最終章1:懲りない人々
パソコンがぶっ壊れて一か月。
なんかの気まぐれで電源入った!
なのでどこまでいけるか分からないけど、頑張って更新します!
「はいぃぃぃぃ! 毎日恒例的な? 転校生の紹介です!」
ミナ先生が、すでに悟りを開いたと思われる光のない瞳を、宙に浮かせた。
まあしょうがないよね。
だって非公式だけど、魔王とその四天王を倒した勇者一行がこの国にいるんだもの。
「えっと、今回はスペシャルで、ななななんと! 三つの隣国からのお友達です!」
そりゃあ、わよくばその戦力を取り込みたいよね。
「それでは入ってきて下さい!」
先生の声とともに、ぞろぞろと入ってくる転校生たち。
「はい! まずは宗教大国ロンギヌスの教皇様であらせられますラインハルト様!」
「あはは、ミナ先生。ここでは私はただの留学生です。様はいりませんよ。皆様も私のことは気軽にラインハルトと呼んでください」
にこやかにあいさつしたのは、肩の所で切り揃えたサラサラの金髪に青い瞳に笑みを浮かべた、若干一七歳でロンギヌス教皇まで上り詰めた天才ラインハルト。
噂通りの爽やかイケメンで、なんかミナ先生も、
「若いイケメンにほほ笑まれちゃった!」
なんて目をハートにして、イヤイヤと腰をくねらせてる始末。
「ごほん。続いてシルバニア共和国からお越しの、四代最高議長のご子息。ポール・ニューマ様と同じく四代最高議長のご息女。カナリア・オスマン様です」
「……よろしく」
正気を取り直したミナ先生に紹介されたのは、エメラルドの瞳の清水のような水色の髪を揺らした、カナリアがすっと辞儀をするすぐ横で、
「…………」
目つきの悪い赤目と赤い短髪のポールは、何かを探すように、どこか爬虫類を思わせる、粘着質な視線を巡らせ無言を通した。
「えっと……。さ、さてお次はゼフト王国から起こしの、第三王子のブランド・ゴールド様と宰相様のご子息のモス・グリーン様と騎士団長ご子息のデイト・パープル様、最後に男爵令嬢のアンネ・リゼッタ様です!」
「ずいぶん団体さんで来たんな~」
なんて独り言ちる僕に、なぜかギラリッ! と視線を向けたアンネが、
「アンネです! つい半年前に男爵令嬢になったので、貴族社会には疎いですが、よろしくお願いします!」
完全に僕に向かってペコリとお辞儀した。
途端に僕に向けられる、彼女を守るように背後に並ぶブランド、モス、デイトの殺気。
なのだが、
「ぐはっ!」
「うぎゃっ!」
「ぶおっ!」
三人は突然腹を押さえてうずくまる。
「あらあら? ゼフトの者はしつけがなっていないですわね?」
「おろおろ? そうじゃの。平和な学び舎で、あのような殺気を放つなど、無粋もいいところじゃ」
どうやら三人は、いつもの行いを高い棚に上げた姉上のドングリと、ヒルダの電撃を腹に食らったようだ。
うん? 平和な学び舎ってどこのこと?
もちろん。
この国で他国の要人に傷を負わせることなんて大問題なのだが、
「三人とも、この国に留学するための注意事項読みましたか? 五体満足で国に帰りたかったら、むやみやたらとアルサス君に殺気を向けたらダメですよ!」
なんて、ミナ先生に怒られてた。
僕が言うのもなんだが、この国、いや、この大陸本当に大丈夫か?
思わず大陸の行く末を思う僕の耳に、
「う~~ん。ゼフト王国って確か、鉱山が多くあるのよね。そこから採れる石はどれも大粒で見事だなんて聞いたことあるのよね…………そこの王子か宰相か、騎士団長の息子……は脳筋そうだから無いわね」
なんて、ミナの値踏みを始める独り言。
「おいミナ? 何か怪しいことつぶやいてませんか? そんな国の奴らよりもここに! 王族一の美男子がいるだろ!?」
ミナに必死でアピールするセツナ。
それにしても、
そ・ん・な。なんて言われた国の人間は、面白くないよね?
まあ、それは後でフォローしよう。
そう思って矢先。
「おいお前、俺と勝負しろ!」
なんか知らんけど、いつの間にか僕の机の前まで来ていた、シルバニアのポールに喧嘩を売られた?
