武器に関しての五話
「じゃあ、やってみてくれ」
俺が持っているのは腕くらいの長さのある銃。
ポンプアクション・ショットガンという、ショットガンと言えば、という形をしている銃だ。
フォアエンドという銃身の下にあるスライドできる部品を手前にスライド。
そうして、引き金を引くと、
ドゴン!
轟音が響く。
現実で聞いたのなら、確実に耳に支障をきたすレベルなのだが、ゲームであるここだと、耳栓をしていなくても支障はない。
「おぉ、初めてなのに簡単に撃ってくれるな」
「………………」
ジカさんから銃のラインナップを見せてもらい、ある程度話を聞いて、実際に使ってみたいと言ったら、ここに連れてきてもらった。
何も無く、荒野だけが続くフィールド。
名前は、【修練場】
ここで出来ることは、武器の消費と消耗なく使用すること、更に何種類かの案山子の出現、死亡無し。
まぁ、詰まるところがただの武器練習場所だ。
「ん?何か言いたいことがある、みたいな感じだな」
「いや、別に、はい」
言いたいことはあった。
この銃……リアル過ぎないか?
前世の記憶にある銃火器と、殆ど同じだ。
重さも、衝撃も、引き金の軽さも、光沢も、質感も。
記憶の中……しかも前世、ってだけでしかないけど、全てが同じだ。
だけど、そんなこと言っても、信じてはもらえない。
俺はその言葉を飲み込み、
「結構衝撃来ますねぇ」
「だろ、なんてったってその銃、実式だからな」
実式。
武器の種類の一つで、実際にリアルの知識を使って作った武器のことを指す。
「うーん、ポンプアクションが単純な構造してるからって、作れるものなんですか?」
「それに関しては、近代系だけは、虚式から実式に改造することが出来るからな」
虚式。
知識を使わずに、ゲームシステムによって作られた武器のことを指す。
実式と虚式。
この2つにはメリットデメリットがある。
実式のメリットは、単純な火力強化。
重み、ダメージなど、地力が変わってくるらしい。
デメリットは、特殊な素材を使っての追加効果の付与がほぼ出来ない点。
「ほい、虚式」
先ほどより金属部分が赤い光沢を含んでいるショットガンを渡される。
俺は案山子を先ほど出してズタズタにしたものの隣に配置する。
スパンっ!
「えっ?」
呆気に取られてしまった。
さっきのものと比べると、モデルガンのような衝撃。
まぁ、高いハードルだった分誇張かもしれないが、本当にモデルガンくらいの衝撃しか感じなかった。
「まぁ、分かるわ。
でも、見てみ」
俺は銃をぼーっと見ていると、ジカさんが、俺の撃った案山子を指さす。
「うわぉ」
そこには、燃える案山子があった。
「ま、これで分かったとは思うが、虚式は虚式で色々とやりがいがある」
虚式のメリットは、ファンタジー属性の付与。
さらに衝撃軽減とかもしてくれるので、使いやすい。
デメリットは、基礎能力が弱い。
地力の分を追加効果で補ってはいるので、いい具合に二つが釣り合っているのだろう。
「だけど、実式の方がいいですね」
「おっ、珍しいな、実式派か」
なんというか、重みがしっくり来ない。
虚式は虚式で使い用がありそうなんだが、なんとなくコレジャナイ感がある。
「それだと、今のそれが攻撃力が一番高いぞ」
「ちなみに、ショットガン以外に実式って何があるんですか?」
「あぁ、実式に関しては、虚式からの改造品が多い。
けど、その虚式からの改造にも、ある程度のスキルとプレイヤースキルが必要だ。
後、単純に人気がない」
だからほとんど取り扱っていなくて、この俺に貸してくれたのが、一番の出来のものだと教えてくれた。
「正直、実式より虚式の方がいい武器を作りやすいんだ」
「素材がよければいいですもんね」
虚式は、特殊な素材を使えばいいため、素材があれば簡単に出来る。
しかし、実式には特殊な素材を使うと不具合が起こることが多いらしく、鍛冶プレイヤーの中では人気のない扱いらしい。
「鍛冶プレイヤーとしては、実式を作ることをやってはみたいが、時間がかかっちまうから、どうしてもなぁ」
俺はその言葉を聞いて、しばらくは素材を集めて、金を用意できるようになろうという算段を立てた。
だって、金さえあれば面倒でも作ってくれる可能性高いし……。
「それじゃあ、今回貰う武器、これでいいですか?」
「あ?そんなんでいいのか?」
「いやいや、実式の中で一番いい武器って言ったじゃないですか」
「いやなに、虚式の方が俺の持っている在庫の中ではいいものが多いから、そっちにするのかと」
俺は虚式は使いたくないんです、と断った。
「ま、お前がそれでいいっていうなら、それにしてくれや」
ジカさんと俺は、修練場から出る。
ジカさんは、今日はなにやら早めに落ちないと行けないらしく、
「すまんな、もうちょっと見たかっただろうに」
「いえ、こんなもの貰って嬉しいです」
「あ、それならこっちもやるよ」
そう言ってジカさんが取り出したのは、六連式のリボルバーアクションの拳銃。
「いいんですか?」
「いいってことよ」
にこりと笑うジカさん。
俺としてもサブの武器位は持っていたかったので、快く受け取った。
「それじゃあ、急ぐことになっちまって悪いが、今後もよろしくな」
「えぇ、また伺います」
そうしてログアウトしたジカさんを見送り、俺は今の時間を確認する。
まだあと1時間もリアルの時間である……。
「じゃあ、いっちょ行ってきますか」
新しい武器をひっさげ、簡単なクエストの確認の仕方もわかったため、俺は【掲示板】へと向かった。