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「……わしは本当の立役者と聞いたんだが……。本当にお前は、それが勇者だと申すか?」
最後の優しさなのだろう。
国王が半ば諦めた視線で再度問うが、
「そんなことより王様! シルヴァーナ様酷いんです! 私に王子に近寄るなって言って、ノートや教科書を破ったりあげくに階段から突き落としたり……」
ミナの言葉で四散した。
それにしても、こいつら本当に現実を見ようとしない。
「ふん。そんな普通の令嬢がするような嫌がらせ、シルが……シルヴァーナ嬢がするはずなかろう? この惨状を数分で出来る彼女が本気を出せば、ノートなど破ると塵にかえり、階段から突き落としたのなら、確実にそなたの半身は床にのめり込んでいただろうよ、なぜなら彼女は……トウラとアシャンテを、たった一人で救った英雄なのだからな」
一部を除き誰も驚かない。
この場の誰もが知ってる話だからだ。
そもそも教科書に真実が書かれてないのは、
『あらあら、教科書に私の名が載るなんて嫌ですわ。そんな事する国なら、いっそのこと……』
なんて姉上が言ったからだ。
なのに、
「え? うそ! 王子、知ってました?」
ミナの問いに、やはりバカ王子は無言で首を横に振った。
「ああ! ホントにもう……シルヴァーナ嬢。もう第一王子は廃嫡する」
痺れをきらしたこの国の頂点に立つ国王が、疲れ切った表情で言い放ち、姉上に向かって頭を下げた。
さらに、
「そなたの婚約者には少々若いが、気性の大人しい第二王子のルーカスとする。どうか今までどおり、王族の婚約者をして、我が国に……」
頭を上げ、ニコリと笑う国王を前に、
「あらあら? それでは約束が違いますわよね?」
にこやかにほほ笑んでるのになぜか姉上の背後には、ゴゴゴッて噴火前の火山のような効果音がはっきり見えた。
さらに姉上は、カツカツと国王に歩み寄り、ぐっと胸ぐらをつかみ揺さぶり始めた。
「あなた、言いましたわよね? この婚約が、王族の方から破棄されたら、アノ法律を通してくださるって!」
なぜそこまで姉上が怒っているのか分からないが、さすがにやりすぎだと僕を含めた数人の護衛が動き出した。
そして、次の姉上の言葉で固まった。
「この婚約が破棄されたら、『血を分けた弟と姉でも、愛し合ってるなら結婚しても良いよ!』って法律を通して下さるって!」
……………………………………。
「ねえ。王族との婚約の対価に、なにバカ言ってんの? それに、なんでそれを了承したの? バカなの? この国の貴族って全員バカばっかなの!」
堪えきれずに王族批判を叫んだ僕は、全然悪くないと思う。
最後までお読みいただきありがとうございます。
酔っぱらいの思いつきで始めた作品で、五話ぐらいで終わりにしようと思っていましたが、
皆様のたくさんの応援により、調子に乗ってここまで長引きました。
さらに作者は調子に乗り、番外編とか、続編なども考えています。
まだ、続きにしようか新作として投稿しようか迷っているので、この作品は一時完結にさせていただきます。
最後に、短い間でしたが、応援いただきありがとうございました。
これからもちょくちょく投稿する予定ですので、どこかで岸根の作品を見かけましたら、
応援ほど、よろしくお願いします。