリアーナが、アンネの指を即座に治癒した。
うん?
聖女と呼ばれる彼女が、たかが治癒の呪文で魔力回復薬が必要か?
なんて思った僕に、
「うぷっ! やっぱりこれがないと……」
聞いてはいけない聖女の囁き。
……どうやら彼女は、確実に回復薬の道を突き進んでいるようだ。
「それにしても……。強硬策の次は懐柔策ですか」
建前に疲れ、僕は眉間を指先でもみほぐす。
ゼフト王国。
主に商業で成り立つ商業国家で、くりっとした琥珀色した瞳とゆるふわのピンクゴールドの髪の彼女は、そこの男爵令嬢だ。
ジュークの調べによると、胸はまな板(すでに比喩を使うのも面倒くさくなった)だが、小動物のようにか弱い態度で庇護欲をそそり、数々の眉目秀麗で将来を有望視されていた要人を誑し込み、王国を混乱させた傾国の少女。
どうやら国を騒がした罪で、今回の任務に強制的につかされたようだ。
しかも、本人が持つ魅了の魔法のほかに、僕を落とすようにゼフト商業国王からチャーム関係のアイテムや魔法をたくさん持たされているなんて報告もある。
今回同行している、
ゼフト王国の第三王子のブランド・ゴールド。
宰相の息子のモス・グリーン。
騎士団長の息子のデイト・パープルは、ある意味彼女の被害者で、傾国に加担した加害者でもあった。
きっと彼らは罪の軽減をエサに、姉上を落とすためここに来ているのだろう。
まあ、僕の心が微塵も動かない少女に懸想するレベルの奴らに、姉上の心が動かせるとは思えないが……。
そうこうしているうちに、件の三人がアンネに駆け寄って来るのだが、
「アンネ大丈夫か!」
「我が最愛なアンネになんて事を!」
「貴様! いくら他国の淑女と言えども、これは見過ごせないぞ!」
ブランド、モス、デイトの三人が、なんか感情のこもらない口調で、口説くどころか僕らを睨みつけてた。
え? こいつらまだ、魅了に掛かったままじゃね?
ゼフトって、そんなハンパな奴ら送って来たの?
思わず頭を抱える僕に、
「止めて皆! 大丈夫だから! 私のために争わないで!」
アンネの芝居がかった声が響き、
「「「アンネ! やはり君は天使! いや女神のように優しいのだな!」」」
ゼフトの転校生。
いやもう三バカでいいか? が感涙の涙を流す。
「なんだろう? 私、どうしてもあの娘好きになれないのよね?」
彼らの三文芝居を見て、ポツリとミナが呟いた。
これが噂に聞く同族嫌悪なのだろうが、それを言ってギャーギャー騒がれるのも疲れるので、僕はその言葉を飲み込んだ。
それよりなにより、
彼らの殺気が僕に向かないように行動しなくちゃならない。
なにせ姉上は、自分に殺気が向けられるのには寛容だが、僕に向けられる殺気には人一倍敏感で容赦が無いのだから……。
なので僕は、彼らを調べた報告書を思い返し、
「そう言えば君たちって……」
営業スマイルを顔に張り付け、言葉巧みにおだて透かし…………。
気が付けば、なぜか彼らの得意分野で対戦することになっていた。
最後までお読みいただきありがとうございます!
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時期ネタですみませんが、みなさん健康管理には十分気を付け、
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