アローン
私は、42歳になった。結婚して3年とても幸せに暮らしている。
ある施設の前を歩いていたら
4歳ぐらいの男の子が私に話しかけてきた。
「こんにちは。」
可愛い男の子だった。真面目な顔をしていた。
「こんにちは。」
「僕は、ここの施設で暮らしてるんだ。名前は譲って言うんだよ。」
私は、その名前に驚いた。
「譲っていうの?良い名前だね〜〜。」
私は、中絶をしたことが一度ある。
そしてその子の名前がつけられた。
その名前が譲だった。
「僕は、お父さんもお母さんもいないんだ。」
譲は、そう言って一文字の口をして
険しい顔で下を向いた。
「その名前は誰がつけてくれたの?」
「分からないけど親がつけてくれたと思うよ。僕にはそれしかないんだ。僕のお父さんと
お母さんがどんな人なのかも何も知らないよ。」
そこにいる男の子がもしかしたら
自分の子供ではないかと
錯覚してしまう。
中絶をしているからそんな訳は決してないのだけれど
産まれていれば
これぐらいに成長しているのではないかと
産まれてこれなかったから
他に産まれてきているのではないか
そんな事も考えたりもしていた。
「おばさんはお父さんお母さんいる?」
「お父さんはいないよ。でも
生きてはいるよ。小さい時に別れてしまって
大きくなってから一度会っただけだよ。
お母さんはいるよ。一緒に暮らしてるよ。」
「へぇ〜〜。どんな人?」
「優しいけど怖い人だよ。クヨクヨしたり
泣いたり、悩んだりしたら、イライラしたり
怒ったりするよ。明るくて楽しくて面白くて
色々気がつきて手伝ってくれるようなのが
好きなんだよ。そうじゃないと怖い人になるよ。普段は怖くないし、よく働く人だよ。
今はスマホでゲームとかしているよ。」
「お母さんがいて良いね。おばさんは結婚してるの?子供はいるの?」
「結婚してるよ。子供はいないんだ。」
「その人はどんな人?」
「優しい人だよ。あとはちょっと変わってるかな。」
「変わってるんだ。会ってみたいなぁ。」
譲は、そういって微笑んだ。
「今日は家にいるから行ってみようか?」
「うん。」
私は譲君を連れて家に帰った。




