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ざまあ第一弾です。
よろしくお願いします。
それからの三〇分間の出来事は……。
まあ、ねえ。
「何してやがる火トカゲ! 早く俺を……がふゅっ!」
出会った当初からうるさかった口に、骨が折れない程度の蹴りをお見舞いし言葉を封じてからの、彼の根性は見ものだった。
頼みの綱である火トカゲを使わず、何度も剣で打ちのめされ(もちろん刃が付いてない場所で)、殴られ蹴られても、そのたびに回復薬を飲み、泣きながら向かってきたのだ。
まあ火トカゲの加護が破られた今、火矢を撃つたびに僕の盾になっているのだから、どんなバカでも使わないだろう。
そして、奴の根性の裏には、
『降参? そんなこと言おうとした瞬間に、君の喉をつぶすよ?』
とか、
『足が折れて動けない? じゃあさっさと回復薬飲まないとじゃないと……ねえ?』
とか、
『さっさと向かってこないと、アバラバキバキにして運が悪けりゃ肺とか心臓に刺さっちゃうよ?』
とか、誰にも聞こえないように呟き、奴のやる気を奮い立たせていた。
彼の根性に感動したのか、
「ひひょはへ! なんひょかひろ!」
(火トカゲ、なんとかしろ!)
呂律の回らないポールに、
「…………けっ!」
彼の頑張りを讃えるように、生暖かい視線を向ける火トカゲ。
まあ見様によっては、『え? 別に直接命令されてないから動けないよ? 俺を動かせたかったらちゃんと命令しろよ!』なんて言ってるように見えなくもない。
のだが、
「……なんかもう、飽きた」
そう、ほぼ無抵抗なポールを、ただ殴る蹴るするのも正直飽きてしまった。
なので、もういいかな?
「もふいいふぇすひょへ? もふ、こうひゃんひへ、いいへふほね?」
きっと『もう降参してもいいですよね?』って言ってるのだろうポールを放置。
どうやら回復するたびに不意を突かれて降参宣言されないように、歯を折っていたので話し方がおかしくなっちゃったかな?
まあ、僕の回復薬はまだ残ってるけど、奴の心も砕け散って手持ちの回復薬も尽きたみたいだし、
「ミナ先生もなんだか顔真っ白にしてるし……もういいかな」
僕がつぶやいた瞬間、
「こうひゃんひまふ! もうこうひゃんでふ!」
(降参します! もう降参です!)
ポールが這いずりながらミナ先生の元へ。
そして、
「それまで! 勝者アルサス様!」
ミナ先生が高らかに僕の勝利を宣言する横で、マリアーナがポールの治療にあたる。
その吹けば飛びそうな弱っちい姿に、
「あれ? 僕、ちょっとやりすぎた?」
なんてほんのちょっとだけ後悔しようとした僕に、
「きさま! アルサスきさま! これで済んだと思うなよ! 絶対、ぜ~~~~~ったい復讐してやる! 覚えとけよ!」
なんて、今どきの三下悪役でも言いそうもない暴言を吐くポール。
どうやら彼は知らないらしい。
まだ僕のターンであることに…………。
最後までお読みいただきありがとうございます!
次回、心に来るざまあの予定です。