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ちょっと長めですが、最終章1完結です!

「さて、それじゃあ、約束を守ってもらおうか?」


 瀕死のポールを、マリアーナがたぽんっと治し、彼へのお仕置きを始めた。


「ふん。こんな役に立たないトカゲなんざ、貴様にくれてやるよ!」


 前歯もアバラも完治した途端、ポールの強気も復活したようだ。


 あらあら?

 どうやら彼は、まだ真実がわかってないようだ。

 これは親切丁寧に教えてやらなければ。

 だから僕は、紳士的に、ニッコリと笑ってこう言ってやった。


「え? 誰がお前の火トカゲよこせって言った? 僕は守護精霊をよこせって言ったんだ。だ・か・ら、お前の国の四大精霊をよこせよ。ああ、もちろん僕は優しいから、全部なんて言わないよ。お前のパパが契約している、イフリートだけでいいよ!」


「はあ? そんなの……できるわけ……はっ!」


 ポールはほほ笑む僕をにらみつけるが、サラマンダーがコクリッとうなずくのを見て顔を蒼白に染めていく。


「あれ? 精霊に誓った勝負なのに約束を保護するの? 僕はよく知らないんだけど、それってシルバニアじゃまずんじゃない?」


 本当は知ってる。

 かの国では精霊の名の元におこなった勝負は絶対。

 それを破った者は精霊の怒りを買い、精霊の裏切り者と呼ばれ、かの地から追放ってことも。

 僕も本当は穏便に済ませたかったんだけど……。

 セツナへのオイタはともかく、姉上の暴言はダメだよね?


「で? どうするの? 約束を守るの? それとも…………」


 さらに追い込む僕に、


「くっ……カナリア……」


 最後の望みとばかりに、ポールが同郷の者(カナリア)に助けを求めるのだが、


「……私は止めた。でも、勝負を受けたのはあなた。……それを私にどうしろと?」


 唯一の味方(シルバニアの仲間)だと思われたカナリアに、瞬時に切り捨てられる可哀想なポール。


 え? 僕だってちゃんと慈悲の心は持ってるよ。

 塩をかけられたナメクジに『カワウソ!』って思うぐらいにはね。

 もちろん塩をかけたのは僕だけどね!


 さて、この喧嘩の落としどころだが、

 まあセツナも関係者(被害者)ってことで、王族に丸投げ(尻拭い)をなすりつけようとした僕に、


「……はあぁぁぁ。しょうがない。アルサス様これを」


 深い深いため息をついた後。

 同郷であるポールを腐臭漂う生ごみのように見下したカナリアが、まるで王族にでもするような綺麗な礼で膝を折り、一枚の手紙を差し出してきた。


 差出人はボルド・ニューマ。

 シルバニア四代最高評議長その人からだ。

 その内容は…………。


「…………はあ。なんだ。あんたら、最初から僕らを手の平で踊らせる気満々だったの?」


 手紙の内容は要約するとこうだった。


『この手紙をあなたが読んでいるということは、我が息子が多大なる迷惑を掛けているのでしょう。我が息子の傲慢さに謝罪を、彼の罰は廃嫡という形を取ります。だから、シルバニアにはシュタイン王国に一切敵意はありません! 謝礼はこのぐらい払いますので、どうか穏便にして下さい!』


 っと、手紙の最後に結構な金額が書かれていた。


「へえ、なるほど……」

「……どうでしょうか?」


 僕をうかがう表情を見る限り、彼女も内容は知ってそうだ。

 なので僕はニッコリ笑って、


「シルバニアとしてはおつむの足りない乱暴者が、なんの間違いか精霊の加護を受けちゃったから、表立って裁けない。

 だからポール(やんちゃ者)を留学させて、上手くいけばそれで良し、悪かったら切り捨てる。そんなシッポ切りみたいな手段かな? そして君がその監視役?」

「……そ、そんなことは……」


 シラを切ろうとするカナリアだが、無表情を装う彼女が一瞬だけ視線を宙に浮かせたのを、僕が見落とすはずもなく、


「こんなはした金じゃ話になんないよ。せめて倍は支払ってもらおうか?」


 彼女に追い打ちをかけた。

 大丈夫。

 ちゃんとジュークに調べさせ、かの国の最高評議長の平均資産は知っている。

 ごねればあと三倍は行けるはずだ。


「……いえ、あの、それは、さすがに…………」


「じゃあ、やはり宣言通りシルバニアの守護精霊貰おうかな?」


 なんて僕が笑うと、


「……いえいえ、さすがにそれは……守護精霊様の意向もありますし」


 無表情の裏で、冷や汗だらだらの彼女。

 当然だ。

 シルバニアを守護する四大精霊はかの国の生命線そのものだし、四代最高評議長たちも一枚岩じゃないことぐらい調べはついてる。

 そんな不安定な国で、もし、四大精霊のうちの一角がいなくなれば……。


 まあ、残りの三人がトップの座を奪い合い、

 良くて内戦。

 悪けりゃその隙を突かれて、シルバニアは地図から消えるだろう。


「……あの……その……やはり……」


 無表情の仮面を外し、年相応にオロオロしだすカナリア。


 まあ、別に彼女には酷い事されたわけじゃないし泣かせるまでもないと、僕としてはこれぐらいで許してあげようかな? なんて思ったのだが、


「あらあら? 彼の主は喜んでと言ってましてよ」


 火トカゲを撫でる姉上と、


「おろおろ、お主の主も良いと申すか? よいぞよいぞ、わっちの魔力は濃密で美味かろう?」


 いつの間にか、彼女の守護精霊であるウンディーネに餌付け(魔力を与える)するヒルダの姿。

「……いやあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 私のウンディーネちゃんがぁぁぁぁぁぁ!」


 僕の意図しない所で、彼女は泣かされていた。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁぁ! 止めて! それ以上魔力を与えないで! ウンディーネちゃんもそんなうっとりと魔力を受け取らないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 すでに無表情キャラを脱ぎ捨てたカナリアが、だくだくと涙を流してウンディーネにすがりついていた。


「まあ、彼女の心が折れてからの方が、交渉はやりやすいか」


 なんて僕は、


「え? これって減給? いやいや、私何もしてないから! 何も見て無いから!」


 呆然と呟きながら灰と化してハラハラと崩れ落ちるミル先生を見事にスルーして、

 姉上とヒルダの楽しそうな姿を眺めていた。



 それから、

 タリスマン家はシルバニアからは迷惑料として、手紙に書かれていた額の三倍を貰い我が領地から輸出する全ての関税を大幅カットさせた。

 さらに、ポールは自国経由からの廃嫡されたのに伴い、

 彼を守護していた火トカゲが、なぜか僕に懐いて離れなくなった。

 さすがにこれはマズイだろうとその旨をシルバニアに問うと、


『勇者様の御心のままに』


 っと、好きにして良いと言われた。

 いまでは彼? 彼女? は、「魔力を食べる姿が愛らしい!」っと、クラスの人気者になった。

最後までお読みいただきありがとうございます!

少々時間を空けさせていただき、

最終章2を投稿予定です。

引き続き応援、ブクマ、感想、評価をよろしくお願いします!

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