しかも!
「俺がお前に勝ったら、勇者の称号とお前の姉をもらう! もしお前が勝ったら……そうだな。俺がお前を勇者と認めてやってもいい」
「え? 普通に断るけど?」
「はあぁぁぁぁ? なんでだ? なんで俺との勝負を受けない?」
こちらに一切うまみの無い勝負に、なんでわざわざ乗る必要があるの?
身分はともかく、なんでもう少しまっとうな奴が留学してこないのだ?
僕は至極当たり前の返答をしたつもりなのだが、
「ははああん。やはり貴様、ハリボテ勇者なん……!!」
ポールの言葉が途中で遮られた。
こいつ学習能力ってもんがないのか?
彼はゼフト王国の三人と同じ末路に…………。
カンッ!
ならず、
姉上が放ったドングリは、彼の腹部に到達する前に何かにはじかれ、床に転がった。
え? 姉上の指弾が外れた?
いや、何かの力ではじかれた?
思わず彼の姿をジッと見ると、
なにやら彼を守るように、半透明な赤いベールが見えた。
ああ。そういえばシルバニアって…………。
「はっ! なにしたんですかシルヴァーナ様? 俺はそこでうずくまってるアホとは違うんだよ! なにせ俺には……」
「……ポール。無駄に力ひけらかすの、良くない。おじ様にも、きつく言われた」
ポールの背後からいつの間にか現れた少女カナリアが、彼の制服の袖を軽く引っ張る。
するとどうだろう。
「……………………ちぇっ。わかったよ。じゃあ俺との勝負を受けるんでいいんだよな?」
おとなしく引き下がるかと思ったら、ちゃっかり勝負の約束を確定しようとする。
「いやいややらないよ! 別に君に勇者と認めてもらえなくても、僕は全然かまわないし……それに勇者の称号はともかく、なんで姉上まで賭けなきゃならないの? 姉上は景品じゃないんだよ?」
それでももし姉上を賭けるならシルバニア共和国の三分二ぐらいベットしてもらわなきゃ、割に合わないと思うんだけど?
「このクソガキ! 黙って聞いてりゃ言いたいこと言いやがって!」
「うん。君、さっきから黙ってないよね? それともキャンキャン躾のなってない犬みたいに吠えるのがシルバニアではそう言うのかな? いや、それは僕も不勉強だったな。今度家に来る外交官にでも聞いてみよう」
別に怒ってるわけじゃないよ。
でも、まあ、例え外国の要人でも家族を景品扱いする奴相手に、友好的である必要ってないよね?
「ぐぬぬぬぬぬ……き、貴様!」
教室の生徒全員の嘲笑を受け、真っ赤なリンゴのように茹で上がった顔のポールに、僕は座ったままニッコリほほ笑んでやった。
(さて、どう出るかな?)
僕は制服のポケットにある非常用の全回復薬の個数を指で確認するのだが、
「あらあら? こんな人が最高議長のご子息だなんて、シルバニアって野蛮な国なのかしら? それならタリスマン家でかの国に輸出しているあれもこれも、輸出を止めてしまいましょうか?」
「そうじゃの。わっちの国でも魔法の技術提供は考えるかのう? なにせ魔法とは知性と理性と伴わなくては、ただの暴力に成り下がってしまうのじゃからのう」
僕の両脇に立つ姉上とヒルダが、止めとばかりに笑みを浮かべた。
(うわ。これ、さすがに煽りすぎじゃね?)
自分の事は高い高い棚に上げて、脳内で冷や汗をかく僕だが、
「……ポール。これはいろんな意味で不利です。それでも無理を押し通そうとするなら…………しますよ」
最後の言葉は聞こえなかったが、ポールはカナリアの言葉にぴくんっと反応し、
「ちっ。覚えてろよ!」
完全にモブ悪役の捨て台詞吐いて踵を返した。
「はいはい! 仲良くするのは後で。授業を始めますよ!」
空気を読んだのか、全く読んでないのか?
ここまでのやり取りを全く無視し、
ナミ先生が、やや投げやりに聞こえる声で授業の開始を宣言した。
ある意味、彼女がこの教室一番の大物かもしれない。
さあ、ついに始まりました最終章!
え? 最終話だったはず?
そんなこと、書いたけど言ってない!
すみません、調子に乗りました。
そんなこんなで、パソコンの電源が入る限り更新します!
応援よろしくお願いします!